何とも…、余りに非現実的な…。
後部席、チャイルドシートの中の愛理と円華を守るように、
丁度シートの真ん中でふたりを笑顔で見守っている陽織の姿。
真輝、再び、
「陽織…ちゃん。」
柚香も、
「陽織…。」
そんな真輝と柚香を見て陽織、
「ふふ。愛梨と円華は私が守るよ。安心して、お姉ちゃん、真輝。」
柚香、既に心臓はバックンバックン。
「…って…、陽織…???…どういう事…???」
真輝も後ろを見ながら、
「何がどぅ…???」
ただ…。
陽織は陽織で、そんなふたりの声に、
「うん。事故が起こるのが…分かったから…。見えたから…。…だから…、来たの。」
見れば、さっき、左側に飛び込んで回転しながら、
ボロボロになった黒の乗用車の周りは人だかりに。
その時、運転席側の窓にコンコン。
真輝、窓を開けて、すぐさま、
「大丈夫ですか…???」
男性に声を掛けられる。
その声に真輝、
「えぇ…。無事です。」
「いやいやいや。びっくりしましたよ~~。あれを見てください。」
男性も左側の黒の乗用車を指さして、
「何がなんだか…。…で…、降りてみたら、またまたビックリ。お宅…、凄いや。」
その声に真輝、
「えっ…???」
そして車を降りて後ろを見てビックリ。
「うそだろ。」
そして柚香に、
「ママ。ママ。外。」
柚香、言われるままにドアを開けて、そのまま後ろを…。
「うっそ。」
何と、真輝と柚香と子供たち4人を乗せた車のすぐ後ろの車4台が、
凡そ黒の乗用車に衝突されて車の向きが変わっていた。その傷痕も生々しく。
しかも、真輝の車のすぐ後ろの車は真輝の車と僅かに5センチという。
ギリギリの位置で止まっていた。
真輝、
「有り得ない。」
男性も、頭を振りながら、
「まず、有り得ない。全くの…、損傷なし。」
真輝、その声に、コクリと。
「えぇ。」
その時、柚香、
「パパ。パパ。」
その声に気付いて真輝、
「???」
柚香の顏を見て後部座席を…。
「あれ…???」
柚香、顔を傾げて…。そして、
「…もしかして…。」
陽織の姿は…、もはや、なく…。
男性、そんな男性を見て、
「どうしました…???」
「あ、いや…、後ろのシートを見てたんですけど…。」
すると男性、
「あぁ~~。可愛らしいお嬢ちゃんたち。うんうんうん。最初っから見えました。可愛いですよね~~。」
その声に真輝、
「えっ…???…最初っから…???」
「えぇ。」
それから…、1時間掛けて、ようやく解放された柚香と真輝。
「ふぅ~~~。やっと。なんとか~~~。」
「いやいやいや。とんだ災難。」
柚香、そんな真輝に、
「だよね~~。もぅ~~。愛梨と円華の事ばかり気になって~~。」
「うんうんうんうん。」
けれども、その割には愛莉と円華は終始ニコニコと。
運転しながら…。
柚香、
「ねぇ~パパ~~。」
「う~~ん…。」
真輝。
「もしかして…。陽織が…、助けてくれた…???」
その声に真輝、
「ん~~~~。分からない。…でも、考えられる事はひとつ。みんな…、守られた。…そういう風に考えて、間違いなし、かも。」
柚香、後ろを見ながら、
「そうね~~。」
そして…。2時間後にはホテルにチェックイン。
そして…、部屋のテレビで…。
「おっと~~。」
真輝。
柚香もスマホで、
「うんうんうん。ニュース、出てる。」
真輝、
「なんとまぁ~~。盗難車。しかも…、窃盗の常習犯って…。…そりゃ、逮捕されるわ。しかも…、全身打撲。搬送後に身柄確保。かぁ~~。衝突された車両の内…、1名は重症。その他5名は軽傷。やれやれ。とんでもねぇなぁ~~。」
瞬間、柚香のスマホに着電。と、同時に真輝のスマホにも。
柚香、
「わお。大ばぁば。」
真輝も、
「こっちはじぃじ。」
そして、ふたり同時に、
「もしもし~~。着きました~~。」
幸乃、スマホ越しに、
「今、ニュース見てびっくり~~。大丈夫~~???」
吾大、
「おぃおぃおぃおい。どうなってる~~???」
柚香と真輝、また同時に、
「もぅ~~~。凄かった。し、酷かった。」
それから、愛莉と円華を見ながら、スマホでその経緯を…。
幸乃、話を聞きながら、
「…???…陽織…???」
吾大も吾大で、
「は…???…陽織ちゃん…って…???はっ…???」
騒ぎまわる愛梨と円華。
真輝、
「捕まえた~~。ははは。」
愛莉を抱き締めながら。
柚香も円華を抱きながら…、ふたり、共に外の景色を…。
「いい景色だね~~。」
そして真輝、
「さて。そろそろ、夕食~~。」
柚香も、
「だ~~ねぇ~~。」
そして翌日。
東京ディズニーランド。ゲートを潜って…。
何とも元気な愛梨と円華。懸命に両親の周りを動き回っている。
柚香と真輝は、各々ベビーカーを押しながら。
すると…、後ろから声が、
「大丈夫だよ~~。愛梨と円華は、私も守るから~~。」
その声に後ろを振り返る柚香と真輝。
すると、また陽織の姿がそこに。
陽織、
「ふふ。」
そして陽織、ニッコリと笑って、
「お姉ちゃんと真輝は、安心して。」
麦藁帽にノースリーブのワンピの陽織。
そんな陽織を見て柚香も真輝も、ニッコリと、
「うん。お願い。」
「おぅ。頼んだ。」
そして…。その後…、陽織は…。時折…。
―――― Fin ――――
LIBRA~リブラ~ vol,229. LIBRA~リブラ・右の心と左の心~
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