小説★決めた心は 沖縄に 5 | みみぴちがってみみぴいい

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こちらの 続編となっとります  決めた心は沖縄に 1   2       4







夜には むすびの家族四人で 沖縄のホテルのロビーに揃っていた。



誰も 不思議がることなく  飛行機で見かけた 変なおやじやら



憎たらしい子供の話をして 笑って過ごした。






むすびと姉が 同じ部屋になり 両親が たまたま空いていた 隣の部屋になった。



『おねえちゃんまで 来るとはね。』



むすびの姉 ゆかりは 漫画家だ。 けれで 売れてないので ほとんどの時間を



アシスタントして稼いでいる。 締め切り前だと 2週間ほど 帰宅もしないが



暇だと 何日でも 家にいる変わった姉だった。




『例の 不倫が 終わったってこと?』



むすびは 小さく頷いて 『ってこと』 と言葉にした。



窓を開け サンデッキに出てみると ぬるい風が 髪を泳がせ 肌にまとわりついてくる。



水色だった海が 月夜に照らされて 群青色に揺れている。



水色でなくても 美しいんだな と思いながら むすびは 姉に ありがと と言った。





『寂しかったんだ。 一人でさ。 携帯に 触るのも怖いの。』



『名台詞だわ。 今度 使おう。 携帯が 怖いのか。』




『そう。 怖かった。 電話がかかってきても 怖いし こなくても 怖いの。』





浮き輪もつけずに 海岸線が見えなくなるまで 泳いでいるような 恐怖感なんだよ と



姉に話すと 『あんた 説明下手なんだけど 例えさせると 妙に巧いわね』



笑いながら 褒めてくれ そして 黙って聞いてくれた。




『一緒にいても 悲しいのって 辛いのに 辛いから やめらんないのかな?』



『身体に悪いって 知ってるのに しょっぱい方が美味しいし 脂っこいのが美味いよな。』



『別れなきゃならないって 分ってたんだから 期限をつけとけばよかった。』



『あんたの期限が 短くなるんだしな。 けど まぁまだ25だ。 よかったよ。うん。』




めったに吸わない煙草に 姉が火をつけた。  珍しいね と声をかけると



『失恋といや 港町 酒 煙草 カウンターだろ。 なのに むすびったら かっこつけて



 沖縄なんて選ぶから 何で演出したらいいか 悩んだんだけどさ。



 線香花火よりは 大人っぽいかなって思ったから 買ってきたの。』




『男同士の恋ばっか描いてる漫画家なのに オンナの気持ちがわかるんだね。』



『ばーーか。オンナ向けに描いてるんだから オンナの気持ちを描いてるんだよ?


 明日さ 親父のレンタカーで 観光しよう。いいぢゃん、家族旅行ってのも。


 べたな 思い出 ははは。 沖縄テッパンツアーにしない?


 美ら海水族館行って 国際通りでお土産買ってさ。



 むすびらしいってか うちらしい慰め方だろ。



 何にも言わないけど 親父もかあちゃんも むすびの生きる気力を



 確認したかったんだと 思うよ。』





むすびは 頷いた。



両親の気持ちと 姉の言葉と 自分の人生が がじゅまるみたいだ と思った。



色んな想いが絡み合って 補い合って 独立しあって 邪魔しあって 許しあって




一本になってる がじゅまる。



『明日さ がじゅまるを みんなで見たいな。』 



むすびがそう言うと 姉のゆかりは おう と言いながら 夜の海を歩きに行くぞ と



靴を履きだした。  むすびも 靴に足を通しながら そっと涙を拭った。




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こんな家族を 作りたいな 笑


いや 子離れって なんだろうなって ずっと思ってるみみぴです 笑