燈子、佐津香を見て、少し、緊張しながらも、
「佐津香さん、出世、嫌いなんですか~~。」
今にも泣きそうな顔で…。
そんな燈子を見て佐津香、
「あ~~~ん、ごめんなさ~~い。」
燈子を抱きしめるように、
「なんか、申し訳なかったよね~~。まっ。確かに、私は、この会社、長い。社長とも昵懇の仲。まっ。…でも、それはそれで仕方がないんだよ。昔っからだから。…しかも、それはみんなが知っていること。」
そして佐津香、
「ここにいる人、みんな知ってるよ、私と社長の事。」
すぐさま燈子と千優、
「うそ。そうなんですか~~???」
基美も励も、顔をコクリと、
「当然。しかも…。」
「佐津香さんの出世嫌いもみんな知ってる~~。」
「…ってか、あれ…、大丈夫なの~~~???…課長~~。」
菜帆子。
いきなり、メンバーたちの目が小埜瀬に。
それでも小埜瀬、それほど…、ではない様子。
立ち上がり、トイレに…。その足取りも、しっかりとはしている。
順平、
「さっすが、課長~。」
菜帆子、
「でも…。なんか、さっき…、ダラリとしていたような…。」
そして…、宴もたけなわ。吉竹の音頭で締め括り。
若いメンバーはそのままカラオケやら二次会に…。
吉竹も若いメンバーから誘われて…。
「仕方がねぇなぁ~~。」
店の玄関で…。
「んじゃ、愛結美~~~。お疲れ~~。」
右手をひらひらと。
愛結美、
「お疲れ様でした。」
吉竹に一礼をして。
結局、いつも通りに、最後に残ったのは…。愛結美と菜帆子、そして佐津香の3人。
そして…、3人共々、顔を見せ合い、同じように、
「まっ。いつもの事で…。」
「かかかか。」
「確かに。」
そして、佐津香、
「…って言うか…、小埜瀬さん…どした…???」
愛結美、
「へっ…???…いや…、若いのと一緒に…、カラオケって…言ってなかった…???」
菜帆子、顔を左右に振って、
「ううん…。」
佐津香、
「うそ。」
そして…。他の客に迷惑掛からないように…。
「どこ…???」
すると…、女性客のひとりが…。何かしら、困ったような顔をしてトイレの方を…。
佐津香と菜帆子、顔を見合わせて、
「えっ…???」
そして…、トイレの方…。
佐津香、
「うそ。」
菜帆子、
「マジ…???」
小埜瀬、トイレのドアに、そのまま背中を付けて、床に腰を下ろして…。
右脚は膝を折り、左脚は伸ばしたままで。
佐津香、愛結美に手招き、
「ちょっと、ちょっと。」
愛結美、佐津香の方に、そして、
「うそでしょ。」
佐津香、
「ちょっと、ちょっと。小埜瀬さん。小埜瀬課長~~。」
声を掛けても目を覚まさない小埜瀬。
菜帆子、
「小埜瀬さ~~ん。」
愛結美も、
「課長~~。起きてくださ~~い。」
けれども…。
佐津香、仕方なく、小埜瀬の右肩に手を、そして揺らしながら、
「小埜瀬さん。小埜瀬さん。大丈夫ですか。」
すると…、ようやく…、小埜瀬、目を…。途端に、
「うわっ。」
目をパチクリと…。
「おっと…。」
目の前の佐津香と愛結美、そして菜帆子を見て、
「あっ。すみません。申し訳ない。…って、俺…???」
小埜瀬、今、自分の事を…。
「あ、あ~~~。…たく。…なんで…。」
佐津香も菜帆子も愛結美も、
「大丈夫ですか~~???」
その声に小埜瀬、目をがっちりと瞑って。そして、体を何とか起こして3人に、
「申し訳ない。本当に、すみません。申し訳ない。ごめんなさい。」
ようやく立ち上がり、3人に謝る一方。
佐津香、
「本当に、大丈夫ですか~~~???」
小埜瀬、見た分、ハッキリとはしている。
「あ、はい。大丈夫です。はは。この通り。」
直立不動になって、ニッコリと。そして3人に敬礼をして。
菜帆子、
「もぅ~~。びっくりした~~。他のお客がトイレの方に困ったように。」
小埜瀬、
「あ。そう…でしたか…。申し訳ない。ご迷惑。いやね。ちょっとトイレで…。そして…、出てきて…。…あ、はは。」
そして佐津香たち、店員たちに挨拶をして、玄関に…。
小埜瀬も3人の後ろを…。
菜帆子、
「それにしても…、さすがに、あれだけの料理で、あのお値段。」
愛結美、
「何々…、社長の金一封~~。」
その声に菜帆子、
「あ、そっか。それ、あったね~~。」
「しっかりと、使わせて頂きました~~。」
小埜瀬、3人の後ろで、
「へぇ~~。社長…、金一封~~。そっか~~。」
4人で外に出る。佐津香と菜帆子、そして愛結美、お喋りしながらも…。
そして、ニコニコと…。
佐津香、瞬間、
「えっ…???」
いきなり後ろを見て…。
「うそ。」
菜帆子も、
「え~~~???」
愛結美、
「小埜瀬さん…???」
3メートルはあったか…。小埜瀬が正座をしたままの恰好で路上に横たわっている。
佐津香、いきなり、
「小埜瀬さん。」
菜帆子、
「た~~いへん。」
愛結美、
「ちょっと、ちょっと、ちょっと~~。」
倒れている小埜瀬に佐津香、腰を下ろして、
「小埜瀬さん、小埜瀬さん。ちょっと~~。」
好きになれない。 vol,086. 「ここにいる人、みんな知ってるよ、私と社長の事。」
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※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。