薄桜鬼・妄想小説【君の名を呼ぶ】第39話 | 浅葱色の空の下。

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薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。

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このお話に関してはまだ目次がないので、
遡って読まれたい方はお手数ですが、
ブログのテーマ別から選択して読んでやってくださいm(_ _ )m





いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。



かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。




















部屋に残った冴と沖田。


一つ冴が息を吐き、

「…荷物、用意しなきゃね」

沖田に笑いかけるも、沖田は眉根を寄せ口は一文字に結ばれていた。




立ち上がれば不意に傾いた視界。


「…っ!」

刹那、身体を包み込まれる。


ゆっくりと顔を上げれば、眉根を寄せる沖田の瞳と視線が絡んだ。



「平気?」


「…うん、ふらついただけだよ。ありがとう」

口元に笑みを浮かべれば、それに応えるように沖田の口元にも小さな笑みが浮かんだ。


「抱っこしてあげようか?」


「いいよ、歩けるから」


「可愛くないね、こんな時くらい甘えなよ」


「私より可愛い子のところへ行けばいいよ」

羅刹になった後ろめたさから出た言葉に沖田は眉間に皺を寄せた。



「僕は冴しかいらないよ?」


「…近藤さんは?」

その問いかけに呆れるように溜め息を零した沖田。


「…それはまた別の話でしょ?何だ、口答えも出来るくらいだね。安心した」


「総司…」


「何?」


「そんな顔しないで」


「…じゃあ冴もそんな顔しないで」


「…。…無理だよ」

眉根を寄せた冴は沖田に笑いかけた。


今にも泣きそうなその笑顔に沖田の胸をえぐられていく。



「行こうか」

湧き上がる感情を振り切るように冴が持っていた風呂敷包みをその手から奪う。


「あ…」


「これくらい持たせなよ」


「…ありがと」


「うん」




障子戸を開けば既に陽はとっぷりと暮れていた。


少しまだ昼間の暑さを抱えた風が頬を撫でていく。


月の上がらない暗がりの中で沖田の少し後ろを歩く冴。



長く続く廊下は次第に暗さを増し、冴は最奥の暗闇にぼんやりと視線を向けていた。



不意に感じた手の温もり。


『総司』

視線を上げれば、暗がりの中で正面を見据えたままの沖田の表情が窺えた。



「大丈夫だよ。僕がいる」


耳に届いたその言葉が冴の胸を締め付け、頬に雫が伝うのを感じた。


冴がきゅっと手を握れば、握り返した沖田。

どさりと床に荷物を下ろす音がした。


その手を引き寄せ、自分の腕の中に冴を閉じ込める。

頭を垂れ、冴の首元に顔を埋める。


温もりを確かめるように、肌を感じれるように頬を摺り寄せながら首筋、耳、頬と触れていく。

互いの髪が擦れる音と静かな息遣いが耳に届く。


触れ合った唇をそっと重ね、沖田は冴の唇を優しく食んでいく。


「…冴…」

暗がりの中、鼻と鼻が触れ合う距離で互いの瞳を見つめあう。


「大丈夫だよ、総司」

今度は冴が口を開いた。


「総司がいてくれるんでしょ?」


沖田はそれに応えんとばかりに冴を貪るように口付けた。


液を含んだ音と二人の上がる息が静かな廊下に広がる。

不意に冴が繋がれていた手をキュッと握る。

沖田は口付けを止め、応えるように冴の手をギュッと握る。


互いに呼吸を整える中、沖田はそっと冴の片頬を包み、その感触に目を見開いた。

幾筋にも流れたであろう涙の跡が冴の頬を濡らしていた。



「…冴っ」


「総、司っ」

沖田は腕の中に冴を閉じ込める。

冴も沖田の広く大きな背中に腕を回した。


言いようのない不安が二人を包む。




しばらく抱き合っていた二人。


冴が沖田の背中をポンポンと撫でる。



沖田がそっと顔を上げれば、冴は「もう行かなきゃ」と自身に言い聞かせるように呟いた。