日本の「家族」の在り方について~婚外子相続分違憲判決の考察~ ③性別役割分業の視点から | mi-column(ミコラム) ~時事ニュースから社会を読み解く~

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 日本の「家族」のイメージの特徴は、性別役割分業の視点からも読み解くことができます。性別役割分業それ自体は、古代から、国や文化を超えて、行われてきたことです。身体的特徴(男性が肉体労働に適している点や女性が生命を産むことができる点)から、一定の分業が行われることは、とても自然な流れであるといえるでしょう。しかし、現代社会では、多くの労働が肉体労働から離れ、外の仕事と家庭の仕事に大きな差がなくなってきています。その流れを受けて、特に北欧諸国では、性別による明確な分業がされない傾向になってきています。

 

 一方、日本においての性別役割分業は、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という形で定着しており、そこには「夫は、外で稼ぎ、その収入で妻子を養うことが甲斐性である。」「妻は、家事や子育て(時に介護等)に専念し、夫を影で支えることが美しい姿である。」といった美徳感覚が伴っています。逆を言えば、男性が家事をすることは格好悪く、女性が男性と同等に仕事をすることははしたない、という感覚も含まれているでしょう。こうした考えは、家父長・家制度的思想を背景に、高度経済成長期の男性中心の安定的雇用体制(終身雇用・年功序列)の時代を経て、日本社会に強く浸透したものであるといえます。

 生活の多様化が進み、こうした考えを持つ人々の割合は年々減少傾向であったのですが、平成24年度の世論調査(内閣府:男女共同参画社会に関する世論調査)によると、国民の意識に変化起きているようです。「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考えについて賛成するという人の割合が、平成21年度調査では41.3%にまで減少していたものの、平成24年の調査では51.6%と急増し過半数を超えたのです。年齢別に分けて見ると、70歳代以上(63.5%)から50歳代(43.4%)にかけては賛成者が著しく減少しているものの、40歳代(45.6%)から20歳代(50%)にかけては賛成者が緩やかに増加しています。若者の意識に少しずつ変化が生じていることが窺えます。


 では、“性別役割分業を伴う理想の「家族」”を作るためにも不可欠となる、「結婚」そのものを望んでいる人々は、一体どれくらいいるのでしょうか。国立社会保障・人口問題研究所の出生動向基本調査(2010年)によると、18歳~39歳の未婚者のうち「いずれは結婚するつもりするつもりだ」と考える人の割合は、男性84.8%女性87.7%となっており、未婚者の多くが結婚願望を抱いていることが分かります。また、結婚の利点については、「自分の子どもや家族をもてる」ことであるとする人の割合が男女ともに第1位(男性32.6%女性46.4%)となっており、未婚者の多くが「将来は結婚をして、家族を作ったり子どもを育てたりしたい」という願いを抱いていることが読み取れます。
 このように、性別役割分業を支持し、強い結婚願望を持つ人々が多くなくなっている一方で、その希望を実現することは難しくあるようです。厚生労働省大臣官房統計情報部の人口動態統計及び総務省統計局の国勢調査によれば、平成24年時点の平均初婚年齢(概数)は男性30.8歳女性29.2歳と年々上昇を続けており、生涯未婚率も男性19.3%女性9.9%と上昇を続けています。なぜ、多くの未婚者に結婚願望があるにもかかわらず、晩婚化・非婚化が進行するのでしょうか。1839歳未婚者の結婚しない(結婚できない)理由を見てみると、男女ともに第1位は「適当な相手に巡り会わない」第2位は「まだ必要性を感じない」となっていますが、第3位では男女で顕著な差が見られ、男性は「結婚資金が足りない」女性は「自由や気楽さを失いたくない」となっています。  

 

 これらの結果は、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という家族のイメージが、家族を作りたいと願う人々の願望の実現に、大きな支障を来していることを示唆しています。結婚して家族を作りたいものの、結婚をすれば「男は外で働き、収入を得て、妻子を養わなければならず」「女は家庭を守り、自分の自由な時間を削って夫や子や親に尽くさなければならない」。多様化する社会の流れの中、不況や就職難の煽りも受け、理想の「家族」を実現するだけの財力・能力・精神等を養うことは大変難しくなっているのにも関わらず、多くの人々がその理想を捨てられずにいるのです。結婚をして家族を作ることへの自信が持てない人々は、結局は結婚をあきらめたり先延ばしにしたりするという道を選択します。これが、現在の非婚化や晩婚化等の諸問題の原因であるのだと思われます。日本人特有の「家族」のイメージは、ここでもまた、問題解決への道の前に立ちはだかる壁となっているのです。


 →次回:本最高裁判例の「家族」観から問題解決の道を検討します。