日本の土木技術のルーツを求めて | 道普請人_http://coreroad.org/のブログ

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 先日、大阪府立狭山池博物館を訪れた。ケニアにいるとき偶然、そのホームページ(http://www.sayamaikehaku.osakasayama.osaka.jp/ )にヒットしてその展示内容に興味を持っていた。帰国し、まず最初に行ってみたいと思った博物館だった。ホームページによると、狭山池というため池の歴史、そこから全国の治水灌漑の土木遺産について紹介しているということだった。


 訪れて、まず建物のユニークさに驚いた。安藤忠雄の設計らしく、コンクリートの打ちはなしの壁、そして入り口に至るまで滝をイメージした水庭を通っていく。狭山池の平成の改修時に、建設時やそれ以降現代に至るまでの改修工事の様子が発掘されたようで、それを残すために博物館が作られた。


 ため池の役割は水をせき止めて水位を上げて水を保存しておき、乾季でも下流側の農地へ水を供給することである。ため池側から堤防の下を通り抜けて下流側への水を流すパイプ(樋)を設ける必要がある。なんとダム建設時、西暦616年に木の幹をくりぬき何本もつなげてそのパイプ(樋)を作っていた。それが発掘されこの博物館に保存されている。またその樋が見つかったことで木の年輪から建設時期が特定されたらしい。


 当時の国家事業とはいえ、約1,400年前の土木技術のレベルの高さに改めて驚かされた。


 ダムの壁を盛土で作っていたが、補強するために枝葉の層を設けて人力で締固めていたらしい。また、「土のう」も使われていたようだ。


 「土のう」のルーツについても調べられていて、どうも朝鮮半島から伝わった工法らしい。それが日本のため池、また古墳の補強にも使われてきたようだ。日本産ではないとしても、日本で古墳時代より利用されてきた伝統的な工法だとは言える。


 現代のような機械がない時代の日本の土木技術だが、工夫や知恵が凝縮されておりここには開発途上国農村部の生活改善に役立つ技術がある、と感じた。


 府立博物館で入場料は無料であった。館内にあるアンケートには有料の場合はまた来るか、などの質問項目があった。近いうちに有料化されるのかもしれない。それでも常設展の内容、建物の様子は一見の価値はあると思う。大阪の財政のニュースを聞いていると、無料でいいの?という感想をもつぐらいである。