小説設定はこちらをご覧下さい→★
第1話はこちら→★
最終話です。
沢山のコメント、ペタありがとうございました。
最終話、かなり長くなってしまいました;
申し訳ないです。
え~、昨日アップした第18話ですが、
がっつり追記しました。
読んでいただければ幸いです。
いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。
かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。
季節は流れ流れて、また春が巡る頃。
時が流れるにつれて、あの暗闇からもゆっくりと浮上している感覚。
綺月はいつものように呼ばれた部屋に向かう。
襖を開け、名乗り顔を上げて、
その人物を見て目を見開いた。
「原田様?!」
「生きておられたのですか」
原田の元に駆け寄る。
「ああ」
目を細め、口元に笑みを浮かべた。
「それは…何よりです」
ふわりと笑う綺月。
「お元気そうで」
「ああ。お前も花魁まで登り詰めたんだな。綺麗だ」
「他にやってくれる娘が居なかっただけですよ」
原田の言葉にクスリと笑う。
「あの…他の方は…」
「…新八は生きてる。斎藤も仙台にな」
「…」
『他の方の名前が出ないということは…皆さん…』
静かに目を伏せる。
「…土方さんのことは聞いてるな?」
綺月の顔を覗きこむ。
「ええ…」
箱舘にて戦死。
風間により伝えられた言葉。
客の話などからも綺月の耳にも聞き及んでることだった。
未だに信じられずにいる自分もいる。
軽く息を吐く。
「俺と新八は江戸で新撰組と袂を分けた…」
思い出すように言葉を紡いでいく。
「その時に…土方さんに言われたんだ」
「戦が終わって生き延びていたら…」
「綺月を頼むってな」
「…!!」
その言葉に綺月はまじまじと原田を見つめた。
袂を分かつと決められたあと。
土方は原田だけを部屋に呼んだ。
向かい合って座る二人。
「悪ぃが最後に一つ頼みがある」
目を伏せている土方。
「俺にか?」
スッと目を開き、原田を見据える。
「…綺月のことだ」
「…!」
「俺が死んで、原田お前が生きていて、この戦が終わったら…綺月を頼む。
傍にいてやってほしい」
原田は意外な言葉に目を見開き、息を飲んだ。
「土方さん、あんた負ける気で…」
原田の言葉を鼻で笑う土方。
「馬鹿言うな。勝つさ。負け戦なんざ考えちゃいねぇ。
勝って綺月を迎えに行くって約束してるんだ」
口角をあげる。
「だが…万が一にもだ、俺が死んだら…って話だ。頼む」
眉根を寄せて頭を軽く下げた。
「おいおい、頭なんて下げないでくれ。…いいのかよ、俺で」
原田が怪訝な表情を浮かべる。
「お前にしか頼める奴がいねぇんだ。
…お前も綺月に惚れてんだろ?」
「…土方さんが生きてても、先にかっさらいにいくかもしれねーぜ?」
口角を上げる原田。
「そん時は全力で奪い返しに行くさ」
喉の奥で笑い、口角をあげて軽く睨みつける。
「…引き受けてくれるか」
表情を和らげる。
「あんたの頼みとあっちゃー断れねーだろ」
軽く溜め息を吐く。
「すまんな」
軽く口元に笑みを浮かべた。
「綺月にはあんたしかいねーんだ。俺に代わりは出来ねーよ」
立ち上がりながら言葉を吐く。
「…土方さん、生きろよ」
土方を見下ろす。
「ああ、お前もな」
原田を見上げ、力強く見据えた。
枯れたと思っていた涙が溢れてくる綺月。
その様を見守る原田。
少しの沈黙の後、原田が口を開く。
「…多分、今日俺に憑いてきてる気がするんだ」
目を伏せる。
「綺月、お前に目隠しをする。俺は一言も話さねぇ」
綺月を見つめて顔を覗き込む。
「…土方さんはお前をどんな風に抱いたんだ」
「…」
綺月は眉根を寄せる。
懐から手拭いを出す原田。
「これは新撰組の手拭いだ。お前にやるよ」
「綺月、俺の事は気にせずあの人を思って抱かれろ。あの人を呼んでやれ」
「それじゃあ原田様が…」
首を横に振る。
「気にするな。またお前に会えてこうして抱けるんだからよ」
綺月の口元に軽く口づけを落とす。
「…始めるか」
「…本当に宜しいのですか?」
「ああ…」
口元に軽く笑みを浮かべる。
その表情を見て俯き、自身の手を握る。
「…少しお待ち下さいね」
顔を上げた綺月は立ち上がり戸を開ける。
闇に浮かぶは昇り始めたばかりの紅い月。
眉根を寄せながら月を見つめ目を伏せる。
踵を返し原田の横に座る。
それはまるで儀式のように始まった。
綺月に手拭いで目隠しをする。
原田は唇を啄み、次第に深い口づけへと誘う。
舌と舌を絡ませ、熱の籠る吐息を漏らしていく。
作られた暗闇の中。
不意に綺月の鼻に香が掠めた。
『この香は…』
動きを止め、身体の中で何かが一気に駆け巡り弾けるのを感じた。
「…歳三さん?」
