小説★恋愛と結婚と幸せ | みみぴちがってみみぴいい

みみぴちがってみみぴいい

どってことない日常を どってことあることにする
ブログ

家の中では何してることが多い? ブログネタ:家の中では何してることが多い? 参加中
本文はここから




『やっぱりダメだった・・・』 2年付き合った廉と別れた夜 明菜は響子に電話した。


響子は半年前に 結婚したばかりの新婚だ。


わざわざ 幸せそうな女に電話する 自分の自虐性を笑いながら・・・







廉から 今のところ結婚はないと告げられ 明菜は別れを決意したいきさつを


電話口で事細かに話した。


『そっかそっか。』


響子は口癖の相槌を繰り返しながら 明菜の話に 頷いた。


『もおさ 32だよ。私 なにやってんだろう。』


『結婚した私が まだ大丈夫だよって言ったら 嫌味だよね?』


『うん。薬指に指輪してる立場の人に 言われたくない』


ははは と笑いながら 響子の声は 幸せの気配を充分漂わせていた。





『だけどさ なんだろうね。結婚って。』 響子の言葉は 意外だった。


『なんか あったの?』


まさか と響子は笑った。 何にもないから むしろ不思議なんだ と言った。






響子の声は いつものように 柔らかく そして 名前の通り 響きのある


美声だったが 言葉を選んでいるのか 途切れ途切れに 話を進めた。





暮らし というとっても個人的な行為を共有していくことが 不思議だった。

お互い 違うことがたくさんあるんだってことを この半年 公表しあってる。

違うことが 嫌なんではない。 

違う じゃあ どうするって 一緒に考えてる感覚に近いと思う。

かといって 恋愛してるときみたいに 好奇心や愛情で受け入れてもいない。

自分の居場所を確認したり 相手が確認してくるのを待ったりと


恋愛中には経験したことのない なにか をしているのが 不思議なんだ。




明菜は響子に 尋ねた。


『結婚なんて 憧れないほうがいいって 言いたいの?』


数分間続けた沈黙を 響子はこう破った。



『寂しさを知ってる男と 結婚したほうがいいと思う。』


『寂しさって?』


明菜の問いに 響子はまた しばらく沈黙を続けてから ごめんね と言った。


『うまく言えないのに わけの分からない話にしちゃって。』


ごくり と飲み物を流し込んだ音が 受話器に伝わった。


『収入だって 愛情だって大事な要素だと 思うんだ。


 どれもが必要なんだろうけど なんかさ 幸せな結婚って なんだろうって


 してみてからも ずっと考えてるのよ。


 でね 最近 あああそっか。って思うのが 寂しさとか孤独を知ってる人間の


 優しさ? なんていうの? 明菜のほうが 言葉選ぶのうまいでしょ?』


『愛より 金より 理解だとか 相性だとか そういうこと?』


『うーーーーーん それとも違う。もっと ずっと 心のほうの問題って感じ。』


『響子 結婚して半年経って いつも家でなにやってるの?』


『え?? なんで?』


『だって 結婚してから 結婚ってなんだろうって 考え続けてるわけ?』


響子は 笑いながら そうだ と答えた。

毎日毎日 彼を見送ってから 帰ってくるまで 何かしながら 結婚ってなんだろうって


考えてるんだ と笑った。 



『一般的な結婚っていうかさ 私にとって 結婚ってなんなんだろうなって。』



響子は 話をもう辞めるね と言った。



『明菜は きっと 明菜が求めてる結婚のありかたが あるんだろうね。


 だから それに見合った相手を探してるのかもね。 でも 彼ではなかったんだよ。


 自分が求める 結婚の形とか イメージに合う人が きっといるよ。


 私は ただ結婚って なんだろうって思いながらしてるから ずっと考えてるんだろうね。』






明菜は電話を切ってから 缶ビールのプルトップを開け 一気に喉を潤した。


廉との破局が 小さいことだったのか と思っている自分に 笑みを漏らした。



寂しさか・・・


悲しみや寂しさの深さは 人それぞれだ。 それは 決して優劣ではない。


けれど その深度を大事にする人間と そうでない人間がいるのは確かだし



深みのある人間が 好きだ。



同性を観察するとき 使っているその眼を 異性に向けたことが あっただろうか。







明菜は 残りのビールを煽ってから ソファーに身を沈めた。


視界が ぐっと開けた気がした。





ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村



小説だけランキング始めてみます

おしてくださーーーーーーい