「2つ星の筋金入りの指導の賜物だからね〜〜。」 | THMIS mama “お洒落の小部屋”

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好きになれない。  vol.126.

ドキドキ 上京したはいいものの、高校時代から始めた音楽も手放せず、
高校卒業後ギターケースと荷物を抱え、高村の家に居候状態。

兵庫の実家では母親の水越愛理(みずこしあいり)がアパート暮らしをしており、
日々のパートの仕事だけで生活している。いわゆるシングルママである。
そのために愛生への仕送りは…なし。

母親に言わせれば、
「自分が料理人になりたいからって、勝手にアパート出て行ったんだ。自分で何とかしな。かあさんは面倒見切れない。」

自分の進路を決める段階から高校を卒業するまで母の愛理とは口喧嘩が絶えなかったが、
強情な愛生に軍配が上がった。

愛生の頼りは祖父の通のみ、電話をしてはすぐに切られ、
そのために高村には何度も手紙を書いた。

そしていよいよ大学入学ギリギリで母親の愛理に電話。一言、
「来い。」
それだけだった。


高村の家は、店舗の奥に繋がっている。
料理一筋に生きてきた高村。一度は結婚したが、
余りに料理に愛情が注ぎ過ぎて妻とは離婚。目下、独り身である。
家の奥の倉庫をリフォームして愛生を呼び寄せたのだった。
但し、そのリフォーム後の広さは僅かに6畳。

けれども愛生は、
「東京で自分の部屋が持てた——————っ!!!」
と、大はしゃぎ。通にダイブ。

そんな愛生には通、
「この、バッキャローが〜〜。」


大学への費用は全て通が…。
けれども、空いた時間は全て店での店員まがいの仕事で費やされた。

ミシュラン2つ星の店で働いていた通。
実際、自分の店を持つだけで、他には何も要らなかった。
逆に、余計な人間関係を必要とはしなかったのである。
そのために、自分だけで十分、賄う事が出来たのだ。
しかも、自分の事を適当人間と言ってはいるが、人のこころを掴むのには長けていた。
そのために年齢層関係なく愛されてもいた。

そんな通の生活に入り込んだ愛生、そんな愛生も今や33歳。
大学で知り合った同じ音楽仲間と音楽も楽しみながら、
そして、料理に掛けても祖父の通の筋金入りの指導で客には好評。
そのために、愛生は大学卒業後も、就職はしていない。
いつからか、休みのない高村家の食卓で毎日のように働いている。


愛生、それぞれの料理を…。

陣屋、その料理に両手を合わせて、
「では、いただきます。」

蔵井氏、
「かかかか。さすがに愛生ちゃん、旨い。」

「なんたって…。」
陣屋、
「2つ星の筋金入りの指導の賜物だからね〜〜。」

葉子も、満足げに、顔には出さないが、
「ん〜〜。美味し。」

輪湖も、
「うんうんうん。完璧だわ。」
そして、
「…しっかし…、2つ星の料理人がさ、メニューで、これだけの価格でって言うのも…、凄いよね〜〜。」

蔵井氏、
「かかかか、それは何と言ってもマスターの太っ腹。」


実は、ここ、高村家の食卓。この、「食卓」と言う字の如く、
メニュー一品一品の価格が一般的なレストランなどよりは価格は抑えられている。
それでも味は高級レストラン並み。
けれどもその中にも、敢えて言わせれば、庶民的な味でもある。

通にすれば、
「僕自身は、適当な人間だよ。…でもね。この仕事、長いからね〜〜。店に入ってくるお客さんの顔見れば、どんな味を出せばいいか、自然に分かってくるもんなんだよ。かかかかか。…な〜〜んてね。」


料理を半分ほど食べて葉子、
「…で、部長…???…何か、私たちに、お話…???」

その声に陣屋、
「ふん。その通り。学ちゃん。」

既に料理を食べ終えてビールを一口の蔵井氏、
「畏まりました。」
そして、
「実は…。」
隣の輪湖、そして葉子を見て、
「ふたりにお願いしたいことが…。」

輪湖、目をパチクリと…。
「おね…がい…。」

「まぁ…、単刀直入に言えば…。今度、入ってくる新人。」

輪湖、
「あっ。はい。」

葉子はスプーンでまた口に。

「その人を…、教育…して…頂きたいと…。」

その声に輪湖、
「へっ…???…私と葉子に…???」

いきなり葉子、目をパチクリ。そして隣の陣屋を見て…。

陣屋、そんな葉子にニッコリと…。
「そういう事…。」

輪湖、いきなり、
「いやいやいやいや。新しい人の教育って…???いつも、先輩の、湯川(ゆかわ)さんや荒俣(あらまた)さん。美神(みかみ)さん。」

その声に陣屋、
「まっ。そうなっちゃうよね〜〜。あなたたちの大先輩でもある。うん。」

葉子も輪湖も陣屋に顔を2度コクリ。

「なんだ…けど〜〜。」
陣屋、笑顔で口を一文字。

蔵井氏も笑顔で、
「…と、まぁ…、今までなら、そうですけどね〜〜。ふふん。」
そして蔵井氏、通を見て…。

そんな通は蔵井氏を見て…、
「ん~~???」






こんな私です。~選葉子(すぐりようこ)~   vol,021.   「2つ星の筋金入りの指導の賜物だからね〜〜。」

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