2023年秋:北陸鉄道旅⑨七尾→穴水→和倉温泉 | ☆出かけよう!気のむくままに…☆

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 北陸鉄道旅の様子を長々と投稿している途中だが、北陸地方の地震被災を受けて急遽JR東日本から「北陸応援フリーきっぷ」というフリーきっぷが発売となった。

 東京都区内から北陸のフリーエリアまでの往路は北陸新幹線の指定席(復路は『はくたか』の自由席)で、フリーエリアは大人の休日俱楽部の「北陸フリーきっぷ」と同じ北陸新幹線(黒部宇奈月温泉-金沢)、黒部-小浜間のあいの風とやま鉄道、IRいしかわ鉄道、JR西日本、高山本線は富山-猪谷間で、自由席が乗り放題だ。氷見線、城端線、七尾線、越美北線もフリーエリアだ。なお、フリーエリア外ののと鉄道は一部不通区間が残る。

 連続する4日間の利用も大人の休日俱楽部のものと同じ。ただ、発売箇所がJR東日本首都圏エリアの駅指定席券売機に限られる。また、価格が20,000円ちょうどと破格で、大人の休日俱楽部のものよりも安い。利用期間は北陸新幹線敦賀延伸前の2月16日から3月15日までに限られる。

 急遽企画されたきっぷのようで、発表されたのが利用期間の1週間ぐらい前だった(※えきねっとサイトには1か月前に情報公開されていた)。利用期限を新幹線延伸前にしたあたりに苦労が見られる。また行きたい北陸路だが、さすがに急すぎて自分は無理だろう。時間の取れそうな方は年齢制限もないので、ぜひこのチャンスに北陸を訪れてはいかがだろう。なお、3月16日以降「北陸フリーきっぷ」の方は値上げすることになる。

 

 

 さて、「北陸フリーきっぷ」による北陸鉄道旅の3日目のつづき。七尾からのと鉄道で終点の穴水を目指す。

 のと鉄道も国鉄時代は七尾線の一部。七尾線は津幡から七尾、穴水、和島を結ぶ118.7キロの路線だった。日本海側から七尾湾沿いの七尾まで能登半島を横断して七尾湾沿いに北上、穴水からはまた半島を横断(縦断)して日本海側の和島に抜けるルートだ。現在は津幡-七尾(和倉温泉)がJR西日本七尾線、穴水までがのと鉄道、穴水-輪島間は廃線になっている。

 また、昔は穴水-蛸島間(61.1キロ)に能登線という、能登半島の先端近くまで行く路線もあった。

 

 七尾駅のホーム番線の無い切り欠けホームからのと鉄道の穴水行は10:33に発車。2両編成の車内は2割ぐらいの乗車率。地元の人よりも観光客の方が多い感じだ。後ろの車両は能登地方を舞台にしたアニメ「花咲くいろは」のラッピング列車(気動車)で、外側だけでなく、車内にもアニメの画があふれていた。

 七尾は海側の東側に市街地が発達しているが、市街地を過ぎると列車は丘陵地に入り、その先の平野部に出ると左手に池のような赤浦潟が見える。昔は海が入り込んだ入り江だったのではないかと思う。

 さらに北上すると、能登半島最大の温泉地、2面2線の和倉温泉だ。駅の南側はあまり開けておらず、駅舎のある北側に市街地が広がる。ここで5、6人降りて、車内はますます寂しくなる。

 一応、和倉温泉までがJR西日本となっているが、七尾-和倉温泉の一駅間は特急しか走っておらず、普通は全て七尾-穴水間で運転していれるのと鉄道となる。そのため、和倉温泉から金沢方面に行く場合はJR西日本の運賃だが、七尾から和倉温泉より先の穴水方面に行く場合はのと鉄道の運賃となる。このあたりは、JR常磐線と東京メトロ千代田線の北千住-綾瀬間に似ている。

 また、のと鉄道は鉄道施設がJR西日本で、運行が第三セクターののと鉄道という変わった上下分離方式であるため、今回の震災ではJR西日本が復旧に努めている。

 和倉温泉からは非電化区間となり、しばらく行くと右側に枯れた水田が広がり、遠くに海が見え隠れする。田鶴浜からはいよいよ海(七尾西湾)が近くなる。

 しかし、笠師保を過ぎると海岸部からやや離れ、海は遠くなる。しばらく、野山を分け進んだり、田畑を進んだりする。人家は平野部のあちらこちらにまとまっている。野山の樹木は前日の嵐のせいか、葉が落ちた木が目立つ。

