薄桜鬼・妄想小説【君の名を呼ぶ】第26話 | 浅葱色の空の下。

浅葱色の空の下。

薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。

小説設定はこちらをご覧下さい → 


第1話はこちらから → 








いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。



かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。













長かった冬も終わり、季節は春へと足早に駆けた。


庭の麗らかな春の表情に冴の顔も綻ぶ。



「松原くん」


「近藤さん!おかえりなさい。何か御用でしょうか?」

出先から戻った近藤に駆け寄る冴。


「ああ、屯所に帰ってくる途中でな、桜が綺麗に咲いている場所があったんだ。
花見と称して皆で行かないか?」


「へぇ~、いいですね」

冴は近藤の笑みに同じく笑みで応えた。



「近藤さん!その話、乗ったぜ!!」

冴の背後から冴に飛び掛るようにして声を投げる藤堂。


「当然、美味い酒もあるんだよな?くぅ~」

永倉は堪らないと言った表情で上機嫌となる。


「な、忠司。お前、酒の席なんて殆ど出てねぇし。気分転換にもなるぜ?」


「そう…だね。じゃあ、皆に知らせないと」

藤堂の言葉に頷き笑顔で応える冴。



「歳には俺から伝えておく。手配は任せたぞ」

笑顔で去っていく近藤に冴は頭を下げた。


「いよっし!気合入れていくぜ!」

藤堂が拳を掲げ、声を上げる。



「忠司。甘いもんが食いたいなら島田にも声かけろよ?」

原田が柔らかな笑みを浮かべ、冴を見やる。


「ああ、そうですよね!甘いもの大好きだし。千鶴ちゃんも喜びますね」


「そういうことだ」

笑顔を零した冴に原田は口角を上げて冴の頭をポンと撫でた。




廊下を歩いていると千鶴と出会わせた。


「あ、千鶴ちゃん。近々皆でお花見行こうって近藤さんがおっしゃってくれたの。千鶴ちゃんも行こうね」


「ホントですか?!嬉しい!」

顔を綻ばせる千鶴を見て、冴も笑みを零す。



その時、廊下の奥から歩いてきた沖田。


「あ、総…」


「沖田さん!!」

沖田の姿を見た途端、沖田に向けて駆け出した千鶴。


その様を見た冴は息を飲んだ。



「沖田さん、近藤さんが皆さんでお花見しようとおっしゃってくれてるみたいですよ!」


「へぇ、それは楽しみだね」

千鶴に応えてから、冴に向けて笑顔を向けた沖田。


沖田の笑みに軽く応えた冴は踵を返し、廊下を歩いた。

胸の中で渦巻く感情にどうしたらいいいか分からずに目をパチパチと瞬かせた。



冴の後姿を沖田は軽く眉根を寄せて見やるも、話しかける千鶴に顔を向け応えた。









「やっぱり桜は別格だよな~」


「そうですね~。でも紅葉も見たいかも」

ご機嫌な永倉の横で冴が応える。


「また秋に紅葉狩りに行けばいいだけの話だろ?」

原田は笑みを浮かべ冴を見やる。

冴も原田の言葉に大きく頷いた。





準備が整い、宴は始まる。

宴席のようなお花見自体が初めての冴は嬉しそうに皆に酌をした。





永倉から解放された山崎が静かに桜に目を向けていた。


「山崎くん?大変だったね」

クスクス笑いながら山崎の横に腰を下ろす冴。


「いや、俺は平気です」


「どうぞ?」


「ありがとうございます」

山崎はお猪口を冴に向け、冴が酒を注ぐ。


山崎がクッと飲み干すのを嬉しそうに眺めた冴は口を開く。


「山崎君、凄いよね~。私より後に入ってきたのに監察方で凄い活躍してる」


「いえ、俺は目の前の隊務で精一杯ですよ」

冴の言葉に軽く笑みを浮かべて小さく顔を横に振る。



「またそんな謙遜して」


「松原さんこそ、凄い剣術じゃないですか」


「そう?邪道の積み重ねだよ」

山崎の言葉に笑顔で応える。



目の前をヒラヒラと花びらが舞い降り、冴は視線を桜へと移す。


「桜って見飽きないね。ずっと見てられる。…儚く散るからかな」


「そうですね」


「でも山崎君は桜より紅葉が似合うね」


「…そう、ですか?」


「うん。私はそう思うな」

少し眉を上げた山崎に笑顔で頷く冴。


その冴を見た山崎も冴に笑みを向けた。




「松原さん」


「あ、島田さん」

上から降ってきた声に顔を上げる。


「如何です?この団子」


「うわ~、美味しそう!」

目の前に差し出された団子に冴は笑みを零す。




『総司も食べるかな』


沖田を見やると千鶴と二人で談笑していた。


『…今は…いらない、かな』

冴は口元に笑みを浮かべ、小さな溜め息を零した。





「おい、忠司!飲もうぜ!」

既に出来上がりつつある藤堂が冴に絡む。



「あのね…、私お酒殆ど呑んだことなくて…」


「いいから、呑んでみろって。この酒は上等だから呑みやすいと思うぜ?」

眉根を寄せて断る冴に、藤堂は酒を注いだお猪口を差し出す。


渋々口をつけるも、眉をあげる冴。


「あ、ほんとだ…美味しい」


「だろ?」

冴の顔を覗き込んでニカっと笑う藤堂。


冴の様子を見た永倉が口を開く。


「忠司、もっと呑めって!おい、左之!そろそろお前の時間じゃねぇのか!」


