お役の盛んな地区 | 道普請人_http://coreroad.org/のブログ

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拓殖大学 徳永先生を研究代表者とする科研費事業に仲間に入れていただき、長野県の下條村で調査活動をする機会があった。

 

村が行う資機材支給事業について、調査をしている。住民からの要請に応えて資機材(主に生コンクリート、型枠材、水路用U字溝など)を村が支給、村が自主的に作業をしインフラ(道路や水路)を整備する、という事業である。

 

NPO法人道普請人は、農道沿線住民が自分たちの道は自分たちで直す、道普請を途上国農村部にも広げて地域の活性化につなげたいという活動を行っている。

 

徳永先生らの研究は、資機材支給型事業が地方創生に重要であることを、定性的、定量的に示そうとしている。

 

日本の農村で現在行われている「道普請」は、どういう人たちがどういう背景で実施されているか、とても関心がある。

 

下條村の中の小松原地区の区長、副区長、そして住民の方に少しの時間だが話をさせていただくことができた。

 

「お役」として地区の皆が集まり、地区内のインフラ・環境整備(草刈、枝はらいなど)を行う習慣が昔から今も続いている。原則全戸参加、が守られてきているらしい。とは言え、新たに建設されたマンション(集合住宅)に住む人々がお役に参加してこないことも、受け入れている。「お役」のあとには、慰労会をして一杯やっている。総会も必ず23日の夜、行うらしい。元役場づとめの区長さんが色々教えてくれた。「お役」をすることが楽しい、と思われているような雰囲気だ。

 

その「お役」の一つとして、コンクリート舗装をする、という場合に資機材支給型事業を利用しているようだ。

 

その資機材支給型事業で整備された道路を歩いてみた。

 

地区で作られた概観図の石碑

 

コンクリート舗装、幅2.0 m程度、厚さは約10 cmらしい。

 

坂部で舗装脇の水路内を排水が流れるようになっている。その水で舗装真下の土がえぐれている箇所には、土のうを詰めて補修されていた。

 

地元名産、市田柿畑の脇の、コンクリート舗装の道

 

 

資機材支給型事業で、整備されたコンクリート舗装の終点。黒いアスファルト舗装部は業者による、村の公共事業として整備された道路

 

資機材支給型事業で整備された道路から、村道へ出てきたところの様子。このあと写真右側のお宅の方に会ったが、笑い話で、自分たちは5人で行動しており、どうも不審者?と思われていたようだ。

 

村道は、村の公共事業、施工業者により、きれいに舗装されている。整備されたのは最近のことらしい。蔵のある家が自分にはめずらしい。

 

村で設置されたスピーカー。地区の重要な情報伝達手段

 

昨年の資機材支給型事業で、コンクリート舗装された道路約30 m。一年に一回、一日のお役で、約30 mの舗装が行われ、これを繰返していく。

 

今年の資機材支給型事業で、コンクリート舗装を延長する予定であった箇所。ただ雨で中止もしくは延期(区会で話合い、決めるらしい。)

 

昔から資機材支給型事業を利用しており、この地区ではやりたい箇所はほぼコンクリート舗装を終えてきたとのこと。そのせいもあり、それほど緊急性は高くないが、いつもやっているお役で、村行政から資機材支給してもらえるなら、この道をコンクリート舗装化していこう、という雰囲気に思える。

 

人々の日々の生活に必要な道路は村が公共事業で施工業者に発注しつつ、所定の品質で仕上げてきている。日本の場合、農村とはいえ地区公民館がある通り、民家がある通りまでもアスファルト舗装化されている。そこからさらに奥の山道や、田畑への道は、地区の「お役」で整備されてきている。

 

途上国では、農村部のコミュニティ集会所や民家がある通りの整備に、公共事業の手が回っていない様子が多くみられる。小松原地区のケースより規模の大きい通りを、「お役」のような沿線住民の力を結集し改善していこうとする挑戦をしているようにも思える。道路行政との連携、住民のまとまり、道路整備技術に工夫が求められる。