「旦那と従兄には、頭が上がらないって、事さ。私も、恵まれてるよ。」
麗子。
隆英、そんな麗子を見て、
「麗子さん。」
賀寿恵、隆英に、
「麗子さん。実は、今回のお話。」
隆英、賀寿恵を見て…。
賀寿恵、続ける。
「麗子さんの歳の離れた従兄でもある、横井土(よこいど)先生から、話を持ち掛けられたんです。」
隆英、顔を傾げながら…。
「横井土…、先生…。」
麗子、
「ふふん。」
バーテンダー、
「お食事は、いつものメニューで…???」
麗子、
「うん。あれにして。賀寿恵も…???」
賀寿恵の方に顔を…。
賀寿恵、ニッコリと、
「はい。お願いします。絶品ですから。ふふ。」
そんな賀寿恵を見てバーテンダー、お辞儀を。
「ありがとうございます。」
麗子、
「隆英は…???…何にする…???…何でも出来ちゃうよ、ここ。そこら辺のシェフも侮れない。って言ってるくらいの…、料理人だからね~~。」
隆英、
「へぇ~~~。初めて来たけど…。」
麗子、
「まぁ~~、食べてみな。目ん玉、飛び出るから。」
その声にバーテンダー、照れ臭そうにしながらも恐縮しながらチョコンと頭を下げる。
隆英、麗子を見て、
「あ。じゃあ~~。僕も…同じものを。」
賀寿恵、隆英の左隣で、
「ふふん。」
そして、カウンターの中に戻ってきたひとりの女性を見て左手を振る。
その女性も賀寿恵を見てニッコリと、右手を。そして、
「いらっしゃいませ。」
バーテンダー、その女性に、
「佐紀(さき)ちゃん。」
小声で、
「……お出しして。」
女性、ニッコリと、
「承知しました。」
そして女性、カウンターの3人に丁寧にお辞儀をして、
「ありがとうございます。」
麗子、そんな女性にニッコリと笑顔で…。そしてコクリと頭を。
「お願いね。」
女性、増々笑顔で、
「はい。」
そんな景色を見ていた隆英、
「麗子…さん…???」
麗子、そんな隆英の声に、ニッコリと、
「ふふん。」
賀寿恵、隆英に、
「実は、私たちがこれから食べるメニュー、あの人が作るんです。」
その女性にカウンターの上で、両手を差し出して。
隆英、
「へぇ~~~。」
賀寿恵、
「佐紀ちゃん。お願いね。」
佐紀と呼ばれた女性、ニコニコと、
「あ、はい。」
隆英、
「へぇ~~~。…そうなんだ~~。」
佐紀、準備に掛かる。
隆英、
「…で…???…その…、麗子さんの歳の離れた従兄…、横…。…ん…???」
思わず隆英、フィンガースナップ。
「確か…。横井土正嗣(よこいどただし)。経済産業省、製造産業局、局長。」
麗子、そんな隆英に、口を真一文字に、そして、ゆっくりと頷く。
「そういう事。」
逆に賀寿恵は驚いて、
「えっ…???小埜瀬さん、知ってらしたん…。」
麗子、間髪入れずに、
「一度だけね。」
隆英も、
「えぇ。」
賀寿恵を見て、
「一度だけ。…とは言っても…ご挨拶した程度で…。お話は…。麗子さんの旦那さん、励治さんからも、挨拶するようにって、言われて。凄い貫禄のある人って印象でした。」
賀寿恵、
「その…、横井土先生から、持ち掛けられて、一度会ってみてはどうかねって。」
そこまで言って賀寿恵。
「まっ。ただ、その時点で、既にお膳立ては出来ていたようで。」
麗子、
「賀寿恵に、徹底的に調べさせた。…って言うかぁ、私も実のところ、全く知らなくってさぁ~~。最初に旦那から聞かされた時には、リッツ…???…何それ…???…だったんだけど~~。正嗣に聞けば、まずとにかく会ってみろって。その一点張り。…で、賀寿恵に調べさせて…。…で、賀寿恵が、これはいけます。ってなって。すぐさまGO~~。」
ハイボールを一口。
「そしたら、もぅ~~。賀寿恵の言う通り、しっかりとお膳立て、出来てんじゃないの。…まっ。ある意味…、向こうさんも、ウチラの事、かなり調べたんでしょうけど。」
「そして。その結果が。」
賀寿恵。
隆英、
「な~~ほど~~。」
カウンターの中では、佐紀が手際よく…。
隆英、
「うそ。凄い。」
麗子、
「見てるこっちも…、見惚れちゃうよね~~。」
そして、バーテンダーに顔を。
「ねぇ~~。秋津(あきつ)さん。」
その声に秋津と呼ばれたバーテンダー、口パクで、
「恐れ入ります。」
笑顔で直立のまま、頭だけゆっくりと頷くように。
「15分で出来てくるからね。客を待たせない。言っておくけど絶品料理。」
麗子。
秋津、また笑顔で頷く。
「でぇ~~。」
麗子、そこまで言って、目を空に。そして目だけで、右左…。
「あっ。そっか…。まっ。今は…、無理だね~~。トラディショナル事業部、電話対応に忙殺されてるわ。かかかかか。」
その声と笑いに隆英、ニッコリと、
「仰る通りで…。皆様、お忙しく…、されております。」
麗子、
「かかかかか。…確かに。…多分、仕事になってないと思うけど。」
「正にその通り。池辺課長も、真宮部長も、構えなくって申し訳ない。と。」
左隣りの賀寿恵は笑顔で…。
麗子、隆英の話に、
「ごもっとも~~。」
好きになれない。 vol,075. 「旦那と従兄には、頭が上がらないって、事さ。」
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