一人だと思っていた暗闇に不意に現れた土方。
いつかのようにこの部屋で月明かりの元で顔を見合わせた。
強く抱き締められ、顔を覗けば綺月に優しい笑みを浮かべている。
涙が溢れ出す綺月はその胸元にしがみついた。
「おかえりなさいませ…っ!」
「お会いしとうございました…」
土方は綺月の溢れる涙を指で掬う。
「お元気でしたか?」
「少し痩せられたのではないですか?」
眉根を寄せながら、土方の頬を両手で包む。
その問いに笑顔を溢す土方。
優しい口づけが舞い降りた。
原田は自分の意思ではない何かに促されているようだった。
原田も抵抗はせず、その何かに身を任せていた。
綺月の身体を髪から足の先まで口づけを落とし、舌を這わせていく。
原田がこんな風に綺月を愛したことはなかった。
何よりも綺月が既に桜色に身体を染め、
口づけをねだり、行為一つ一つに甘い吐息を漏らす。
自分の知らない綺月がそこにいた。
『ああ、これが土方さんに抱かれる綺月なのか』
集まる熱と身体の疼きとは別に頭の片隅にいる冷静な自分。
『土方さんも酷ぇな』
原田は苦笑いを浮かべた。
片隅に残る理性とは裏腹に本能に追いやられるように身体は綺月を求め続ける。
綺月の中に牡丹が咲く様を見た。
綺月も夢中で土方を求め続けた。
たまに聞こえる漏れる吐息が綺月の中の熱を更に煽る。
「歳三さん…」
何度も名を呼び、その度に土方は口元に笑みを浮かべたり、抱き締めたりして応える。
紅い月もいつの間にか春の月に移り変わる。
その月が見下ろす中、
違う男を求める女。
声を殺し、女を求める男。
狂気と言わんばかりに求めあった。
最中(さなか)。
はらりと目隠しが取れる。
二人の動きは止まり
綺月はうっすらと目を開ける。
視界に飛び込んできたのは原田の潤ませた瞳だった。
『泣いていらっしゃる…』
途端、原田の瞳から一粒の涙が零れ、綺月の胸元にポタと落ちた。
「悪ぃ、また結び直さないとな」
苦笑いを浮かべる原田。
「いいえ、このままで」
原田は綺月の言葉に目を丸くした。
「…まだ抱いていただけますか?」
「…俺で良いのか」
「こんなみだらな女で申し訳ないのですが…、まだ足りないのです」
原田の言葉に応える。
「…名を呼んでいいか」
眉根を寄せる原田。
綺月は目で頷く。
「綺月…っ!」
「会いたかった…」
綺月を強く抱き寄せ、腕の中に閉じ込めた。綺月もそれに応える。
互いに何度目かの絶頂を迎えるも
「まだ欲しい」
「離さないで」
と懇願する綺月。
原田もそれを受け入れ、綺月に想いを注ぎ込んだ。
静まりかえった一室。
月は沈み、
空は白み始めた。
綺月がうっすらと目を開けると
そこには静かな寝息をたてる原田がいた。
『こんなにも愛してくださる方に、私は何て酷いことを…』
綺月は懺悔の念を持ちつつも、原田を見つめた。
目をそっと閉じると昨夜現れた土方が浮かぶ。
『歳三さん…』
不意に窓の外から鳥が飛び立つ羽音が聞こえた。
目を開き、耳で行方を探る。
『ああ…、空に帰っていかれた…』
綺月は再び眠りに誘われ、身を任せた。
綺月が再び目を覚ますと
そこには原田の優しい瞳があった。
何も言わず、そっと綺月を抱き締める。
「…申し訳…ございませんでした…」
綺月の瞳からは止めどなく涙が溢れ出る。
「気にするな」
綺月の額に口づけを落とす。
綺月の震える細い肩を強く抱き締めた。
支度を済ませる原田。
それを手伝う綺月。
静かな時間が流れる。
原田が口を開く。
「綺月…、俺は大陸に渡る」
『お前も来るか』
その言葉は…飲み込んだ。
『わりぃ、土方さん。こんなにもあんたを待ってる綺月を連れていけねーわ』
目を伏せて苦笑いをする。
『こいつは俺の傍よりも
あんたを待ってた方がきっと幸せだ』
綺月は原田に歩み寄り、手を取る。
「お気をつけて…。お身体ご自愛くださいませ」
「こんな酷い女を沢山愛して下さってありがとうございました」
原田はきつく抱き寄せ、綺月の首根を掴み唇を貪った。
綺月もそれに応える。
名残惜しそうに唇を離し、一つ軽く口づけを落とす。
「元気でな…」
その言葉にふわりと笑う綺月。
『最後まで優しい方…。私の想いも気遣ってくださった』
原田の後姿を行く末を祈るような気持ちで見送っていた。
女は艶やかな衣裳と覚悟を身に纏う。
男と女は酒に酔い、華やかさと儚さを携えながら、互いに乱れる。
ここは島原。
月は泡沫夢幻の夜を誘う。
終
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
読んで下さった方の心に何か少しでも残せたらいいなと願います。
少しでも構いません。
気軽にお言葉残して頂けると幸いです。
ここまで読んで頂いて本当にありがとうございました。
明日はあとがき書きますw
みふゆ