エトーさんのペット~世にもケッタイな物語 | みぶ真也 の 職業:怪談俳優

みぶ真也 の 職業:怪談俳優

浪速のユル・ブリンナー

おはようございます、大阪の俳優みぶ真也です。

近所の人からペットを預かって、大変なことになった件です。

 

 

 去年の暮、近所に住んでるエトーのおじいちゃんからウサギを預かった。

 エトーさんは金網で作ったウサギ小屋をうちに持ってきて、年末、娘の住んでる四国に行くことになったので大晦日頃まで代わりに飼って欲しいとのこと。

 名前のないウサギだが、起きている間はエトーさんが置いて行ったラビットフードをただむしゃむしゃ食べている。

 見かけは可愛いのだが、食べる以外は特に何をするわけでもないので、3日も見ていると飽きてしまった。

 ただ、毎日エサをあげ、水を替えるだけで、あとは放置している。

 散歩に連れて行く必要もないし、小さな小屋から飛び出す心配もない。

 師走も押し詰まり忙しくなった三十日にエトーのおじいちゃんから電話がかかって来た。

 なんでも娘さんが産気づいたとかで、しばらく帰れなくなったらしい。

「ラビットフードは足りるはずですから、すみませんが帰るまでお願い出来ますか」

「いいですよ、あまり手もかかりませんし……」

「あの、それから……大晦日に……元旦は……ですので……と思いますが……」

 電波が悪いのか、声がとぎれとぎれになり切れてしまう。

 話の内容は判らなかったが、さほど重要なことでもないだろうと思い電話を掛けなおすこともなかった。

 ところが、大晦日の深夜、大変な事件が起きたのだ。

 三十一日の深夜、庭のウサギ小屋からガサゴソと異様な音が聞こえて来た。

 野良猫が小屋の金網を引っ搔いているのかも知れないと庭に出てみると、ウサギ小屋の中が空っぽになっているのだ。

 鍵は閉まっているし、扉が開いているわけでもない。

 しばらく周囲を見回してみたが、他に異変はない。

 エトーさんが帰って来たらなんと言えばいいかと頭を抱えていると、突然、雷鳴が響き渡った。

 続いて大変な雨が降ってくる。

 同時に、空から何か大きな物が落ちて来てウサギ小屋をつぶしてしまう。

 しばらくして雨がぴたっとやんだ時、ぼくは我が目を疑った。

 うちの庭で巨大な龍がとぐろを巻いているのだ。

 そう、日本画なんかに描かれているままのあの龍だ。

 慌てて部屋に戻り、戸を閉めて鍵をかける。

 とりあえず、エトーさんに電話した。

「た、大変なんです」

「ああ、みぶさん、判ってます。龍が来たんでしょう。私は二日に帰りますから、それまでお願いします。龍のエサは梨がいいでしょう」

 のんびりと返事が返って来た。

「私は名前の通り、干支の番人をやってまして、年が明けたらウサギから龍にペットが変わったわけです」