「ウチの女房も…。随分前になりますが…。」 | THMIS mama “お洒落の小部屋”

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好きになれない。  vol.272.

ドキドキ 「ウチのですか…???…女房…。」
小埜瀬。

愛結美、チラリと小埜瀬を。佐津香も同様。順平も口に入れながらも小埜瀬をチラリと。

小埜瀬、
「おっと。こんな美味しいの…、立ちっぱなしで…。」

その声に愛結美も、
「あは。」
すぐさま近くからダイニングチェアを…。
「はいはい。」

順平も、
「おっと。」

愛結美は菜帆子の隣に。
菜帆子、少しずれて。

佐津香も、
「ほぃほぃ。」

小埜瀬。愛結美から貰った椅子に、
「すみません。」

順平も椅子に。

小埜瀬、また皿におかずを…。
「ウチの女房も…。随分前になりますが…。」

4人共に小埜瀬を見て…。

「亡くなりました。…25の歳で…。」

瞬間、愛結美、菜帆子、佐津香、共に、
「あら。」

順平、口を尖らせて…。

菜帆子が…、何かしら、申し訳なさそうに口を搾って、
「すみません。変な事、聞いちゃった。」
顔だけコクリ。

けれども小埜瀬、口をへの字にして、顔を左右に、
「いえいえ。…そんな…。…もぅ…、かなり前ですんで…。全然。」

愛結美、
「…でも…、奥様…、25の歳でって…、言う事は…。」
瞬間、愛結美、申し訳なさそうに、
「あら、私…。随分…。」
舌をチロリと。

その声に小埜瀬、
「あ~~。いえいえ、お気になさらず。…もぅ~~。30年も前になりますから。」

愛結美、菜帆子、
「さ…、30年。」

おかずを食べながらの順平もそんな小埜瀬を見て、
「……。」

小埜瀬、
「えぇ、30年になります。…ウチのは…、癌で…。」

愛結美、菜帆子、また一緒に、
「癌。」

「えぇ。ウチの場合は…、甲状腺癌です。」

瞬間、順平、おかずを口に入れたままで、
「……。」

愛結美と菜帆子、
「甲状腺癌。」

菜帆子、すぐさま佐津香を見て、自分の喉に手を。
佐津香、そんな菜帆子を見て、顔をコクリと。
菜帆子、今度は愛結美を見て。愛結美も自分の喉に手を。

佐津香、小埜瀬に、
「結構…、厄介だったんですね~~。」

小埜瀬、その声に、
「えぇ。…倅が産まれて、まもなく。」

愛結美、顔をグシャリとさせて、
「う~わ~~~。」

菜帆子、
「25歳で…、甲状腺…、かぁ~~~。」
そして、顔を小刻みに震わせて、
「う~~~~。」
瞬間、左右に目をチラリと。
「あ。…ごめんなさい。」

小埜瀬、そんな菜帆子にも、
「いえいえ。そんな…。だから…、昔の事で…。全然、全然。」

愛結美、小埜瀬を見て、
「えっ…???…あ、いや…。課長…。」
キョトンとして、
「…じゃあ…。奥様が亡くなってから…。…もしかして…。今まで…。…ただ、…全くの…、おひとりで…。」

小埜瀬、思わず目をパチクリと…。
「え、ぇ。そうなりますけど…。」

いきなり佐津香、小埜瀬に、
「小埜瀬課長。」

小埜瀬、いきなりの佐津香の声に、
「あ、ぁ。はい。」

「先ほど、課長から謝って頂いたんですけど…。私たちが…、課長の家、知ってるって言う事…。」

愛結美と菜帆子、そして順平を見ながら…。

「あ、ぁ~~。はい。…え…と…。部長からです。」

瞬間、愛結美、菜帆子、何とも力を抜いたような姿勢で、顔も垂れるように、口を真一文字に、
「ふ~~ん。」
「…だよね~~。」

佐津香、目を丸く、ニッコリと、
「…でしたか~~。うんうんうん。」

小埜瀬、あらためて4人に頭を下げて、
「すみませんでした。そして、ありがとうございました。」

いきなり愛結美も菜帆子も、体をシャキッとさせて小埜瀬に両掌を前にヒラヒラと、
「いえいえ。そんな…。」

小埜瀬、申し訳なさそうな顔で、
「…けど…。本当に、申し訳なかったんですけど…。…全然、その時の事、覚えてなくって。」

その声に4人、瞬間、
「ぷっ。」
そしてまた4人共に、
「あ。」
それぞれ、
「いや。」
「ごめんなさい。」
「…つぅか~~。」

「うんうんうん。確かに。」
最後は佐津香。

菜帆子、
「いや。課長~~。…驚くほど。…全く…、起きなかったです。とにかく、目が覚めなかった。…あれだけ動かされても…。…それに…、気持ち悪くなってしまうような事も…。」
顔を左右に振り、
「全く…。」

「あっ。でも…。」
愛結美。
「トイレで床に座って、佐津香さんから起こされて。その時は、しっかりとシャキッと。」

菜帆子と佐津香を見て、
「…されては、いたんです。…だから、私たちも、てっきり、大丈夫だなって…思って…。」
語尾を小さめに。
「…でも…。…外、歩いていて…、急に佐津香さんが…、後ろを…。」
愛結美、菜帆子と佐津香を見て、
「…それ…から…。…だよね。」
いきなり声を大きく、
「課長、正座したままでダラリと…。」
愛結美、右から倒れるようなゼスチャーで、
「こんな…、そのまま、地面にダラリと。…だから、び~~っくりしちゃって~~~。3人で、課長~~って。大きな声で…。」

佐津香、
「小埜瀬課長。」

小埜瀬、
「あ、はい。」

「失礼ですけど…。今まで、あんな経験は…???」








好きになれない。   vol,106.  「ウチの女房も…。随分前になりますが…。」

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※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。

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