和奏、左手で髪を掻き上げて、
「理沙~~~。」
そして、1、2分の沈黙。
和奏、
「蒼介~~。」
「ん~~。」
「私も…、その人に会っちゃ駄目…???」
蒼介、その状態のままで顔を和奏に、
「いや…。駄目って事は…ないけど…。最初っから、代理人は立てずに俺と和奏さんとでって事で。」
「うん。お願い。私、駄目だわ。その人、この目で見てみないと、これからの事なんて、全く考えられない。」
和奏の声に蒼介、
「分かった。明日、久我さんに話しておく。」
「お願い。」
翌朝、何気に元気のない和奏。
栞奈、食べ終わった食器を片付けながら、
「かあさん、どうした~~。なんだか元気ないけど…。」
そんな栞奈の声に、まだ食事を食べてる理沙、カウンターの方に顔だけ振り向いて…。
和奏、栞奈に、
「そお…???くくくく、別にな~~んにもないわよ。」
ただ、少し考えて、
「ん~~。強いて言えば~~。四十肩…、かな~~。最近さ~~。なんだか、左肩が、重い訳よ~~。」
「げぇ―――――――っ、四十肩~~。かあさんが…???…とっくに五十肩かって思ったけど。」
瞬間、和奏、泡の付いたスポンジを栞奈目掛けて投げるふり、
「こらっ、お姉ぇ。」
栞奈、
「わわ。おっと危ない。」
その後ろで車椅子の上でけらけらと笑う理沙。
栞奈、母親を見て、
「な~~訳ないよね~~。まだまだ~~。まだ30の後半って感じだもん、かあさん。若い、若い。」
その声に和奏、
「お褒めに預かり、恐縮でございます~~。」
「まっ、とうさんが、とうさんだから、かあさん、若くいられる訳だけど~~。」
新聞を読みながら蒼介、新聞を捲って、
「どういう意味よ~、お姉ぇ~~。なんか、引っ掛かるな~~。それって、誉め言葉~~。」
「そのように受け取っていただければ、本望でございます~~。行ってきま~~す。セミナーの時間、早いって~~。もぅ~~。」
和奏、栞奈に、
「行ってらっしゃ~~い。」
「…で、理沙~~。いつから、将輝君、家庭教師~~???」
コーヒーを一口。蒼介。
残りのパンを食べながら理沙、
「うん。もぅ、今日からやっちゃう。だって、今からやんないと間に合わないよ、1か月ちょっとしかないんだよ、もぅ10月も後半~~。あのバカ、良く赤点以下で高校生やってられるよ。…ったく~~。」
そんな理沙に、下唇をビロンと蒼介、
「おやおや。」
キッチンで和奏は、
「くくくく。」
鴻上高校バスケ部。
馨、将輝に、
「何、おま。朝からやけに顔、緩みがちじゃん。」
そんな馨に将輝、
「へっ…???…そっ…???…別に~~???」
にやけた顔で…。
そんな顔を見て馨、いきなり将輝の首に左手を回して、
「くぉ~~のぉ~~。何か、おま、俺に隠してんな、おぃっ!!!」
将輝、
「い、い、痛って。」
夕方、瑞樹家の玄関。
目をパチクリと杏美、そして麻理絵。
杏美、
「理沙から、ちょい、追加注文ある~~って、聞いたけど。はぁ~~あ…???…まさか、馨君も~~。」
180の大柄な男子が3人の女子にペコペコと頭を撫でながら…。
「すんません。俺も…、中間、とにかく、スレスレで…。」
将輝、
「…ったくぅ~~。」
杏美、
「あんたは生意気言うな。」
その声に将輝、いきなり縮こまって、
「すみません。」
麻理絵、
「かかかかか。まっ、やるっきゃないでしょ。」
理沙、
「だ~~ねぇ~~。はい、入って~~。おかあさん、今、出掛けてる~~。そんな時間は掛からないと思うけど~~。テーブル、使っちゃお~~。」
杏美、麻理絵、
「了~解。」
その頃和奏、蒼介と連絡し合い警察に…。
和奏、
「蒼介。」
蒼介、
「あぁ。うん。こっち。久我さんと南さん、一緒だから。」
和奏、コクリと、
「うん。」
杏美、
「さて。どれから行く~~。…って言うか、どれが一番苦手~~???」
その声に将輝、口を尖らせて斜めに、
「……。すうが…。」
「んじゃ、国語から~~。」
「えっ…???」
「バカね~~。一番苦手なの先にやってどうすんのよ。時間がなんぼあっても足んない。」
麻理絵、
「かか、アズ~~。中々いい事言う~~。」
理沙、
「はいはい。んじゃ、国語ねぇ~~。」
南が蒼介と和奏を連れて、ドアをノック。
信じて…良かった。 vol.130. 和奏、左手で髪を掻き上げて、「理沙~~~。」
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※ご本人の承認の下、紹介させて頂いております。