それ以来本公演は欠かさず観てきた“おと麦”。特別公演や、おと麦のかかわった公演も半分以上は観てきたと思う。そのおと麦が2年半振りに本公演をやった。確実に観れるであろう千秋楽を、2か月前に予約してチケットを取り、観にいってきた。
大人の麦茶第22杯目公演は『その贈りものの酒は封が開いていた』(5/11~15@下北沢ザ・スズナリ)。おと麦もスズナリ初登場だけど、自分もスズナリで初観劇!これで下北沢の劇場は11全部入ったような気がする。もっとあるのかな?
◆キャスト
白旗そよこ(そこね):浅田光…「舌足らず」のおかみ
白旗たかみ:絵川杏奈…「舌足らず」看板娘、そよこの妹
米田絵猛(えもう):谷本和優…「舌足らず」アルバイト、大学生
大滝洋平:岩田有弘…元「舌足らず」勤務の寿司屋の板前
原口夏予:水島麻理奈…洋平の彼女
広井春之介:宮原将護…ソフト開発者、雲太朗の弟
広井雲太朗:辻久三…運送会社社長兼トラック運転手
清広鉄生:並木秀介…地元顔役、スナック「學學」オーナー
相原未心(みこ・ミシン):鈴木ゆか…「學學」店員、保険コンサルタント
熊倉紫(ゆかり・トタン):渡辺亜実…「學學」新人店員、絵猛の彼女
鶉山計(うずらやまはかる):Dr.レオン…プロ棋士、九段
瀬川成郎:池田稔…鳶工事「越瀬(こわせ)」の代表取締役
赤池榮二:全原徳和…越瀬の若頭(かしら)、花形の鳶
成滝翼翔(せすな):傳田圭菜…リフォーム「間に合ップ」店長
作・演出:塩田泰造
◆感想など
初見が千秋楽でなければ、この作品はリピートしたかった!おと麦らしさ満点の、配役一人一人が丁寧に描かれた、涙と笑いの、そして心温まる塩田作品でした。出演者は大きな劇場で演じても全然見劣りしないぐらいしっかりした方ばかり。声も通っていたし、セリフも聞きやすかった。
緻密で豪華なセットの居酒屋「舌足らず」には、明るくて気風のいい白旗姉妹がいつも元気にお客さんを迎えていて、とてもいい雰囲気でとにかく楽しく寛げそう。プロ棋士の鶉山ならずとも「舌足らず」の常連になりそう。自分を含めて、大勢のお客さんが「舌足らず」に行きたいと思ったに違いない!
そんな鶉山のお気に入りはおかみのそこね。「舌足らず」で一杯やりながらリラックスし、時には次のコンピューターとの対局をイメージしたりする。事故を起こした春之介もそこねに惚れちゃっていたんだなぁ。俺も、そこねの膝枕で横になりたい(笑)
「舌足らず」には大学生のアルバイト・絵猛がいたがちょっと愛想が悪くてぶっきら棒。また、元従業員で今は名門の寿司屋で働いている洋平も時折料理を作りに、明るい彼女と手伝いにきていた。
そんな「舌足らず」に突然の大音響が響いた!なんとトラックが店の壁に突っ込んできたのだ!壁に穴の開いた「舌足らず」。壁の穴を通っての人の出入りが面白い。そのトラックに乗っていたのが広井兄弟だった。兄の雲太朗は足に怪我をし、ちょっと頼りなさそうな春之介はそこねたちに謝って、お詫びに差し出したのが幻の酒「裏魔王」。
地元の顔役・清広はスナック「學學(まなまな)」などのオーナー。「舌足らず」にも興味津々。「學學」のセクシー衣装のお姉さん、ミシンとトタンを連れて「舌足らず」にやってきて、地元の発展のためになどと協力を要請するが…。
ところがトタンは絵猛の彼女。セクシーな姿でスナックでバイトと知って、絵猛は落ち着かない。逆にトタンは、たかみと絵猛の関係を疑ったり…。ミシンは事故の保険が気になったり…(^^)
穴の開いた壁を段ボールで直そうとする春之介を見て、清広は鳶の越瀬に壁直しを依頼。懐かしい『ベッドにもなるソファー』の瀬川親方と若頭の榮二が登場にニッコリ!キャラが当時と変わっていないのが嬉しい。
さらに、その直し方にダメ出しをしたのが、激嬢『甘い足どり』のリフォーム店「間に合ップ」の店長のせすな。男勝りなせすなと漢(おとこ)の中の漢・瀬川、榮二の火花にまたまたニッコリ(^^)でも、瀬川親方がせすなの利を認めてせすなにまかせることに…。そこねたちにとってはちゃんと直してもらえればよし(^^)!
