ライブ
初めてのライブは、ただ ただ人の多さに圧倒された。
太陽の眩しさと、風に乗り届いてきた潮の香りが
真夏の景色を彩っているみたいだった。
そんな、いつもとは違う色の時間が、
あたしを必要以上にドキドキさせていた。
昼間は生暖かい風を吹かせ、
会場にいる人々をげんなりとさせていた気候も
だんだんと夏の夕方を感じさせる、涼しい風に変わり
あたりは少しずつ、赤みをおびてきた。
スタートは18:30。
昼過ぎから、外で待っていた あたし達の顔や腕は、
日焼け止めクリームを塗ったにもかかわらず、真っ赤になっていた。
「あぁ、最悪。顔がひりひりするよ」
「ほんとだよー。足も焼けてる」
あたしとナオは、お互いを見合いながら苦笑する。
ナオの、ショートパンツからすらりと伸びる白い足は、赤くなり
あたしのノースリーブの腕も、負けじと変化していた。
タオルか何か持ってこればよかったな、
ぼんやりとそんな事を考えていると
ポツリとナオが口を開いた。
「オカチンいないね」
「・・・オカチン?」
「オカダくんだから、オカチン」
「あぁ・・・」
彼は来ているかもしれない。が、この人込みだ。
偶然会えるなんて、奇跡に近い。
「でも、会えなくても、嬉しいけど」
「えぇー?なんでよー会えたほうがいいじゃん」
「そうだけどさ・・・」
もしも、彼がこの場所に来ているのだとしたら。
それはそれで、嬉しいから。
例え ばったり会えなくても、
同じ場所で、同じ時間を共有しているんだって
そう思うとなんだか、こんな他愛もない時間さえ特別な感じがしてくるから。
それって、
すごく嬉しい事だと思うんだ。
「そろそろ行こっか」
「うん」
立ち上がるナオに続いて、あたしもパタパタとスカートの砂をはらう。
夜は、いつのまにか すぐ側まで降りてきていた。
――ライブが始まる。
夏休み
忘れないように、考えないようにすればするほど、
あたしの中で 彼の存在は大きくなっていった。
きっと、会わなければ、姿を見ることもなければ、
時間の経過とともに忘れていくものなんだろう。
でも、電車の時間を戻した彼は
何事も無かったかのように、いつもの場所にいた。
彼が、近くにいると体は固くなってしまうし
マイちゃんと話をしていても、声が上ずって、不自然な喋り方になってしまう。
(マイちゃん曰く『いつも変だから大丈夫』らしい)
意識しない事を意識するのは、すごく難しいみたいだ。
しばらくは、そんな状態が続き、
また夏がやってきた。
夏休みに入ると、大阪へ行く機会も増えた。
レッスンはだんだんと難しくなり、
あたしは毎回自己嫌悪に陥った。
同じクラスだった友達は、ジャッジで上のクラスへと上がっていくし
あたしは、足踏み状態で、そこから動けないでいた。
「はい、ストップ。この時、妹の気持ちになって考えたか?
考えていたら、そんなにウロウロ歩き回らないはずだよ」
「テレビじゃないんだから、アップされるわけじゃないんだから、
小さな表情をしてたってダメだろう。
大げさすぎるくらいで丁度いいんだ、もう一回」
レッスンが終わるたびに、どっと疲れて電車に乗り込んだ。
志保ちゃんは、夏休みの集中講座を受けるらしいから
しばらくクラスが離れてしまう。
どんどん、皆が離れていくような気がして
寂しくなった。
いや、離れていくことに、じゃない。
置いて行かれることに、だ。
それに・・・寂しいんじゃない。
焦ってるんだ・・・。
少しだけ広い、特急のシートにもたれて
窓の景色を眺めた。
夏の夕暮れが、色を濃くして降り立ってきている。
遠くに見える松林の、向こうにある、あの海が大好きで
いつも特急券と乗車券を買うたびに
窓側の席かどうかドキドキした。
今日の帰りの切符は、望み通り、海沿いの窓側の席。
だけど、もう7時になる。
いくら夏だからって、明るい車内から 薄暗くなった景色は見えない。
がっかりしながら、あたしは目を閉じた。
ウォークマンを再生すれば、相変らず
彼の好きな、あのバンドの曲が流れてくる。
彼に影響されたのはあるけれど、
それ以上にあたしもはまってしまった。
来週末にはナオと、ライブに行く予定だ。
初めてのライブ。
しかも野外ライブ。
実は、ほんの微かな期待も、少なからずあった。
もしかしたら彼に会えるかもしれない。なんて。
結局、好きなんだなぁ。
最終的に、行き着く場所はそこなんだ。
電車に揺られながら、ぼんやりとそう思った。
外はすっかり黒くなり、ビルの明かりやネオンが眩しい。
戻ってきた、そんな事を感じさせる街並みだ。
――もうすぐ、終着駅に着く。
ごあいさつ
こんにちは
実優です。
こんなつたない文章を読んで下さり、ありがとうございます
最近なかなか更新出来ずにいます![]()
文章がうまくまとめられずに、何だか取り留めない感じになっております
ゴメンナサイ。
読みにくいかもですが、今後ともよろしくお願いします(・∀・)