 海から1kmぐらい内陸にある2面2線の能登中島で上下線の交換。対向の七尾行は1両での運転だが、その上り列車から大勢の人が降りていた。観光客たちか、地元の方たちか、能登中島に何か見どころがあるのかもしれない。

 

能登中島-西岸間

▲能登中島-西岸間の七尾西湾

 

 その後、丘陵地の野山を右に左にカーブしながら進むと、突然右手に海が開ける。七尾北湾の南の入り江だ。七尾湾は中央に複雑な形の能登島があり、七尾北湾、七尾西湾、七尾南湾に分かれている。右奥に七尾北湾と七尾西湾を分ける中能登農道橋(ツインブリッジのと)が見える。能登半島から七尾島に渡る橋で、能登島への橋はもう一つ南部の七尾西湾と七尾南湾の間に能登島大橋がある。

 アニメの湯乃鷺駅のモデルになった西岸駅のホームには「西岸」という正式の駅名標の他に、アニメに合わせた錆びた感じの「湯ノ鷺」という駅名標も立っている。「花咲くいろは」の熱烈なファンの方たちは、聖地巡礼としてこの西岸駅にも足を運ぶようだ。

 

西岸-能登鹿島間

▲西岸-能登鹿島間の七尾北湾…右奥に小さく中能登農道橋が見える

 

 西岸から先がのと鉄道の絶景ポイント。七尾北湾を右に見ながら北上していくが、さながら函館本線の噴火湾(内浦湾)の景色に近いかもしれない。もっとも、七尾北湾は噴火湾ほど大きくはないので対岸の能登島がはっきり大きく見える。むしろ入り組んだ海岸線の能登島が景色にアクセントを与えていて、見飽きない車窓だ。

 西岸も下車してみたいが、目の前に海が見える次の能登鹿島も下車してみたい駅だ。ホームに沿って桜並木のある2面2線の能登鹿島駅は、春には大勢の花見客でにぎわうという。上りの回送列車待ちで3分ほど停車。

 能登鹿島を出ると間もなく、海岸部から小さく突き出た出島に鎮守の森と鳥居が見える。鹿島神社で、海と森と鳥居が絶妙のバランスをとっていて魅力的だ。

 やがて、鉄路は穴水港の入り江から少し内陸に入っていき、トンネルを抜けると終点の穴水に11:17到着だ。穴水は2面4線の末端駅で、列車は駅舎のある①番線に到着した。このホームには切り欠けホームの⓪番線もあり、末端側から駅舎の手前までが島ホームとなっていて、以前走っていた観光列車『能登恋路号』が錆びだらけで放置されていた。もとは能登線のホームだったみたいだ。

穴水駅①番線末端側

▲穴水駅①番線から見た線路末端方向

 

 七尾市か穴水町の委託の方か、乗務員とともに乗車してきた方が、ホームで割引切符のアンケートを回収していた。ホームの反対側に移動して今来た和倉温泉側も撮る。

穴水駅和倉温泉側

▲穴水駅和倉温泉方面

 

 ②、③番線ホームの横には数本の側線があり、数両の車両が留置されていた。穴水駅はのと鉄道の車両基地があり、隣接して車両工場もある。長いホームが和島や蛸島まで線路が延びていた往年の穴水駅の賑わいを残しているようだ。当時は急行『能登路』などが、この穴水で分割・併合していた。

穴水駅

▲昔は分岐駅として3方向に線路が延びていた穴水

 

折り返し七尾行ラッピング車花咲くいろは

▲「花咲くいろは」のラッピング車両

 

 帰りの列車(気動車)まで50分あるので、駅周辺を散歩してみることにする。のと鉄道旅行センターも入っている駅舎を出ると、左隣に穴水町物産館四季彩々があり、その前はロータリーになっている。近くには道の駅もあり、買い物する場所には困らない感じだ。

▲穴水駅駅舎

 

 駅前の地図を見て近くの神社と、行けるとこまで海の方に行ってみることにした。駅を出て右手に歩道を進む。緩やかな坂道を100メートルほど下った右手に穴水大宮という神社があった。交差点から脇に入ったところに鳥居があるが、先を急ぎたいので境内には入らなかった。

