世界一有名な日記でおなじみ、
アンネ・フランクの隠れ家は、運河沿いのオフィスビル。
運河沿いは税金が高いのか、
運河に面しているのは入り口だけで縦に長い。
その「うしろの家」が彼女たちの隠れ家で、
なんと水洗トイレがついていた。
アンネの日記を読んだとき、さいしょに驚いたのはそこであった
下はオフィス!という都会の隠れ家に、
ふたつの家族と、歯医者のおじさんが隠れ暮らしていたというから驚きだ。
13歳のアンネは偏屈なおっさんとおなじ部屋だったから、
プライベートが欲しい!って叫んでいた。
日記には「友達が欲しい」「話し相手が欲しい」という声で溢れていて、
平和な日本の中学生と、考えることはいっしょなのだなと思った。
苦しいシーンはいくつもある。
もしも潜伏しているユダヤ人が亡くなったら、
それを支援してくれた優しい人は、
その死体を川に流すしかないだろう。
それがいつ運河を流れてきてもおかしくない。そんな話題もあった。
もっと心臓が凍ったのは、万年筆の件。
アンネの大切な万年筆は、間違えてストーブで燃やされてしまった。
「自分は火葬がいいから、
万年筆が火葬でよかった」
そう書かれたくだりで、わたしはフリーズしてしまう。
書く才能にあふれていた彼女は、やがて書くことのできない場所に連行される。
彼女の尊厳はあらゆる手で奪われ、
髪は刈られ、最終的に火葬なんてものもなく、
折り重なるように遺棄されたものと思われる。
土葬が文化的に浸透していたヨーロッパで、
わたしは火葬がいいなと言った、こまっしゃくれた女の子のことを思う。
運河はわたしにとって、
アンネ・フランクの思い出とつながる風景だ。
☆関連記事☆