薄桜鬼・妄想小説【君の名を呼ぶ】第24話 | 浅葱色の空の下。

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薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。

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第1話はこちらから → 








いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。



かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。













綱道の行方を捜すため巡察についていっていた千鶴は何も知らず、山崎や島田が張っていた間者の元へ駆け込んだ。

そこに沖田たち一番組が入り、間者と共に捕らえた武器や長州藩との書簡等が発見された。


間者の自白から企てが「祇園祭の前の風の強い日を狙って京都御所に火を放ち、その混乱に乗じて親王を幽閉し、
一橋慶喜・松平容保らを暗殺し、天皇を長州へ連れ去る」ということが発覚する。


さらに探索によって、長州藩等の尊王派が間者逮捕をうけて、
襲撃計画の実行・中止について協議する会合が、
池田屋か四国屋にて行われる事を突き止めた。


確信の持てなかった新撰組は隊を二手に分けることにした。


池田屋に向かう近藤から沖田・永倉・藤堂を引き連れていくことを伝えられたが、
そこには冴の名は連ねなかった。



「ではそれぞれ向かってくれ」

解散した後、すぐさま近藤の元に駆け寄る冴。



「近藤さん、私も近藤さんにお供させてください」

懇願する冴に近藤はふと顔を緩めた。


「気持ちは嬉しい。だが、俺ばかりが強い組長ばかりをひきつれるわけにはいかんだろう?」


「…」

近藤の言葉に唇を食む冴。


「松原君、歳を頼む」

冴を見つめながら、肩をポンと叩く。


「…わかりました。近藤さんに何かあればすぐに駆けつけます」


「ああ、頼む」

冴のまっすぐな目に近藤も力強く頷いた。





不意に廊下の暗闇で腕をひかれる。


「総司…」

きつく抱きしめられ冴の言葉を遮るかのような口付けに冴もすぐさま想いに応える。


名残惜しそうに離された唇。


「冴、気をつけて」


「うん、総司も」

冴は右手で沖田の左頬を包む。

沖田はその手を包むように自身の手を当てる。


冴の左手と沖田の右手が指を絡める。



「近藤さんを宜しくね」


「わかった」

強く握り締められた手が離れた。







時間が刻々と過ぎ行く中、状況が掴めないまま、四国屋が見える物陰で待機していた土方隊。




「伝令ーっ!伝令ーっ!」


そこに駆け寄る一人の足音が近づく。


その姿に一同が目を見張る。



「雪村くん!何でここに?!」



「本命は、池田屋!!!」



「!!!」


千鶴に伝えられた言葉に皆息を飲んで奥歯を噛み、急いで池田屋に向かう。


『千鶴ちゃんを屯所に返したいけど…、一人じゃ危険すぎる…』

冴は眉間に皺を寄せた。


「雪村くん!無理は絶対にしないで。現場に行ったら隠れてなさい」

走りながら千鶴に声をかけ、その言葉に千鶴もコクリと頷いた。





池田屋に着いた一同。


「原田、松原の隊は裏庭へ!!」

土方の指示で裏へと回る原田と冴たち。


倒れていた平隊士・奥沢の姿に息を飲む。


冴の中で何かが千切れた。


一時は劣勢だった新撰組も土方の元にいた隊士が加わったことで、状況は優勢となっていく。



裏庭の状況が落ち着きつつあるのを見計らい、冴が声を上げる。

「左之さん、中に行ってもいいですか!」


「ああ、もう充分だ。加勢してこい!ここは任せろ!頼んだぞ!」

二人は強く頷き、冴は踵を返して正面から屋内に踏み込んだ。



直ぐに近藤の姿を見つけ声を上げる。


「近藤さん!」


「松原くん!ここなら大丈夫だ。ただ二階に行った総司と平助が戻ってこない!」


「見てきます!」


「頼んだ!」

深く頷いて斎藤、永倉を横目で見ながら素早く階段を駆け上がった。




