国立佐世保高専と長崎大学水産学部     | まちづくりの将来

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国立佐世保高専は長崎県北唯一の理系高等教育機関である。

その創設は昭和37年4月1日。

制度ができて最初の第1期校として、中学卒業者対象の機械工学、電気工学の5年制学校だった。

 

 

この学校の設置は政治的なものだった。

戦後の学制改革で昭和24年に旧制高校が大学になるが、長崎大学も発足。

その中で、水産学部が佐世保崎辺で開始された。

ところが、米海軍の占領下にあってキャンパス内の道路を弾薬運搬車が往復するなど、厳しい教育環境にあった。独立後も海上警備隊、駐留軍が水産学部施設やキャンパスと重複することが続いた。

結果として、水産学部は長崎市内の大学内に移設された。

昭和36年度だった。

 

 

佐世保市には戦後できたばかりの国立大学がなくなった。

それ以降、高等教育機関の誘致運動を佐世保市は続けていた。

高専の立地は長崎市に水産学部が入る時期に重なっている。

高専は昭和37年に立地したのだから、長崎大学水産学部流出の翌年である。

 

 

平成25年に出会った当時の中尾充宏佐世保高専校長は高専の2期生。

当時の事情を語ってくれた。

選挙運動で佐世保にやってきた池田勇人氏。

自民党総裁で首相、国民所得倍増計画で著名な政治家である。

所得を10年で2倍にすると約束した。

「私は嘘を申しません」とも言っていた。

「佐世保に高専をつくりましょう」と約束したのだという。

 

 

その高専のキャンパスは沖新町にある。

都市計画では工業地域である。

高専で育てる人材は佐世保重工業等の技術人材をイメージされていたのだから、理解できる。

だが、もはや機械工学や電気工学ではない。

高度経済成長を支える工業化の人材づくりではない。

 

 

「AIや仮想空間 情報化に特化」

「佐世保高専 学科新設へ」

そんな囲み記事が2月3日の長崎新聞に出た。

文部科学省の「高度情報専門人材の確保に向けた機能強化」に採択され、

これから10年で9億1千万円の助成が決まった。

デジタル技術の高等教育機関になっていくという。

 

 

それなら、都市的立地に佐世保高専を変えることはどうか。

古い時代の工業地域人材から創造的社会形成の可能な空間において育てることだ。

佐世保玉屋を含む四ケ町三ケ町の中心商店街の核としての研究教育人材拠点の発想である。

戦後の混乱はまだ終わっていないのだ。

そんな夢を見ている。