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いつものようにキャラ崩壊、設定無視などございます。
かなりのお目汚しとなりますが、それでも宜しければ。
その日やってきた土方は機嫌が悪いことが目に見えてわかった。
何やら予感がした綺月は小さく溜め息を吐いた。
会話はなくただ酒を煽る土方。
黙ったまま酌をする綺月。
銚子が2、3本空となる。
綺月が口を開く。
「土方様、今日は随分とお飲みになるんですね」
「…これが飲まずにやってられっかよ」
「どうかされましたか?」
綺月の言葉に土方は猪口を壁に投げつけた。
パリンと音を立てて割れる。
「…てめぇ、原田とも総司ともやったらしいじゃねーか」
「…」
土方を真っ直ぐ見据える綺月。
「いいご身分だよなぁ。…俺や原田や総司のことも何も考えずに、てめぇは快楽に身を委ねりゃいいんだ」
「…」
土方は綺月を荒く押し倒して、綺月の両の手首を畳に縫い付ける。
「原田に抱かれて気持ち良かったかよ。総司に抱かれて気持ち良かったかよっ!」
唸るように声を絞り出す。
「…私が謝れば気が済むんですか」
真っ直ぐに土方を見つめる瞳。
「てめぇ…」
綺月の首元に土方の手が伸びる。
「…私を殺せば気がすむんですか」
「…気が済むかはやってみなきゃわかんねーだろ」
徐々に首を締め付ける力が強くなる。
綺月はそっと目を閉じる。
自分の頸動脈のドクドクという音を聞いた。
「…」
フッと弱まった締める力。
綺月は小さく息を吸い、小さく息を吐いた。
目をゆっくり開くとそこには苦悩に歪む土方の顔があった。
「…離して頂けます?」
土方は綺月を開放した。
綺月はふらふらと立ち上がり部屋に飾られていた花瓶を取った。
差していた花を取ったかと思えば
花瓶の中にあった水を土方の頭にかけた。
「…てめぇっ!」
「少しは頭を冷やしてください。
何が悲しくて心底惚れてる男にそこまで言われなきゃいけないんですか」
「…」
綺月の剣幕に黙る土方。
綺月は畳み掛けるように言葉を投げる。
「貴方に惚れてる女はこの家を生業にしています。
好いていようがいまいが男に抱かれるのが生業です」
「貴方に出会ってからそれまで何とも思わなかった他の男に抱かれるのが苦痛になりつつあります。
それでも、これを生業とする限り、私は男に抱かれなきゃいけないんです。
この家に少なからず恩もあります。
求められれば応えなきゃいけないんです。
嫌と言ってはいけないんです!」
「こんな女が嫌でしたら、見限って頂いて構いません」
綺月は息を吐き出した。
「…ただ…貴方だけなんです。
数えきれないほど抱かれた身体が貴方に抱かれると悦ぶんです。
幾らでも相手しなきゃいけない男はいるのに貴方を待ち焦がれるんです。
こんなにも感情が昂るのも貴方だけ…」
土方を見据え、表情は変えない。
ただ、その瞳からはボロボロと大粒の涙が溢れる。
口を真一文字に結んだ土方はそっと目を閉じて立ち上がり、部屋から出ていった。
『…終わった』
小さく長い溜め息を吐いた。
目を閉じれば涙が幾筋にもなり溢れる。
崩れる綺月。
一人佇む。
涙は変わらず止まらない。
袂から手拭いを出し、口にくわえ、
声を殺して鳴いた。
月が欠けていく。
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ちょっと短いですかね。
ごめんなさい。
みふゆ