・俺は字はあかんけども、記憶力は自慢できるんや。
人のやっとんの聴くだけでみな覚えてしまうんや。
笠原乙松 妙に言い訳がましく
・乙さんのネタは全部他人のものなんや。皆、パクリや。
他の音頭師たち
・「踊らせる音頭」取らな損やな。
大泉幸平 しみじみと
・(あなたの音頭の手本は誰ですか。という問いに対して)
稲葉さん・・・やな。
出口寿夫 目を伏せながら
・わしの「しょんがい」はあかんのや。
田中芳松 うつむきかげんに
これらのピースが描き出す景色とは。
これらの言葉が一つにつながり、全景が私の目に映し出されたのはごく最近のこと。このブログを書き進めていくのに、記憶を呼び起こし、つなぎ、紡いでいくうちにはっきりと見えてきた。
まず、田中芳松氏の言葉を取り上げる。いずれ音声で紹介するが、いま手元に十分な資料がない。もう少し待ってほしい。聞けばわかる。この人の「しょんがい音頭」を最高とする人は多い。あかんことなどあるもんかい。しかし明らかな特徴がある。それらの人はすべて踊る側の人たちであるということ。聴く側のひと、もちろん、送る側、つまり音頭連中からは高い評価は得られなかった。
何故か。音頭名簿を見てほしい。
道風国造 (1883~1955) 西黒部 引退踊り・昭和20年代後半頃
中井音太郎 (1894~1970 玉城町)・宮古の音さん
松本岩松 (1895~1979 早馬瀬)・岩田漫才
稲葉孝佑(嘉四郎) (1901~1968 多気町) ・朝長(の稲葉)
中西辻三郎 (1906~1980 玉城町)・田辺(の中西)
山口重雄 (1909~1985 明和町) ・山口さん
伊藤安太郎 (1910~1946 松名瀬)・松名瀬(の伊藤)
大泉幸平 (1911~1996)、高須 ・こ~ちゃん
山川正治 (1912~1980)保津 ・保津 引退踊り1974
吉田留蔵 (1912~1993 明和町)斎宮の吉田
以上明治生まれ