薄桜鬼・妄想小説【君の名を呼ぶ】第25話 | 浅葱色の空の下。

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薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。

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いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。



かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。















池田屋での御用改めの後、沖田は咳き込むことが多くなった。

冴が近藤の部屋へ向かおうとし、廊下を歩いていたところ、沖田の部屋から咳き込む音がし、障子戸を開ける。


「何、総司。風邪ひいちゃったの?」


「…みたいだね」

壁にもたれて座り、眉根を寄せて冴に応える。


「何か作るか、買ってきてあげようか?」

沖田に歩み寄り、膝をついて顔を覗き込む。


「大丈夫。すぐよくなるから」

冴を引き寄せ、腕の中に閉じ込め首元に顔を埋める。


「総司、くすぐったいよ」


「そんなこと言うともっとしたくなっちゃうのわかんない?」

見つめあった二人は唇を軽く重ね、クスリと笑う。



「冴。昼から巡察だよね?金平糖買ってきてくれないかな?山崎くんがくれる薬がね、苦いんだ」


「わかった」

冴の笑顔に沖田もつられる様に口元に笑みを浮かべる。


「あ、じゃあ私の少し残ってるからこれ次の薬の後で食べてね?」

袂から出した小さな包み紙を沖田に渡す。


「ありがとう」


「どういたしまして」

沖田は目を細めて冴を見つめる。



「そう、近藤さんに呼ばれてるの。総司も行かない?きっとあの顔は甘いものがある気がする」


「じゃあ行こうかな」

笑いあった二人は立ち上がり、冴が障子戸を開けようとした手を沖田が止める。



「部屋を出る前にもう一度甘いの頂戴?」


「?」

冴が口を開こうとした時には沖田に口を塞がれていた。


そっと目を閉じた冴も沖田の舌に応える。


音を立てて離した唇に名残惜しく視線を向けた。


「このまま、しちゃう?」


「昼間だし…近藤さんを待たせたままするのはちょっと…、忍びないかな」


「だね」

額を互いに寄せて、クスクスと笑う二人。


沖田は口付けを冴の額に落とした。


「行こうか」


「うん」









池田屋事件後、会津藩より新撰組に長州制圧の出陣要請が下される。

そして京の町にも新撰組の名が瞬く間に轟いた。


江戸に隊士募集に行っていた藤堂が戻り、伊東甲子太郎たちが新撰組に入隊した。




伊東と廊下ですれ違う際に軽く会釈をする冴。


伊東が声をかける。


「あら…、貴方は確か松原さん?」


「はい」


「随分と優しい顔をなさってるのね」

首をかしげながら顔を覗き込む伊東。


「生まれついた時からこの顔ですので」


「でしょうね。貴方も…随分とこの新撰組に愛されてるのね」

零れる笑みを隠すように顎に手を添える。


「…何がおっしゃりたいのですか」


「あら、そんな怖い目をしなくたって。仲良くしたかっただけなんですけどね」

クスクス笑いながら冴の横を通り過ぎていく伊東。


『近藤さんには悪いけど、あの伊東さんは好きになれないな…。山南さんを追い詰めてどうしたいんだか。
新撰組の中で何を企んでるのか…』


去っていく伊東の背中を見据える冴。







「山南さん」

障子戸の向こうに声をかける冴。


「松原くん、どうしました?」

こちらに歩みを進めながら声を投げる山南。


「ああ、山南さん。どちらに?」


「土方君に用がありまして。松原くんは?」


「特には何も。最近またお話出来てないなと思って」

山南は笑顔を向ける冴を目を細めて見やる。



「…皆さん、私が塞ぎこんでるのを不気味がっているんでしょう?」

クスリと笑った山南が問いかける。


「そんなことは…」


「だから気遣ってくれた」


「…余計なこと、ですか?」

眉根を寄せた冴に山南も眉根を寄せながら口元に笑みを浮かべる。


「…そうは言ってはいませんよ。いや、私の言い方が悪かったのですね。申し訳ありません。ただ…」

静かに目を伏せる山南。


「…ただ?」


「貴方は私にとって眩しすぎる。眩しすぎるから…私は闇に身を潜めたくなります」


「山南さん?」

その表情を覗き込もうとする冴から視線をそらせる。


「…今のは聞かなかったことにしてください。さあ、土方君が貴方を探していましたよ。行ってあげてください」


