ところで、前回、酒屋の店頭での立ち飲みの話をしたが、私どもの地域では、これを「てっぱつ」と呼ぶのである。伊勢市の知り合いはこれを「立ちキュウ」と呼んだ。立ったままキュウとやるからである。なぜ「てっぱつ」なのか。今の今までわからなかった。ものは試しと調べてみた。こんなものが出てきた。
千葉の粕取り焼酎。清酒の製造過程でできる酒粕を低温で蒸留。原料は清酒粕。
アルコール度数25%。蔵元の「亀田酒造」は明治10年(1877)創業。
清酒「寿萬亀」の醸造元。所在地は鴨川市仲。
亀田酒造 てっぱつ 吟粕焼酎 25°720ml 1365円
吟醸粕を低温蒸留した本格焼酎。芳醇なお米の香り。
てっぱつとは房州弁で「おおきな」「すごい」の意味
それで
かす‐とり【×粕取り/×糟取り】
1 「粕取り焼酎(しょうちゅう)
」の略。
2 米・芋などから急造し、かすだけを除いた下等な密造酒。
第二次大戦直後盛んに造られた。
さらに
カストリ
- 第二次世界大戦
終戦直後の日本
で出回った、粗悪な密造焼酎
の俗称。酒粕
を原料に蒸留
して製造する「粕取り焼酎
」が語源だが、本来の良質な粕取り焼酎とはまったく別のものである。焼酎
の項目を参照。
- 上記のカストリと同時代に、統制外の粗悪紙を用いて濫造された、低俗な内容の雑誌
に対する俗称。カストリ雑誌
の項目を参照。
調べてみるものだ。思い出した言葉がある。
「トリス」は「カストリ」よりうまかった
確か、サントリーの創業者のものであったと記憶する。
つまりこういうことだ。終戦直後、食料、モノ、そして何より酒に飢えた人々のために、粗悪な密造酒が出回った。とにかく安く、手っ取り早く酔えればいい人たちが手を出した。中には工業用アルコールが混入されたようなものもあり、落命、失明する人も多かったと聞く。この「カストリ」・粕取り焼酎を代表して,隠語/符牒として てっぱつが使われたものと推測できる。今の世でも、焼酎にナポレオンをうたうものもあるではないか。
最後に、改めてお断りしておく。
亀田酒造さんの「てっぱつ」と「カストリ」とは全く別物であることを。くれぐれも誤解無きように。