動く密室~世にもケッタイな物語 | みぶ真也 の 職業:怪談俳優

みぶ真也 の 職業:怪談俳優

浪速のユル・ブリンナー

 

 

 目が覚めると、そこは金属製の台の上だった。

 起き上がる。小さな部屋だ。

 どこからかかすかなエンジン音のような音がする。

 部屋の片隅にデスクがあり、ノートパソコンのようなものが置いてある以外には何もない。

「気がついたようですね」

 上から声がした。

 見上げると、天井にスピーカーが埋め込まれている。

「ここはどこですか?」

 尋ねてみた。

「それはお教え出来ません」

 答えが返ってくる。

 何か伝染病に感染して隔離されているのかも知れない。

 いつからここにいるのだろう?

 記憶をたどってみる。

 昨日の夜、シャワーを浴びてベッドで眠ったはずだ。

 朝までの間に、ここへ連れて来られたのだろうか。

 ここは病室か何かか。

 気になるのはかすかなエンジン音。

 乗り物の中のような気がする。

 部屋ごと空間を移動している感覚があるのだ。

「ぼくはどうしてここにいるんですか?」

 また、尋ねてみた。

「いずれ説明します。まずはデスクについてパソコンを立ち上げてください」

 言われた通りにする。

 パソコンのユーザー名は英語でALIEN、エイリアンとなっていた。

「立ち上げました」

と言うと、

「では、ワードを立ち上げてください。そしてこれから“不思議ものがたり みぶ真也の深夜のみぶ”を毎日一話書いて貰います」

 ますますもって意味不明だ。

「どうしてそんなことを?」

「我々は地球の電波を傍受して情報を集めているのですが、特にラジオ関西“深夜のみぶ”の物語の人気が高いのです。もっとこの話を聴きたいというリクエストが多いので、強硬手段に出させていただきました」

 理不尽な話だ。

「あなた方は一体何者で、ここはどこなんですか?」

「それは言えません」

 そのまま約一週間が過ぎた。

 毎日一話の話を書く以外何もすることはない。

 トイレもシャワーも別室にあり、食事も3食デスクの上に自動で出される。

 毎回、パスタのような麺をフォークで食べるのだがどこかで食べたことがあるような味だ。

 味は良いのだが思い出せない。

 7つめの物語を書いて指示通り送信すると、パスタの夕食がデスクに出現した。

 麺を食べながら、ふと横の壁を見ると、小さな蓋のようなものが貼り付いているのを見つけた。

 開けてみると窓になっており、外が見える。

 外は、宇宙空間だった。

 その瞬間、自分のいる密室の正体が判った。

 同時に、食べていた麺の正体も判った。

「これはUFOだ!」