「…はい。じゃあこのお饅頭食べてくださいね?」


「ええ、勿論」

お盆を受け取るといつもの笑顔で立ち去る冴を見送る。


自室に入ると長い溜め息を吐いた。







数日後、冴が夜の巡察の時。


『変若水』の存在が気になった千鶴は一人部屋を抜け出し、偶然見かけた山南の後を追う。


止める千鶴を振り払い、山南は羅刹へと化した。






「千鶴ちゃん。土方さんからも言われただろうけど。勝手な行動は困ります」


「はい…、すみませんでした」

部屋で向かい合い座る冴と千鶴。千鶴は深く頭を下げた。




夜に開かれた幹部の話し合いの場でも冴の頭には山南の姿が浮かぶ。



『私は闇に身を潜めたくなります』


この言葉が頭から離れずにいた。



『きっと…、ずっと前から…悩んでたんだろうな。伊東さんの存在が山南さんを羅刹へと推した…』

冴は下唇を食んだ。





山南が峠を越えたと報告を受けた幹部たちは皆それぞれの部屋へと戻った。


廊下を沖田と歩く冴。


「山南さん、本当に大丈夫なの?」


「うん、良さ気だね」


「そう…」

沖田の応えに目を伏せ、長く息を吐いた。





「ねぇ、総司。…総司は羅刹になってもこの新撰組にいたい?」


「さあ…。どうかな」


「私は…そのまま死にたいな」


遠くを見やる冴の横顔を見つめる沖田。


まだ春を告げない風が二人の間を通り抜けていく。



「…ま、人斬りだし、ろくな死に方しないと思うけど」


「…そうだね」

クスリと笑う冴に沖田も応える。


「ねぇ、総司。私、羅刹って嫌なの」

目を伏せて軽く指で横髪を耳へとかける冴。


「もし…そういう時が来たら、すぐに私を殺してね?」

向き合った冴が綺麗で沖田は思わず息を飲んだ。


「…」

見詰め合う二人に暫しの沈黙が訪れる。



「…約束、してくれる?」


「…わかった」

目を伏せて応える沖田。


「よかった」

冴はふわりと笑い、また視線を遠くに向けた。


すぐさま、冴の手を握る沖田。


「どうしたの?」

冴は眉を上げる。



「冴が何処かに行ってしまいそうな気がした」


「何処にも行かないよ。私の居場所はここにしかないから」

眉根を寄せる沖田に、冴は手を握り返して口元に笑みを浮かべる。



「こうして手を握るのも久々だね」

沖田は冴の手を自身の口元に寄せ、手の甲に軽く口付けを落とす。


「そう…だね」

その様に戸惑い、頬が染まるのを感じた冴。


「冴、どうかした?」

「ううん」


『少し胸が苦しかっただけ』

その言葉を飲み込み、冴の顔を覗き込む沖田に、はにかみながら応える。



「…僕の部屋、行こうか」


「ごめんなさい、総司。土方さんに呼ばれているの」

眉根を寄せて謝る冴に沖田は怪訝な表情を浮かべた。


「冴…。近藤さんならまだしも土方さんに気に入られ過ぎじゃない?」


「そんなことないよ。皆、色々任されてるし」


「…土方さんに何かされたりしてないよね?」


「総司、そんなわけないでしょ?本気で怒るよ?」

顔を覗き込む沖田を睨む冴。


「…ごめん」


「今の総司は長くかかってる風邪を早く治すこと!…ね?」

冴は沖田に笑いかけながら言葉をかける。



「じゃあ早く治るように冴から接吻して?」


「…ここで?!」

口角を上げた沖田の言葉に目を丸くする冴。


「うん」


「…お願い。もう少し、物陰行こ?」

恥じらい俯きながら応えた言葉に沖田はクスリと笑う。


廊下の影に隠れた二人は見つめあう。


「…総司、意地悪しないで少し屈んで?」

笑みを浮かべた沖田は少しだけ屈み、冴は精一杯背伸びして沖田の唇に口付けを捧げた。


それを逃すまいと冴をきつく抱きしめ、冴の口に舌を割り込ませた。


冴が沖田の胸を2回ほど軽く叩くも、沖田の着物を軽く握り、注がれる想いに応えた。


不意に視線に気付いた沖田は唇を音を立てて離し、冴の首筋に吸い付いた。


「やっ…!」

ちくりとした甘い痛みに冴は沖田を軽く睨んだ。



「総司、こんなところにつけたら…」


「なぁに、一君。そんなところで覗くなんて悪趣味だよ?」


「…っ!?」

沖田の言葉にビクッと身体を強張らせ、視線の先を振り返る。


「はっ、一?!」


視線の先には斎藤がじっとこちらを見据えていた。

途端に顔を紅潮させる冴。


「…忠司、副長がお呼びだ」


「…。…はい」

沖田は名残惜しそうに冴を見つめる。


冴は沖田から視線を逸らせ、斎藤の元へと歩みを寄せた。



冴は恥ずかしさから何も言わずに斎藤の横を歩いていた。


「…襟巻き、貸してやろうか」


「…っ!…いい」

冴は赤い花を手で隠し、歩みを進めた。