現パロ。
土方さんのお話。
隊士たちは美容師設定です。
前編はこちらから → ★
因みに同じ設定で左之さんの話はこちらから → ★
キャラ崩壊してます。
それでも宜しければどうぞ。
翌日。
今日は春めいていて暖かかったから、ワンピにジャケットを羽織ってみた。
出かけるとき親に
「何?トシくんとデート?」
なんて言われてしまって恥ずかしくて全力で否定してみた。
今まで彼氏がいなかったわけじゃない。
それなりにはいたけど。
トシもあんな綺麗な顔だから彼女もいたわけで。
それでも私の中でトシの位置は揺るぎない。
いつでも…その場所にいた。
『親友に近いのかな…。トシと甘い雰囲気になったことなんてないしなぁ…』
なんて考えながら美容室へと歩いていく。
階段をあがって、定休日だからガラスのドアをコンコンとノックすれば、
中からガチャリと鍵が開く音がする。
ドアを開けてくれたトシに『おはよ』と声をかければ「ああ」と声が返ってくる。
室内に入ればマネキンと周りに散らばる髪の毛。
「どうしたの?」
「ああ…。女の髪の毛切るの久しぶりだからな。確認がてら練習ってとこだな」
私はふとトシが美容師になりたての頃を思い出した。
よくマネキンで練習してたっけ…。
トシの白く長い指が髪を少しずつ取りながらカットしていく。
そしてその真剣な眼差しと綺麗な横顔も…つい目で追ってしまう。
それは今も変わらない。
「そこのソファに荷物と上着置いておけよ」
「うん」
荷物を置いて、トシが待ってくれてる椅子の前に行き腰を下ろす。
「悪いが今日はカラーとかパーマは出来ねぇぞ。やりたいなら原田か総司にしてもらえ」
「うん、今日はカットだけでいいよ」
「で。どうするんだ?」
トシの細く長い指がそっと私の髪を梳っていく。
「ん~、もう春だから短く行っとこうかな。顎のラインくらい」
「前髪は?」
「多くていいけど空いてほしい。細かいとこは任せる」
「了解。じゃあ頭洗うぞ」
移動してシャンプーしてもらいながら、改めて店内が静かなことに気付く。
『…二人きり…』
後頭部の泡を流すために頭を抱えられる。
鼻に掠めたトシの煙草の匂いに混じった香水の匂い。
何だか急に恥ずかしくなってきて、顔にかかってる薄いハンカチに感謝した。
洗い終われば背を起こしてタオルドライ。
トシはその後に頭皮のマッサージもしてくれた。
「お前、頭こってるな」
「うん、気持ちいい」
目を閉じて、気持ちを零す。
「…そりゃ良かったな」
「トシも後でやったげるね~。眉間の皺も伸ばしてあげる」
「うるせぇよ」
茶化したように言えば、喉の奥でクッと笑っていつもの口癖を返された。
また鏡前に戻ってからは雑誌とかも読まずに、トシとずっと話してた。
お互いの仕事のこと。
最近顔を見てないお互いの家族のこと。
「…お前、最近男でもいるのか?」
「いないよ、何で?」
鏡越しに目をあわせながら答える。
「いや、…珍しくワンピースなんて着てるからな」
「ああ、何となく。今日暖かかったし。何?変てこと?」
「そんなこと言ってねぇだろ。…似合ってる」
「…ありがと」
トシの褒め言葉は凄くくすぐったくなる。
それを隠すために視線を逸らせて言葉を零した。
髪を切っていく音が沈黙を埋める。
「…トシは彼女…いないの?」」
視線を外したまま今度は私が問いかけてみる。
「ああ、今はいないな」
「へぇ、意外」
眉を上げて鏡越しに表情を窺えば交わる視線。
「…どういう意味だよ」
「いや…、だってもてるでしょ?それが嫌で1階にも行ったんだし」
「いくら女が寄ってきたって、好きな女じゃなきゃ意味ねぇだろうが」
一つ溜め息を零したと思えば、視線を私の毛先へと向ける。
「…それは…わかるけど」
「…ホントにわかってんのか?」
手を止めて鏡越しに私をじっと見つめるトシ。
「…どういう意味?」
私が問いかければ眉根を寄せて言葉を零した。
「…それをわかってねぇって言うんだよ」
意味がわからない私はトシの言葉を頭で繰り返していた。
トシは鏡の裏にある大きな手鏡を持つ。
「…出来たぞ。これでいいか?」
「流石。うん、いい感じ!ありがと!」
私が笑顔になれば応えるように口元に浮かんだ笑み。
「ほら、髪流しに行くぞ」
両肩をポンと撫でられ、椅子は反転させられた。
シャワーが終わると髪を乾かしてもらって、最後の仕上げをしてくれる。
鏡の中に映る私はさっぱりした顔になってて。
自分でもいい顔してると思った。
「いいか?」
「うん、すんごくいい!トシ、ありがと。トシに切ってもらってやっぱり正解だった」
「どういたしまして。…指名料取るぞ?全く」
笑みを浮かべながら、ひとつ息を吐いたトシ。
「…じゃあここ片付けるからちょっと待っててくれ」
「うん」
移動してソファに腰掛けて頬杖をつく。
そして片づけを始めるトシをぼんやりと眺めていた。
「…何だよ、人の顔じろじろ見やがって」
「ん~?いい男だと思って」
表情を変えずに思ったことを素直に言ってみた。
「馬鹿にしてんのか?」
「してないよ」
眉間に皺を寄せるトシに口元に笑みを浮かべて応える。
トシは顔を背けて、ブツブツ言いながらバックに入っていく。
その後姿が何だか可愛くて笑みが零れた。
バックから出てきたトシはそのままドアへと向かう。
「え…トシ、会計してないよ?」
眉を上げて問いかける私。
「ああ、いい」
「え!ダメだって!何で?」
私は慌ててソファから立ち上がる。
「お前は俺のカットモデルになったってことでいい」
「ええ!そんなのヤダ!」
「…じゃあこの後付き合え。飯行くぞ」
「へ?」
思ってもなかった言葉に目を丸くする。
「どうせ暇なんだろ?ほら、行くぞ」
急かされた私は慌てて鞄を持って、少し開けてくれていたドアの隙間に身体を滑り込ませた。
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ ゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
。。。うん、終わんなかったよ。
みふゆ