薄桜鬼・妄想小説【君の名を呼ぶ】第9話 | 浅葱色の空の下。

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薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。

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いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。



かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。

















冴が初めて巡察に出る日が来た。



初めて身につける隊服に冴は自然と更に背筋が伸びるのを感じた。


鉢金をつけた冴を見て沖田がクスリと笑う。


「耳はね、紐の中に入れ込むんだよ」

「どうしてです?」


「耳をそぎ落とされたいの?」

「…っ!…そう、ですね」

急いで整える冴を障子戸にもたれ、腕を組んだ沖田が口角を上げ見守る。


「準備はいい?」

「はい!」

刀を握り、拳を作って沖田に応える。



沖田に続いて廊下を歩く冴。


『風格あるなぁ…。背負うものが違うんだろうな、隊長は』


沖田の隊服を着た大きな背中を冴は見つめていた。




「お、忠司!」

冴を見つけ、駆け寄ってきた非番の藤堂。


「隊服似合ってんじゃん!頑張ってこいよ!」

冴に気合を入れるように背中をバシン!と叩かれる。

「わ!…うん、行ってきます」

冴は緊張した面持ちながらも藤堂に笑みを向け、歩きだした。





「じゃあ、行こうか」

沖田の声に一番組が歩みを進める。

この日は十番組との巡察だった。




巡察経路を早くもなく、遅くもない早さで連なって歩いていく。



冴の横を歩く沖田。


「…前を歩くわけではないんですね?」

「うん?その時の気分だよ。今日は特に初めて巡察に出るコがいるし?」

冴を横目で見て口角を上げ答える。


「そう…ですね」

小さく頷いて、町人達に視線を向ける。




「忠司くん、斬る時に必要ないのは?」

不意に沖田からの問いかけ。


「躊躇い(ためらい)…ですか?」

「そ。よく出来ました」

沖田は視線は行き交う人々に向けながら、満足そうに口元に笑みを浮かべた。




巡察の間、少しでもおかしい動きや輩がいないか周囲を警戒しながら、情報収集なども行う。




『何だか町人からの視線が痛い』

口を真一文字に結ぶ冴。



「おい!あれ、壬生浪士組だぞ」

「おっかないねぇ」

町人からの野次が嫌でも耳に入ってくる。


「嫌われてるんですね?」

冴は上目遣いで沖田を見上げる。

「そ。色々あったしね。これでもマシになった方じゃない?」

クスクスと笑いながら応える。




「おいおい、何だありゃ」

「あんなひょろっこい奴まで壬生浪士組なのか?終わってるな」



『…私のこと…だよね』

冴は小さく溜め息を吐いた。

「…言わせておけばいいよ。君の場合、敵がなめてかかってくることの方が多い。
その方が君にとっても好都合になるから」

「そう…ですね」

思いがけない沖田の言葉に眉をあげるも、納得し軽く頷く。



「あの…ありがとう…ございます」

自分を庇ってくれたのかと思い、礼を言う冴。

「何が?」

「…何もありません」

沖田の反応に目を逸らせて言葉を零した。







巡察を終え、屯所に向かう。



「おい、総司」

呼びかけられた方を向くと、原田を先頭とした十番組がこちらに向かっていた。


「左之さん達も終わった?」

「ああ、そっちはどうだった?」

「特に何も」

「こっちもだな」

隊は合流し、屯所へと戻る。





屯所の門を潜って冴は一つ大きな溜め息を吐いた。


「おっ!おかえり!」

「…ただいま戻りました」

駆け寄ってくる藤堂に緊張の糸を緩めながら応える冴。


「どうだったよ?巡察初日は」

藤堂に続いて歩み寄りニカっと笑う永倉。

「緊張しました」

冴は少しの苦笑いを浮かべる。


「市中はどうだった?」

「何にも。平和そのものだったよ」

永倉に淡々と応える沖田。


「忠司も頑張ったな。お疲れさん」

原田が冴の頭をくしゃくしゃと撫でる。

「…ありがとうございます」

思わず笑顔が零れた冴。


「じゃあ、僕は左之さんと土方さんのところに報告に行ってくるから。解散」

それぞれが散り散りになる。


一人残った冴はまた大きく息を吐いて部屋に戻った。





『今日は夕餉の当番だったっけ』


お勝手に向かおうとした時、部屋に沖田が入ってくる。


「いたんだ」

「はい」

「じゃあ、隊服お願い」

「はい」

沖田が隊服を脱ぐのを手伝い、受け取る。


「コレ、あげるよ」

袂から包み紙を取り出した沖田。


「…何ですか?」

「金平糖」

「?」

沖田は不思議そうに首を傾げる冴にクスリと笑う。


「はい、口開けて」

沖田の言葉に小さく口を開けた冴。

沖田はその口の中に二粒の金平糖を運ぶ。



軽く触れた唇と指に少しの温もりが伝わる。



「っ!美味しい!」

目を丸くした冴は口を押さえ、笑顔が綻んだ。


「残りあげるよ」

その様子に優しげな目を向けた沖田は冴の手に包み紙を渡し、部屋を出て行く。

「ありがとうございます!」

背中越しに聞こえた冴の声に沖田はヒラヒラと手を振った。




『…反則だよね、あんな顔』


廊下を歩きながら庭から見える晴れ渡る空に視線を向けて、口元に笑みを浮かべた。




「随分と忠司を可愛がってんだな」

廊下ですれ違う際に声をかけた原田。


「…何が言いたいの?左之さん」

「気になってんのか?」

口元に笑みを浮かべながら沖田の表情を伺う。


「やだなぁ、妹みたいなもんですよ」

「…弟、ではなく、妹ね」

沖田の言葉に口角を上げて言葉を返す。


「…揚げ足取るのやめてもらえます?」

軽く眉根を寄せて、小さく息を吐いた沖田。

「ああ、悪ぃ。揚げ足取るのはお前の専売みたいなもんだもんな」

目を流しながら沖田の横を過ぎ去る。


『人のヤなとこ突いてきたなぁ』

沖田は喉でクッと笑い、歩みを進めた。