「…って事で、頼んだよ、隆英。」
そして、一方的に、映像と通話は切れる。
数秒、静まり返る車内。
隆英の方から…。
「弓さん…???」
賀寿恵、ぎこちない目線。そして僅かに顔を火照らせて、
「あ、はい…。」
隆英、
「ゆっくり、行きましょう。」
そして、頭をコクリと、
「お願いします。」
賀寿恵、ハンドルを握りながら、
「あ、はい。…こちらこそ…。お願いします。」
3秒後…。
隆英、賀寿恵をチラリと見て…、
「緊張…、して…ます…???」
まだぎこちない目線の賀寿恵、
「あ、あ~~。あ、はい。…あ、いえ…。」
思わず隆英、クスクスと、
「リラックス~~。リラックス~~。クククク。」
けれども…。
「あ。…駄目か。リラックスしてちゃ、ダメなんだ。」
思わず賀寿恵、顔を小刻みに左右に、
「あ。え…???」
隆英、
「いや…。だって、今、運転中。運転に集中、集中。」
咄嗟に賀寿恵、
「あ、あ、あ、あ~~~。あ、はい。はい。はい。」
「…って言うか~~。麗子さん、ひとりで、どちらへ…???」
その声に賀寿恵、
「はぁ~~~。…いや…。私も…、ちょっと…。」
隆英、チラリと賀寿恵を…。
「はは。その調子です。」
「えっ…???…あ、はぁ~~~。あ、はい。」
タクシーの中で麗子、
「運転手さん。そこ、曲がっとくれ。」
運転手、
「は~~い。」
そして…。
賀寿恵、あるビルの地下駐車場に…。
そして、車から降りて…。
隆英、
「凄いですよね、弓さん。運転、上手~~。まぁ…、僕も免許はありますが…。中々どうして。」
賀寿恵、そんな隆英に、右手を振って、
「いえいえ。そんな…。…では、まずは…、寝具から…。」
そこにいきなり隆英のスマホにライン。
「…ん…???」
賀寿恵と一緒に歩きながら…。隆英、スマホの画面を見て、
「はは。おやおや。」
賀寿恵、隆英に、
「…どうか…???」
すると隆英のスマホにまた、ライン。しかも、立て続けに。
賀寿恵、
「…???」
隆英、画面を見て、
「くくくくく。」
ふたり、揃ってエレベーターに。
隆英、賀寿恵に、
「あ、いえ…。はは。これです。」
スマホの画面を賀寿恵に。
賀寿恵。画面を見て、
「ライン…。」
画面上、4人からのラインのメッセージ。
賀寿恵、思わず目をパチクリと…。そして隆英を見て、
「もぅ…。ラインを…???」
エレベーターが上に…。
隆英、
「えぇ。池辺課長から誘われましてね。トラディショナルのグループラインに。…で、昨日、ホテルが最後だったものですから、トラディショナルの方々と、一緒に食事に。…そのお礼です。」
瞬間、賀寿恵、
「あ、はぁ~~。」
隆英、笑顔で、
「みんな、良い人達です。」
そして賀寿恵、また、
「あ、はぁ~~。」
エレベーターを降りてふたり…。歩きながら…。
隆英、
「ちょっとごめんなさい。」
賀寿恵、
「あ、はい。」
すると隆英、
「あ、弓さん。これって…。どうすれば…。僕…、あんまり良く、ラインって…。」
賀寿恵、隆英に近づいて、
「あ、はい。…ちょっと、よろしいですか…???」
賀寿恵にスマホを…。すると…、可愛いアイコンが幾つも…。
賀寿恵、隆英に、
「何を…、どぅ…???」
チラリと隆英を…。
隆英、
「あ、はい。昨日、食事をしてくれた人たちに、こちらこそ、ありがとうございましたの一言、返したくって。」
「あ~~。それなら…。…今、ラインくれた人たちに…で、良いんですか…???」
「えぇ。」
「それなら…。この、アイコンをタップして…。」
隆英、
「こぅ…ですか…???」
「そして…、メッセージを…。」
「あ、はい。ちょっと、すみません。」
メッセージを…。
賀寿恵、
「そして…。ここをタップすれば…。」
「おぉ~~~。」
「そして…、今のメッセージを…、こうして…。長押しするんです。すると…。…出てきます。コピーをタップ。そして…、次の人にも同じので…???」
隆英、
「あ、はい。構いません。」
「それじゃ~~。」
最初のメンバーには送信。そして次のメンバーには、賀寿恵、
「また、同じようにタップして、今度は文字打ちせずに長押しで…。はい。コピー。」
隆英、ニコニコと、
「な~~るほど~~。」
「そして…、また、同じように…。」
「はいはいはい。分かりました。ありがとうございます。」
そして…。
「これで…、良し。」
数秒後、ライン。
「おっと~~。既読。」
家の中で優維香、掃除をしながら、
「ふふん。返信、くれたじゃん。」
悠里はブランチ中、
「おほ。」
瑛子、動画を見ながら、
「ふふん。」
池辺、洗濯物を干しながら、スマホに、ペコリと、
「昨日はご馳走様でした。」
賀寿恵の後ろを着いていく隆英、
「何年振りだ…、日本のデパート。はははは。」
麗子、タクシーを降りてアプローチをコツコツと。
「それにしても、晴れたね~~。今日は~~。」
ガーデンで作業着に麦わら帽子。軍手をしながら草むしりをしている老人。
麗子、
「お兄ちゃん。」
すると、その老人、腰を下ろしたままで振り向き、
「おぅ~~~。」
好きになれない。 vol,163. 隆英、賀寿恵をチラリと見て…、「緊張…、して…ます…???」
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庄司紗千 花笠音頭
※ご本人の承認の下、紹介させて戴いております。