薄桜鬼・妄想小説【月に捧ぐ】第18話 | 浅葱色の空の下。

浅葱色の空の下。

薄桜鬼に見事にハマってしまったアラサーのブログです。
拙いですが、お話描いてます。
まだゲームはプレイしてません!色々教えてやってください。

少しずつフォレストにもお話を置いていっています。お楽しみいただければ幸いです。

小説設定はこちらをご覧下さい→



第1話はこちら→







いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。



かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。



















新政府軍が箱館に進軍し、弁天台場で新政府軍と戦っていた隊士たちを助けようと

土方ら数名が助けに向かった際に銃弾を受けた土方。


腹部に生温かい感覚が広がる。






身を隠すよう小姓に付き添われ、

満開の桜の大木の下まで身を引きづりやってきた。



「…ここでいい」

大木の根元に座り、身を預ける。



「…一人にしてくれねぇか」

涙目で頷く小姓。



「最後まで色々と世話かけちまったな。ありがとな」

口を真一文字に結んだ小姓は首を横に振り、
少し頭を下げて土方の視界から姿を消した。






見上げれば満開の桜。


風はなく、ただひらひらと舞い落ちる。








新撰組として…。

思い残す事はねぇ…。



がむしゃらに…。

やれるだけのことはやってきた。



生き残った奴等も

心ん中には誠の文字がどこかしら残るだろ。





俺の中で心残りなのは、



綺月…お前だけだ。





懐に手を入れ、綺月の帯留めを握り締める。






思えば…


お前と一緒にいたのは

あの家ん中だけだったな。



お前さえいれば俺は良かったが…。




こんな満開の桜を…


お前にも見せてやりたかったな…。









ふと、浅葱色の空に広がる桜の枝の間から見えた白い満月。




土方は目を細め、喉でクッと笑う。








はっ。そんなとこから見てやがったのか。


そんなとこから覗いてねぇでこっちへ来いよ。





…ああ、悪ぃ。


お前はそこから動けねぇんだったな。




俺から行ってやるよ。


なぁに、すぐに隣に行って抱き締めてやる。





だから、泣くな。


お前はいつもみたいに笑ってろ。





綺月…。




この身心全て


お前に捧げてやる。








ザァアアアという風音と共に


目の前に桜吹雪が広がる。








口元に微かに浮かぶ笑み。




次第に下りてくる瞼。











目の前にはふわりと笑う綺月。








手を伸ばし、







抱き締めた。























その日ついていた席も珍しく早く終わり、綺月は一人で床につく用意をしていた。


戸を開けて、月を探すも見当たらない。



『また昇る時間ではないのかも…』




スッと襖が開く音がし、振り返ると風間がいた。


「…風間様」
眉を上げる綺月。

「お久し振りですね。いかがなされました?」


何も応えず、綺月の元に歩み寄る。


綺月を見下ろし、しばらく見つめた後、

風間は口を開いた。




「土方が死んだ」



「…」
ゆっくりと目を見開く。



「新撰組も解散した…」


「…そんな」
次第に眉根をきつく寄せていく。



「…今から10日ほど前か」


「…そんなっ!」
搾り出すように声を吐いた。



「土方は箱館にて銃弾に倒れ、満開の桜の下で息絶えた…」


「…いやっ!聞きたくありませんっ!」

逃げようとする綺月の両手首を掴み、自身の胸元に引き寄せた。



「聞け、綺月。あやつが愛したお前には聞く義務がある」

緋色の瞳は揺るぎなく綺月を見つめ、言葉は静かに舞い降りた。

「…」
その緋色の瞳を見上げ、苦痛に歪む表情を晒す。



「穏やかな死に顔であった。…手には帯留めが握られていたな」

「…っ!!!」

体中の水分が沸騰し、溢れ出す感覚。


「信じるも信じないもお前次第…」

崩れ落ちる綺月を抱き留める。



「気を確かに持てというのも酷な話だな。我が妻も憔悴しきっている。
最後まであやつら人間に振り回されてばかりだったな…」

綺月には届いていないであろう言葉を最後は独り言のように呟いた。


綺月の空(くう)を見つめ視点が定まらない瞳を見つめる。


風間が額に口付けを落とすと、次第に瞼が落ちていく。


溢れる雫は幾筋にも流れ落ちた。


そのまま布団に横たわらせる。



「綺月、一人ではその痛み耐え難いであろう。今は眠れ」


一人静かに月の光も届かぬ暗闇に吸い込まれていく。














◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇






次が最終話です。




宜しくお願いします。






みふゆ