「!!」

開け放たれていた部屋に入り、状況に息を飲む。



「平助!!千鶴ちゃん?!何でここに!…総司?!!」


「松原さん!」


「来るな!」

目を見張る冴に涙目で訴える千鶴と倒れたまま声を荒げる沖田。



奥から冴を見やる視線に気付き、冴もその人物を見つめる。


少し視線を移せば大柄の男も佇んでいた。


『この人は来ない…』

鋭く視線を向ける人物に視線を戻す。


「…ふん。新撰組とやらは女もいるのか。女の手も借りないと構成できないくらい軟弱な組織ということが明確だな」

腹に響く低い声で、小馬鹿にしたような物言いで言葉を投げる。



「…貴方、誰?」

目を細めて言葉を投げた冴。


「…風間千景」


「…へぇ」


「貴様も名乗れ」


「…松原忠司」

答えた冴に見下すような視線を浴びせる風間。


「…ふん、偽名か。来い、哀れな女。斬ってやろう」

その言葉が終わらないうちに低い体勢から突きの姿勢を取り、素早く風間に飛び込む。



『…速い…っ!』



しばらく互いに空を斬る音が続く。


しかし、鍔迫り合いとなると冴が押され始める。



「どうした、女。もう仕舞いか」

刀越しにニヤリと口角を上げた風間。



「…ねぇ。その顔の傷誰がつけたの?平助?総司?私が増やしてあげようか」

冴は目を細め、うっすら笑みを浮かべた。


「小癪な」

冴は力を強めた風間の刀を受け流すと、素早く左手で脇差を抜き、振り返りながら脇差を風間の頬に沿わせた。

「っ!!!」

頬に微かに走った痛みと共に垂れる雫の感覚に目を見開く。


「おのれ…っ!」


「あぁ、首も掻き切ればよかったね?」

さも可笑しげにクスリと笑う冴。



状況を見守っていた大柄な男が口を挟む。


「風間。長居は無用です。早く行きましょう」


「黙れ」

冴を睨みつけながら言葉を吐く。


「風間」

男の強い口調に風間は舌打ちをする。


「ちっ…!女、命拾いしたな」

風間と男は外へと消えていった。


「…」

部屋に訪れた静けさに冴は刀を下ろした。




「総司…」

倒れている沖田に声をかける冴。


「僕はまだ…戦えるっ!」


『よっぽど悔しかったのね』

今の沖田には冴の言葉は届いていないように感じた。



「千鶴ちゃん、この血は総司?」


「はい…」


「…山崎君呼ばなきゃね」

呟いた冴は目を閉じている藤堂に歩み寄り、しゃがんで身体に触れ状況を確認する。


「平助…。…息はしてるね」



暗闇から現れた斎藤の姿に冴は立ち上がる。


「ここにいたか」


「一。山崎くんは?」


「ここにいます」

冴の問いかけに斎藤の背後から現れた山崎。


「平助は気を失ってる。総司は…吐血したっぽいかな。お願いできる?」


「わかりました」

冴の言葉に深く頷く山崎。すぐさま藤堂の状況から確認していく。


「千鶴ちゃんは山崎くんとここにいて。決して一人で動かないで。山崎くんの指示に従うように」


「はい」

千鶴を見やりながら指示を出し、それに千鶴も応えた。


「…大丈夫?」

「はい」

力強く頷いた千鶴に軽く笑みを浮かべた冴。




「一、他の部屋も見ましょう」


「ああ」

斎藤と冴は闇に溶けていった。




別室の襖を開け放てば、まだ隠れて残っていた浪士たちが叫びながら斬りこんで来る。



「…まだいたんだ」

冴は迷いもなく懐に飛び込み、素早く突き、斬っていく。



時間は流れに流れ、池田屋に静寂が訪れる。





「終わったようだな」


「そうね」

斎藤の言葉に応える冴。



屋内から出ると池田屋にいた全隊士が集まっていた。

斎藤と共に近藤・土方に報告をする冴。



報告が終わり、視線を移せば横たわっている沖田の姿を確認する。



静かに歩み寄り、声をかける。


「総司、生きてる?」


「残念ながらね」

冴の言葉にうっすらと目を開けた沖田は言葉を返す。


その言葉に静かに息を吐きつつ、隣にゆっくりと膝をつく冴。


「私を置いて死ぬつもり?…無事でよかった」

右手で沖田の左頬を包み、ふわりと笑う。

沖田は自身の手でその手を包んで、口元に笑みを浮かべた。





長い夜が明ける。