昨日は疲れてて、うっかりベッドに横たわったら眠っていた。
机の上に置いてあった携帯のメール音に気づかないほど爆睡していた。
それが敗因・・・。
朝、いつものように携帯のアラームが鳴って起きた時、メールの受信を知らせる青いランプが点滅していたのを見て、嫌な予感がした。
「まったくついてねー」
俺は寝癖をそのままに制服だけを着込むと、クロフネへと向かったが中にいたのはマスターだけだった。
譲二「あれ?***ちゃんならもう学校行ったよ。練習するんだって言って・・・おいっ」
息を切らした俺はマスターの言葉も途中に、学校に向かって走り出した。
いつもより早い時間に登校する生徒の数は疎らで、校門をくぐるとすぐ二人の姿を見つけた。
グランド横の休憩スペースに二人は仲良く練習をしている。
ハルは***の肩に手をまわし、***もハルの腰に手を回している。
リズムよく足を合わせて、笑顔で練習をする二人の姿は、傍から見たらカップルだ。
女子生徒1「種村君だー。二人三脚でるんだね。相手の子、うらやましいなー」
俺の横を通り過ぎる女達もハルの存在に気づいて会話を始める。
女子生徒2「ホント仲好さそう。付き合ってるのかな?」
「付き合ってなんかねーよ」
気づかれないように小声で反論する。
旅行のことで少しの我慢くらい必要だと思ったが、冗談じゃない。
やっぱり、***に他のヤローが触れるのなんか許せるわけがない。
それにしてもくっつきすぎだろ。
なんだ、ハルのあの顔。
うれしいけど***に気づかれないように我慢しようとして。
耳が赤くなる癖、思いっきり出てんじゃねーか。
***もあんな笑顔見せてんじゃねーよ。
朝飯を抜いた腹に黒いものがたまっていくのを感じる。
本当に余裕ねーな、俺。
あいつを信じていないわけじゃない。
信じていないのは俺自身。
こんな俺をずっと好きでいてくれるのか信じられない。
だから、早く***のすべてを手に入れてしまいたくなる。
本当に俺だけのものにしたくて。
ジッと二人を見つめていた俺の視線に気づいたのか、突然、***と視線がぶつかった。
***「あっ!いっちゃん」
うれしそうな声を上げたかと思うと、ハルの足が止まり、二人はバランスを崩して倒れる。
***「あっ!」
春樹「うわぁ」
ズサッと砂埃を立てて倒れた二人。
助けようと俺は手を前に差し出すが、数メートル先にいる二人に届くはずもなく、手は空を斬った。
急いで二人のもとに駆け寄る。
ハルが腕にすっぽりと***を抱え込んだおかげで、***はけが一つなさそうだった。
一瞬の間をおいて、***を抱きしめるハルの手に力がこもったように見えた。
「おいっ。二人とも大丈夫か?」
俺の問いかけに、ハルの手の力が抜けた。
***「大丈夫?ハル君?」
ハルの胸から顔を上げて、上体を起こすと、***の顔はみるみる青ざめていく。
春樹「ははっ。大丈夫。それより@@、怪我ない?」
***「私より、ハル君でしょ!」
埃だらけになったハルのジャージをパンパンと叩くと、怪我がないか見渡す。
春樹「俺は大丈夫だよ。それより、ほら、一護が来たんでしょ?行ってきなよ」
足に繋がれた緑色のハチマキをはずすと、ハルは俺を指さす。
***「でも・・・。保健室行ったほうが・・・」
春樹「大丈夫だって。これで練習終わり。後は本番頑張ろう・・・な?」
ポンポンと***の頭を叩くハルの耳はやはり赤くて、抱きしめてしまったことへの罪悪感からか、俺の顔を見ようとしない。
「ハルは空手で鍛えてるから大丈夫だってさ。ほらっ。立てよ」
立ち上がりやすいように***に手を差し伸べる。
その手につかまって立ち上がった***の手をぎゅっと握りしめると、
「ハル。助けてくれて、サンキュ」
ハルの気持ちを見ていないように礼を言い、***を連れて足早に校舎へと向かった。