大村「あーあー。種村、それじゃだめだ」
体育の大村先生が俺たちの練習を見かねたのか、声をかけてくる。
大村「種村が@@の肩をつかんで、@@はこう・・・よし。それでやってみろ」
俺たちの腕を勝手に動かして、満足気に頷く。
俺の手は@@の肩に置かれ、@@の腕は俺の腰に回される。
力を入れて良いのか悪いのか回された腕の対処を困っていると、
***「はい!ハル君。やってみよう!」
照れることもなく、@@は俺の腰に回した手に力を込める。
「そうだね」
なるべく平静に・・・平静に。
俺は呪文のように心で唱えながら、汗ばんだ掌を一旦握りしめると、@@の肩をつかんだ。
***「また、右からね」
「うん」
***「いくよ。・・右」
前回より密着度が増したおかげで、かなりスムーズに足が運ぶ。
大村「そうだ。だいぶ良くなっただろ。じゃあ、がんばれよ」
大村先生は俺たちの練習を見ると、また忙しそうに準備へと戻っていった。
***「ありがとうございました!」
笑顔で答える@@に合わせて、俺は軽く頭を下げた。
***「ハル君、もう一回やってみようよ」
「そうだね」
平静を装うために数学の定理を唱えながら、俺は@@の掛け声に足を合わせる。
順調、順調。
このまま、余計なことを考えなければ、問題ない。
でも、俺もやっぱり普通の男で、好きな子とこんなに密着していたら、いろいろ考えてしまう。
思った以上にやわらかい二の腕とか、
かすかなフローラルの香とか、
運動しやすいように1つに束ねられた髪の下にみえるうなじとか、
@@の肩に回した俺の腕に感じる@@の下着の感触とか。
数学の公式の合間にちょこちょこ割り込んでくる。
そのたびに少しずつ、血流が早くなったような感覚に襲われる。
***「いい感じだね。ハル君」
うれしそうに純粋に笑顔をこぼす@@に、邪念いっぱいの俺はまっすぐに見返すことができない。
「うん・・・。もう練習終わっても大丈夫かな」
***「全然練習してないんだから、もうちょっとだけ」
「じゃあ、もう少しだけ」
***「じゃあ、また右ね」
他の男と二人三脚させたくなくて、嘘をついて勝ち取った@@の隣。
でも、自分が立ってみるととてもじゃないが普通じゃいられない。
@@が自分の彼女だったらもっと普通にしていられたのだろうか?
リズムよく足並みをそろえて走りながら、俺は考え込む。
@@は一護と付き合ってる。
一護のことを好きなのも知っている。
一護も@@も大切な幼馴染。
よくわかっているんだ。
でも、この瞬間が終わらなければと思う気持ちも俺の本心。
***「あっ!いっちゃん」
突然の@@の言葉に俺は足を止める。
俺の突然の静止に、動いている@@はついていけず、そのまま前のめりに倒れこんだ。
当然、足の繋がれた俺も一緒に倒れこんだ。
とっさに@@が傷つかないように抱きしめる形で。