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このお話に関してはまだ目次がないので、
遡って読まれたい方はお手数ですが、
ブログのテーマ別から選択して読んでやってくださいm(_ _ )m
いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。
かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。
暗闇の中、風を纏いながら狂声が聞こえる方角へと駆ける。
微かな血の匂いで身体の中の何かがドクドクと音を立てながら身体中を巡るのがわかる。
そして底から湧き上がるような力。
『この感覚が羅刹…』
嫌でも自覚させられるこの状況に冴は嘲笑を浮かべた。
「ヒャヒャヒャヒャー!!血ぃ~、もっと血をよこせ~!!!」
雄たけびをあげる羅刹とその横には横たわる者の姿。
まだビクビクと身体はうごめいていた。
『仲間内でやりあったか』
駆けつけ立ち尽くしていた冴を紅い目が捕らえる。
「…見つけたぁああああ!!!血をよこせぇええええ!!!」
刀を振り下ろそうとするのを抜いた刀で受け止める。
『ぐっ…』
鍔迫り合いになるも、身体から湧き上がる力に身を任せればその受ける力で徐々に押し返す。
冴の髪は瞬時に白髪と化していた。
短く息を吐くのと同時にグッと力を込め、押し付ければよろめいた羅刹の身体。
それを見逃さず、冴は心の臓を目掛け、一思いに突いた。
「ガハッ!!」
赤い目を見開いたまま、羅刹は膝を付き、冴は刀を身体から抜く。
勢いよく噴き出す血を冴は浴びながらその様を静かに見ている冴。
どさりと音をたてて、砂利の上に倒れた羅刹は一度ピクリと動き、そのまま動かなくなった。
訪れた静寂に闇をも纏う風が頬を撫ぜ、髪を遊んだ。
静かに目を伏せる。
刀についた血を取るために空を切り、刀を収めた。
そして徐に髪に手をやり、結っていた紐を解く。
さらりと落ちる髪が揺れる。
見上げた夜空は分厚い雲に覆われ星もなく、先程見上げた月もない。
ゆっくりと近づいてくる足音に視線を向ければ、微かに見える表情に笑みを浮かべていた山南だった。
「さすがですね、松原さん。以前のように刀にためらいがありませんでしたね。素晴らしい。
…おや、髪を解かれたのですか。…宜しいのですか?それは…」
「山南さん。この方たちはどうしますか?」
冴はその言葉を遮るように問いかけた。
「監察方の皆さんのお任せするとしましょう。もうそろそろやってくるころですから。それに…」
複数の足音が砂利の上を駆けてくる音が届いた。
「組長たちもいらっしゃるようですね。…では行きましょうか。…山崎君、あとはお願いしますね」
山南が視線を闇へと移せば、返ってきた声。
「…承知しました」
冴は山崎がいる闇に視線を送るものの、逸らし山南の後を付いていった。
その場所は嗅ぎなれた血の匂いが辺りを包んでいた。
「静かだな…。もう終わったのか?」
辿りついた斎藤が事実を確かめるように呟く。
沖田は木の陰から出てきたその姿を捕らえる。
「…山崎くん?」
「はい」
「これは誰が処理したの?」
「松原さんです」
「…冴…」
山崎の応えに沖田は静かに横たわる羅刹の死体を見やる。
脳裏に浮かぶのはあの日、初めて羅刹を斬った時の冴の表情。
『今日もまた怯えていたんだろうか…』
もしあの日のように怯えていたのなら、この胸に抱きしめ安心させてやりたい…。
沖田は冴がいるであろう方向に視線を向けた。
「山崎、俺から副長に報告しておく。この羅刹たちの後処理を頼む」
「承知しました」
「…」
「総司、行くぞ」
立ち尽くす沖田に声をかける斎藤。
そっと目を閉じた沖田はキュッと口を一文字にし、踵を返した。
夜は深さを増す。
京の人里離れた場所。
そこには風間が京にいる際に使う仮住まいの屋敷があった。
そしてある一室に影が二つ。
窓際には風間が煙管を咥え、視線は拡がる闇に向けられていた。
部屋の隅に控えるは天霧。
「まだあの犬どもは紛い物を作っているのか」
「幾たびと失敗しようとも繰り返しているようですね」
「…馬鹿は死なねばわからんか」
天霧の応えにクッと喉の奥で笑い、気だるそうに紫煙をゆっくりと吐き出す。
「雪村千鶴…。我が同胞…。犬どもが奴を鬼と知れば利用しようとする輩も現れるであろうな…。ましてや綱道…。あやつも怪しい。」
雁首をポンと叩き、闇を見据え紅い目を細めた。
「まずは雪村千鶴を幕府の犬どもから奪わねばならんな。全く…人間とはどうしようもなく非力で哀れなものだ。
欲にまみれ自分達が堕ちて行っていることすら気付くまい」
徐に外に向けて左手を伸ばす風間。
「月もなく、星もなく、風も止んだ夜とは…つまらんものだ」
その手を下ろし、自室へと向かいながら呟いた。
闇が揺れる。
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みふゆ