穴水大宮

 

 さらに道路を200メートル余り下っていくと、水路に架かる橋だ。この先の小又川沿いを歩けば海(穴水港)は近いようだが、距離的には水路沿いを歩く方が距離が短いようにも思えた。いったん渡った橋を戻り、水路沿いに河口を目指す。200メートルほど先の国道249号線の高架下を抜けると、河口までは400メートルぐらいか。

 しかし、河口まで200メートルぐらい行ったところで駅に戻ることにした。やはり海まで行くには時間が足りないと判断した。

山王川放水路河口部

▲ボートの係留された水路(山王川)…正面の岬の先は七尾北湾

 

 駅には思ったよりも早く着いたので、物産館でソフトクリームを買って食べた。12:07発の七尾行に乗車。2両編成だと思うが、乗客は前側の1両のみに乗車で後ろは回送となる。乗客は10人ぐらいなので余裕で乗れる。乗務員輸送も兼ねているのか、運転手以外の乗務員が2両目に複数乗車していた。

 穴水を出発して最初のトンネルが凄かった。車内は暗くされ、トンネルの壁には星空がライトアップ。列車が動いているので明かりが流星群となって見える演出。全くの予想外の演出で、のと鉄道やるなという感じだ。

 能登鹿島で下り列車と交換。海を見ながらのんびりしていたら、なにやら胸が苦しくなってきた。脈を測ったが、早くなっているようにも思えない。そのまま乗車しながら落ち着くのを待つが、いっこうに元に戻らない。そんなにひどくはないが、ゆっくり車窓を見ているどころではなくなった。

 田鶴浜で上下交換。時刻表にはない列車(気動車)だが、乗客がいっぱいの2両編成だ。平日だったので、土・休日に運転される全車指定席の『のと里山里海3号』のダイヤに入れた団体客向けの臨時列車かもしれない。往路の能登鹿島ですれ違った上り回送列車(『のと里山里海2号』のダイヤ)が、この下り臨時列車になったのに違いない。

 そうこうするうちに列車は進んで和倉温泉②番線に12:46到着。降りてみたら3両編成になっていた。あれ?最初から3両だったのか?それはともかく、七尾行だがここで降りる。ここから始発の『能登かがり火6号』に乗る。

 ホームで係員にアンケートを渡し、傘を杖代わりにして跨線橋を渡り、特急の待つ①番線に行く。ただ、15分ほど乗り換え時間があるので、胸は苦しいが駅の写真はいつものように撮った。

和倉温泉駅穴水方

▲和倉温泉駅①番線から見た穴水方向

 

和倉温泉駅『能登かがり火6号』前面

▲①番線ホームで発車を待つ『能登かがり火6号』前面

 

和倉温泉駅七尾方

▲和倉温泉駅七尾方向

 

 駅の外にも出てみた。和倉温泉駅の駅舎は屋根の形や正面の階段が穴水駅の駅舎に似ている。温泉街は駅から北に向かって海岸近くまでいく事になるが、歩くと25分ぐらい、2キロぐらいの距離になる。

和倉温泉駅駅舎

▲和倉温泉駅駅舎

 

 駅前から早めにホームに戻って、3両編成の『能登かがり火6号』自由席に腰を下ろす。自由席は6両編成の『能登かがり火1号』では金沢側(後方)2両だったが、この『能登かがり火6号』では和倉温泉側(後方)の1両になる。それでも、車内はガラガラで、自由席の乗車率は1割あるかどうか。

 13:01に和倉温泉を発車。隣の七尾に停車すると一気に乗客が増えて、自由席は8~9割の乗車率になった。やはり自由席1両だと盛況だ。その後は羽咋停車で下り普通と交換、あとは運転停車のみで終着駅の金沢まで停まらず、14:07金沢到着。

 体調は相変わらずで、最悪病院に行かなくてはとも考えたが、歩けはするのでとりあえずコンコースの椅子で休もうと思った。しかし、空いている椅子がないのでそのまま改札口を出て、あとは流れで計画通りに観光案内所で訊いた兼六園へのバス乗り場に移動していた。

 改札口を出ると椅子が全くないので、店にでも入らないと休むところがない。ホテルに戻るには時間が早いし、結局バス待ちをするしかなかったという訳だ。あとはなるようにしかならないと開き直る。

 

 以下つづく。