薄桜鬼・妄想小説【君の名を呼ぶ】第21話 | 浅葱色の空の下。

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薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。

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いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。



かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。











真夜中、冴は廊下に気配を感じて目を開け、枕元に置いてあった刀を握る。



「冴?起きてる?」

障子戸の向こうから声が投げられた。


「…総司?どうぞ」

ヒヤリとした空気を連れて入ってきた沖田は、後ろ手で障子戸を閉める。



沖田は土方や斎藤らと共に発狂してしまった、『もう一つの新撰組』を追いかけて屯所を出て行ったのだった。


「ただいま」


「おかえりなさい。ちゃんと湯は浸かった?」


「うん」


「入って」

掛け布団を捲ると冴の横に身体を滑らせて寄り添う。

すぐさま冴を胸の中に閉じ込める。



「どうだった?」


「うん、おかしくなったのは全部処理したよ。ただ…」


「ただ?」


「土方さんが面白いもの拾ってきたんだよね」

クスリと笑う沖田。



「面白いもの?」


「多分、朝一番に召集されるんじゃないかな」

眉を上げて問いかけた冴に口角を上げて応えた。


「総司がそう言う時はいいことではない気がする」

眉根を寄せる冴。


「どうだろうね?」

ニヤリと笑いながら冴を抱き寄せる。


「冴はあったかいね」


「寝させてもらってたしね」


「…抱いていい?」

熱の篭った息が耳元を撫でていく。


「…ん」

応えるようにして冴は沖田に口付けを捧げた。







朝早く幹部が召集され、土方から昨夜の詳細を聞かされる。


そして井上に連れて来られたのは、男装をしたまだ少女の面影残る女だった。



『このコかぁ…』


近藤、藤堂、永倉が彼女を男だと思い込んでいたのには冴も笑みを零したが、
終始口を挟むことはなかった。



斎藤に連れられていく女の懇願に耳が痛くなり、眉根を寄せる。


『一ももっと優しくしてあげればいいのに』



「…忠司はどう思う」

女が連れられ、静まった部屋で土方が口を開く。


「…。斬るのは簡単ですが、何か持ってれば置いておけばいいんじゃないですか?
だって…、見ちゃったんですよね?」

土方を見つめながらここに来た頃の自身を思い出す。



「何かって?」

藤堂が問いかける。


「強さ…とか、殺せない何か」

確かめるように言葉を零した冴に、近藤はうんうんと頷いた。



「忠司くんは優しすぎるね」

一つため息を吐く沖田。


「お褒めの言葉として受け取っていい?」

沖田にそっと笑う。



「つーか、近藤さんも平助も新八もホント女見抜けないのな」

原田が笑いを堪えながらからかう様に言葉を投げる。


「なっ!」

短く声を上げる近藤。


「左之さん!でも忠司はそれで新撰組に入れたんだぜ?」

藤堂の言葉に冴は口元に軽い苦笑いを浮かべた。


「平助!声がでけぇ!静かにしやがれ」

土方の怒号に藤堂が縮こまる。


「お前ら、忠司が女ってのはまだ極秘だってこと忘れてんじゃねぇぞ」

集まっている幹部にも身を引き締めるよう声を上げた。





「冴?」

沖田が冴の自室を訪ねる。


「総司。私今から巡察だけど?」

入ってきた沖田に冴は隊服を着ながら応える。

「うん、少しだけ」

後ろ手で障子戸を閉める沖田。


「じゃあ着替えながらでもいい?」


「いいよ。…あのコ、どうなると思う?」

口元に三日月を作りながら冴に問いかける。


「…さぁ。私が判断下すわけではないし。でも…残るんじゃないかな?」

沖田とは目を合わせないまま、鉢金を手に取る。


「へぇ、何で?」

障子戸にもたれ、腕を組みながら問う。


「いい目してたから。あの目は簡単には死なない気がする」

鉢金の紐を後頭部で結び、一つ静かに息を吐く。


「じゃあ、行ってくるね」

沖田に向かい合う。


沖田は冴を抱きしめ、口付けを落とした。


「気をつけて。いってらっしゃい」

笑みを浮かべる沖田。


「ありがと。いってきます」

冴も笑いかけ、玄関へと向かった。





巡察から帰ってきた八番組と四番組。


玄関では井上が隊を待っていた。


「は?抜け出そうとしたとこを土方さんに見つかった?!」

藤堂が声をあげる。


「大声を出すんじゃない!それで今召集かかってるんだ。早く集まってくれ」





幹部全員が集まった部屋。


そこで雪村千鶴と名乗る彼女の口から、雪村綱道が自身の父であるということが伝えられた。


静まっていた部屋に衝撃が走る。


『あの人かぁ…』

沖田が冴を見やり、口角を上げる。

冴はそっと目を閉じた。




綱道は二月前に詰めていた診療所が火事になりそのまま行方不明となっている。


『もう一つの新撰組』の研究を担っていた彼の行方を新撰組も追っていた。


そうして雪村千鶴は新撰組預かりの身となる。





「忠司、いるか?」

障子戸の向こうから投げられた声。


「はい」

冴の応えに土方が障子戸を開く。


「悪いが、雪村の世話をしてやってくれ」


「ああ、そうですよね」


「あいつのところへ行く。一緒に来てくれ」


「承知しました」

冴は軽く頭を下げ、土方に続いて、千鶴のいる部屋へと向かった。





千鶴が監視されている部屋につくと、廊下で見張りをしていた斎藤が静かに土方に頭を下げる。


冴が斎藤に向けて笑みを浮かべると、
斎藤も目を細めた。


部屋に入り、千鶴に向かい合い座る。


「こいつがお前の身の周りの世話をすることになった松原忠司だ」


「よろしくね」


「よろしく…お願いします」

冴は千鶴に笑顔を向けるも、千鶴は戸惑い気味に軽く頭を下げた。



「こいつはお前と同じ女だ」


「え?あ、そう…なんですね」

土方の言葉に目を軽く見開く千鶴。


「だから聞きにくいこととか私に聞いてもらえばいいし、湯浴びも一緒に入りましょう?」


「はい…」


「でも私も組長をさせてもらってて、いつでも傍にいれないから。
その時は他の組長なんかが貴方に付くと思うけど」


「わかりました…」

冴の言葉にコクリと頷く千鶴。


「この松原が女ってことは幹部以外知らないこととなっている。
口外は即刻切り捨てるからな」


「は、はい」

千鶴は土方の言葉に身を強張らせて頷いた。


土方の物言いに軽く苦笑いを浮かべる冴。



「じゃあ、今日の夜に皆の湯浴びが終わったあと呼びにくるから」


「お願いします」


千鶴の部屋を出て、土方と共に廊下を歩く。



「…土方さん、あんなきつい言い方しなくても」


「まだ何者かもわかったもんじゃねぇだろ」

冴の言葉に横目で冴を見やりながら言葉を投げる。


「そんなに思うならご自身の小姓にされればいいのに」

冴は口元に笑みを浮かべながら土方に応える。


「忠司、総司と同じ事を言うな」


「へ?」

目を丸くした冴。


「仲良く似たもん同士になってんじゃねぇよ」

土方は口角を上げて鼻で笑った。


土方の言葉に恥ずかしげに冴は俯いた。