そんな佐津香に、マーケティング事業部に入ってきた愛結美と菜帆子。
佐津香を見てすぐさま、
「佐津香さん、佐津香さん、佐津香さ~~ん。」
ふたり、共に佐津香を羽交い絞め。
「きゃ―――――っ。見た見た見た見た~~~。はははは。おめでとう~~。」
凄いはしゃぎよう。
それを見ていた武一。変顔をして、
「何か…???」
それから入ってくる小埜瀬。こちらもまた、3人を見て、顔を傾げて…。
「おはようございます。…何か…???」
そして…吉竹を見て、
「何か…???」
武一、そんな小埜瀬を見て、顔を小刻みに左右に、
「さぁ。」
まだまだ続く、愛結美と菜帆子の激励振り、
「凄いよ、凄いよ。なんたって、全国規模。優維香ちゃんたち、凄~~~い。」
「うんうんうん。…でね。それでぇ~~。」
武一、そんな3人を見ていて、またまた顔を傾げて、
「さっぱり分からん。」
そして…。次から次へとマーケティング事業部に入ってくる社員ひとりひとりが…、
またまた、こちらも、
「おほ~~~。やってますね~~。」
「ははは。うんうんうん。…だよね~~。佐津香さん、おめでとう~~。」
武一、いい加減に、
「朝から一体、何なん…???」
そして、今度は、
「おはようございま~~す。」
出社してきた霞龍二。
佐津香を取り巻くメンバーたちを見て、
「あは。や~~ってますね~~。」
そして龍二も、
「佐津香さん、おめでとうございま~~す。」
そんな龍二を見て武一、龍二を手招きして、
「龍二、龍二、ちょっ。ちょっと。」
龍二、吉竹に、
「あ、はい。部長、おはようございます。」
武一、
「な…。」
佐津香の周りを見て、
「一体…、何があった…???…うん…???」
「えっ…???…部長…、知らないんですか…???」
武一、首を振って、
「いや~~~。」
そして、小埜瀬にも、
「なぁ~~~。」
その声に小埜瀬も頷いて、
「えぇ。」
龍二、
「えっ…???…課長も…???」
武一、眉間に皺を寄せて龍二に、
「いや。だから~~。」
龍二、ズボンのポケットからスマホを取り出して、サササッと。スマホの画面を。
「これですよ、これ。」
武一と小埜瀬、画面の動画を見て、
「うん…???…東京…エレファント…モール…。」
「ですよね。」
武一、
「こ…、これが…、何か…。」
龍二、
「実は、ここで昨日、全国規模の、インテリアゴールデンスタッフコレクションがあったんです。」
武一、まだ眉間に皺を入れたままで、
「インテリア…、ゴールデンスタッフコレクション。」
龍二、吉竹に、
「部長、部長~~。ほら~~。インテリアって言ったら~~。」
武一、今度は右目を歪めて顔を傾げて、
「うん…???」
2秒後…。
「わっ!!!」
いきなりフィンガースナップ。
龍二、ニコニコと、
「おっと~~~」
「分かった。佐津香さんの娘さん。」
「ビンゴ~~。その通り~~。」
けれどもまた武一、
「えっ…???…まっ。佐津香さんの娘さんが…???…インテリアの仕事をしているのは知ってる…。…けど…、それが…???」
すると龍二、吉竹に、ぶすっとした顔をして、
「もぅ~~。部長~~。鈍いな~~。佐津香さんの娘さんも…。…って…。僕も、娘さんが…、なんて言ったら、申し訳ないんですけど…。僕よりも年上ですから。…でぇ~~。その…。…ん~~。でも、他に言い方…。…その…、娘さんが勤務する~~。会社も、このスタッフコレクションに出展してるんですぅ~~。でぇ~~。その結果~~。佐津香さんの娘さんが勤務している会社。最高位の金賞、受賞しちゃったんです~~。全国規模ですよ、全国規模~~。物凄い盛り上がったんですから~~。…って、何を隠そう、僕も、姉ちゃんに連れられて、行った口なんですけど…。」
武一、腕組みして、
「そっか~~~。佐津香さんの娘さんが…。」
龍二、
「聞くところに依ると、このインテリアゴールデンスタッフコレクション。前回も佐津香さんの娘さんの会社が金賞受賞したとか。だから、今回で2連覇。金賞受賞したお蔭で、売り上げも凄いそうです。」
龍二も腕組みして、
「芸能界で言えば、年末の紅白に出た歌手は次の年の営業が物凄い。それ程なんだそうです。」
「へぇ~~~。それ程までに…。」
「だ~~~って部長~~。お客さんの数だって数万人。しかも。しかもですよ部長。昨日のこのイベント。インターネットでも大盛上がり。それにテレビ放送まで。」
そこまで聞いて武一、
「うそ。そこまで……。…って言うか、おまえ。随分詳しいな。龍二。」
「だから言ったでしょ。姉ちゃんに連れ出されたって。リビングでゲームしてたらいきなり。…結局…。姉ちゃんと姉ちゃんの友達の後ろを金魚の糞みたいに。…で、ペチャクチャ喋っているのが自然に耳に入ってくるから。インターネットでも、アクセス数、1000万超えたって。」
好きになれない。 vol,057. 「佐津香さん、佐津香さん、佐津香さ~~ん。」
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