「もう怒ってない?」
「・・・怒ってる」
笑顔から無表情になり、後ろを向いてしまう。
「そんなにハルとがうれしいのかよ」
「違うよ。知っている人とで安心しただけ。いっちゃんだったらもっとうれしかったよ・・」
私の言葉にいっちゃんの背中がピクリと動く。
私はいっちゃんとの二人三脚を想像してみる。
「やっぱり、いっちゃんとはダメ・・」
その言葉にいっちゃんが振り返る。
「お前なぁ・・・」
語気を強めたいっちゃんの言葉が私の顔を見て失速する。
「いっちゃんとだったら、ドキドキして走れないよ・・・」
想像しただけでも鼓動が早くなる。
真っ赤になった私の顔を見て、いっちゃんも赤くなって私を抱きしめる。
「反則だろその顔」
「いっちゃんとだったらって想像したら、すごくドキドキして・・・。ハル君のときはならなかったのに・・・」
「ハルと想像してその顔したら口きかねーからな」
「大丈夫だよ・・・」
私は抱きしめてくれるいっちゃんの腕をつかんできゅっと力を入れる。
だって、いつでも私がドキドキするのはいっちゃんのことだけだから。
「はぁー」
私の頭の上で大きなため息を漏らす。
「しょーがねーな。当日だけ許してやる。当日だけな。練習なんか絶対にするなよ」
いっちゃんが珍しく妥協してくれる。
「いいの?」
珍しすぎる事態に私は上を向いて聞き返した。
「そのかわり・・・」
「なに?」