小説★あっちの水は苦いぞ 6 | みみぴちがってみみぴいい

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『私 絶対にやだけどなーー だって 男だよ?

 自分より男を選んだ男に 未練って。。。 麗子には悪いけど 気持ち悪いわ。』



ヒカリが 眉間の皺を深めながら 麗子の膝に手を置いて言った。


ヒカリの言葉は 時々 えぐるようだったりするが 言うときに 眼を見つめていたり


手を身体に触れながら言う癖がある。 あえて ひどいことを言うわよ というサインのように。




私たちは ヒカリのストレートな言葉にも 気持ちの見せ方にも慣れているし


それがヒカリだと なんでもないことのように思っていられる。


それが 友情っていう 生臭い名前なのだとしたら 友情だと思う。


まったく 怒りにならないから。




『けどさ いまどきは そういう差別って しちゃいけないんでしょ? 同性愛。ってのも。』


美鈴が 麗子とヒカリの顔を 見ながらそっと 生春巻きに手を伸ばした。


『なに このソース すっごい美味しい!!』


麗子は 珍しく料理への反応をすることなく 美鈴に話しかけた。


『美鈴だったら どう思う? 旦那さんが 同性愛だって言ったら。』



生春巻きから エビをこぼしてむせながら 美鈴はワイングラスに手を伸ばした。



『えーーーー!! どうだろう? 浮気って言うのとは また違うでしょ?


 浮気だったら まぁ 一回くらいって 思えるけど なんていうかさー


 相手が 誰であれ 自分以外を選んだ っていうだけで もう ダメかも。


 二度と 信用できないし 戻ってきたとしても 許せないし こっちから願い下げって。


 答えになってる? けど 樹里ちゃんに 話したってのが 一番びっくりした。』





私も 驚いたのは そこだった。 当時の樹里ちゃんの年齢を聞いたら 小学4年だ。


その娘に お父さんは実は男性が好きだから 離婚するって 話したってこと?


と 麗子に聞いたら そうだ と答えた。




『お義母さんが 倒れて しかも 精神的に追い詰められちゃったから


 誰彼かまわず 話し出してたのよ。 息子が男と結婚してとか 孫を捨てた なんて。


 それを聞かされる前に 説明しようって思って 旦那と二人で 話したわ。


 樹里が 一番気にしてたのは 自分が 愛の結晶だったのかどうか ってことだった。


 まだ 自分で上手く説明できなかったから セラピストの先生のとこ 通ったり


 心療内科にも 1年通ったかな。 私と一緒に。


 で 樹里は 愛し合って生まれたんだし 居てくれたから ママもパパもがんばれたって


 じっくり話し合ったって感じかな。


 まぁさ ここで話せるようになったのだって ようやく今日でしょ。私でさえ。


 みんな 傷は深いし 心のダメージはおっきいのよ。 それでも まだ 庇っていたいの。


 彼のこと。 世界で一番 理解してる女 っていう立場が 気に入ってるのかな?』



私が 『マゾだな。麗子。』 と言ったら みんなが笑った。





怒りの先端には 笑いがある と思う。


怒りすぎて 悪く言い過ぎたら あとは 吹き飛ばしたくなる。




けれど 憐れみや 同情の先端にあるのは 痛みだったりする。


だから 私は同情が嫌いだ。 同情は 愛でも 優しさでも 思いやりでもなく 



優越感だ。



麗子は 誰に優越感を抱きたいのだろう? つまり 誰に劣等感を感じているのだろう?


そんなことを考えながら テレビで見かけるより ずっとキレイな すっぴんの麗子を


じっと眺めた。





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ベッドシーンがないので 人気はないと 思われるこのシリーズ 笑


それでも 続きます 笑