洋平と共に「舌足らず」に手伝いに来ていたニコニコの彼女・夏予。人前では夏予に対して口の悪い洋平だが、本心は心から愛しているのが伝わってくる。キャスト一人一人がカッコ良くて、優しくて、とても魅力的! 洋平と夏予の相手を思うがゆえに、悩む事もあったり…。
▲洋平・岩田有弘
話が進むにつれていろいろなことが明らかになっていく。洋平の想い、夏予の想い。絵猛の想い、トタンの想い。たかみが洋平の元カノだったことも…(^^)←そこね、当時は全く気づかず!(笑)そこねとたかみ姉妹の似ているようで似ていない部分の性格!観ていて楽しい!白旗姉妹最高だ!
おと麦の役者さんってカッコいい男性(漢)ばかりで、客席には女性ファンが大勢。今回も並木さんといい、池田さんといい、全原さんといい、岩田さんといい、決まっている!(客演の傳田さんもカッコいい!) 宮原さんはおとなしいキャラかなぁと思ったら、春之介の事情が次第に明らかになっていき、別の意味でカッコよくて泣かされる。
アメリカでアプリ(ソフト)作りに励んでいた本物のプログラマー春之介は体調不良を覚えて帰国、検査の結果あと1ヶ月余りの余命と宣告を受ける。行きたいところはないかと訊いた兄の雲太朗に春之介が少し考えてから「舌足らず」と答える。
広井兄弟の事故は偶然だったけど、目的地は「舌足らず」だった。そこねのため、「舌足らず」のためにわざわざ大隅半島南端の蔵元まで、幻の酒“裏魔王”手に入れに行き、ようやく辿り着いた「舌足らず」。病魔に蝕まれている春之介。泣ける展開だぁ!
いい男は中身がないなんて言っているそこねに、横たわりながら最後はいい男にも中身のある人間はいると言わせちゃう春之介に笑ったり、泣いたり…!そこねの包容力にも惚れちゃうぜ(^^)!なんだこの塩田ワールド!
ちゃきちゃきのたかみといい、仕事もできカッコイイ女・せすなといい、洋平との受け応えも愛らしい夏予、たかみに嫉妬しちゃう可愛らしいトタン、セクシーで仕事もできる女という感じのミシン。女優陣も個性的で素晴らしかった!
タイトルの『その贈りものの酒は封が開いていた』は裏魔王が強い発泡酒(度)で、封をしていると瓶が割れやすいので、封をせず蔵元だけで販売している貴重な酒ということから…。春之介にとってのそこね、あるいはその逆も…。絵猛とトタン、洋平と夏予もお互いを裏魔王のように貴重な、掛け替えのない人(恋人)だと…強引にまとめちゃう(汗)
もう、ボロボロのレポだわさ。これ以上のボロは座組みのみなさんに失礼なので、もうやめておきます。でも、最後にお気に入りの挿入(テーマ)曲について…。
ストーリーにピッタリで、ミュージカルのテーマ曲みたいで、みんなで歌いたくなる曲。あらかじめ、客席のチラシに歌詞を入れておいてもらえたら(ネタバレになりかねないからダメか)、一緒に歌っていたかも…それぐらいよかった!
作曲は劇団のヨージさん、作詞は主宰で作・演の塩田さん。詳しくは泰造さんのブログをどうぞ→『そのお贈りものの酒は封が開いていた』
最近のおと麦(塩田)作品の中でいちばん好きな作品になりました。返す返すも、もっと観たかった!DVDほしい!