「そうだ、そうだ!左之さん、腹芸やってよ!」


「…は?」

藤堂の言葉に目を丸くする冴。


ニヤリと笑った原田が勢いよく立ち上がる。


「よおし!忠司に千鶴!俺の腹芸を見ておけよ!この腹は一味違うんだぜ?刃の味を知ってるからな」


原田が上げた声に、皆に一層の笑みが広がる。





『ああ、いい時間だな…』


桜の大木を背に皆が楽しそうに談笑している。


冴はその様子を目を細めて眺めていた。


『山南さんも来れればよかったな。。。』




戦いの時とは違い、笑い声が絶え間なく続き、ゆったりと流れる時間。






「おい!忠司!」


不意に呼びかけられた声に少し不機嫌そうにした冴。


「…何ですか、土方さん」


「お前、この総司の減らず口を何とかしろ」

隣でカラカラと笑う沖田の肩を押しながら、眉間に皺を寄せて冴に訴える。


沖田の隣では千鶴もくすくすと笑っていた。


沖田は楽しげに冴に表情を向けるも、冴はその視線に気付かないフリをした。


「無理です。いつものことじゃないですか」

ピシャリと土方の言葉を遮り、お猪口の酒に口をつけた。







『あー…。飲みすぎたのかも』

ふわふわとした初めての感覚に冴は自身の頬を包んだ。


「忠司、大丈夫か?」


「うん…。ちょっと酔い覚ましてくる」

斎藤に応えながらふらふらと立ち上がり、宴席から出て行く冴。


「おい、どこに…。待て、忠司」

斎藤も立ち上がり、冴を追いかけた。





先程、何故島原に通うのかを原田に尋ねた冴。


横にいた永倉が応えた言葉を思い出す。


『人を斬ると誰かを抱きたくなる…か…』



『総司と私も…慰めあってるだけ…?』



『ああ、そういえば総司が最後に抱いてくれたのはいつだっけ…。
最近…二人で会ってないな…』



桜並木をフラフラと歩きながら、桜を見上げ想いを馳せる。



そして後ろから黙ってついてくる気配に声をかけた。


「ねぇ、一」


「…何だ」

呼びかけに応える斎藤。



「一も人を斬ると抱きたくなるの?」


「なっ…、何を言っている。そんなことは断じて…っ!」

冴の言葉に慌てた斎藤は声を少し荒げた。


「はは…。だよね。一だもんね。武士の鑑だもんね」

斎藤の言葉に冴は振り返りながら笑みを零し、俯いた。



「…馬鹿にしているのか」


「え…。あ…ごめん。そんなつもりは…」

斎藤の低く響いた声に冴は顔を上げ、斎藤を見つめて謝る。


「俺にも抱きたい女はいる」

前髪から覗く瞳は冴を見据えていた。


「そっか、そうだよね…。ああ、ごめん。もう私何話してるんだろ」

冴は眉根を寄せて、自身で頬を包む。


ふらりと傾いた冴の身体を斎藤が腕を伸ばし包む。



「おい、忠司。大丈夫か?!」


「…うん…。大丈、夫…だけ…ど…、眠い…かも…」

崩れる冴を斎藤は抱き留めた。


自身の腕の中で目を閉じた冴の顔を見つめる斎藤。


冴の寝顔に呆れたように息を吐きながら、口元に笑みを浮かべる。


指の背で冴の頬を撫でた。

するりとした肌に女を感じ、
咄嗟に沖田と冴の口付けを交わしていたのを思い出して息を飲む。


「何ゆえ、お前はそのように無防備なのだ…」


眉根を寄せて呟き、もう一度、指の背で冴の頬を撫でる。


今度は親指で冴の唇を撫でようとしたその時。





「…冴、返してくれる?」


「…」


投げられた言葉に斎藤がゆっくりと顔を上げれば、沖田が二人に向かって歩みを寄せていた。


斎藤と沖田の視線が交わる。


斎藤の前で立ち止まり、二人を見下ろす沖田。



「…どうしたの?早く返してよ」


「…断ると言ったら?」

沖田を見上げたその目は揺るがぬ想いを携えていた。


「死闘だね」

沖田は斎藤の言葉と想いに口角を上げて応える。



「…他の女に現を抜かしていた奴には言われたくないな」


「現を抜かしてた覚えはないけど」


「俺なら今のように寂しい思いはさせない」



三人を春の風が花びらを纏って頬を撫で、髪を揺らめかせる。



「…幸せだね、冴は。皆からこんな風に愛されてる。

可哀想だね、冴は。皆からこんな風に愛されている自覚がない。

そして、一番愛している僕の想いが一番伝わりにくい」


冴を見つめながら沖田は言葉を紡いでいく。



「冴を好きになると苦労するよ?」


「今でも充分苦労している。だが…、俺の気持ちは変わらない」

クスリと苦笑いした沖田に斎藤は応えた。



「そう…。じゃあ奪われないようしっかりと抱きしめておかないとね」






目を覚ませば沖田に背負われていることに気付いた冴。


「総司?!へ?」


「起きた?」

冴の言葉に少し顔を向けながら背中に言葉を投げる沖田。



「うん…。えーっと、降りる。降りたい」


「降ろさない」

皆から少し離れて歩いているものの、羞恥が冴の顔を赤らめた。


「恥ずかしいんだけど…」


「…冴。何を不安に思ったのかは聞かないけど、
僕が好きなのは冴だし、抱きたいと思うのも冴だよ」

前を向きながら冴に自身の想いを伝える沖田。


「…ありがと」

突然の言葉に眉を上げるも、はにかみながらその言葉に応えた。


「冴は?」


「…総司が…好き」

沖田の首元に赤らめた顔を埋めた。



「もう…今すぐ抱けたらいいのに」

拗ねたような沖田の言葉に冴はクスクスと笑った。