もう、いっちゃんってば、ホント信じられない!
竜蔵「あれ?***。ジャージなんか着てどうしたんだ?」
校庭であったリュウ兄が不思議そうな顔で聞いてくる。
そりゃそうだよね・・・。
すっかり陽も高くなって、こんな暑苦しいジャージきてるの私だけだもん。
竜蔵「しかも、それ、一護のだろ?」
私の体に合わない大きなジャージの袖を引っ張り、胸元の「佐東」の文字を見ると首をかしげた。
「うん。ちょっと寒くて・・・借りたの」
額に汗して、こんな無理のある言い訳にリュウ兄も納得しないだろうな・・。
竜蔵「そうか。***は寒がりだなー」
すんなり納得するリュウ兄にずっこけそうになる。
さすがリュウ兄・・。
知り合いに合うと必ず、なんでいっちゃんのジャージ着て、暑そうなのに脱がないのか必ず聞かれる。
その度に私は、いっちゃんのバカと心の中でつぶやく。
まさかキスマーク隠してます、なんて言えるわけもなく、私はリュウ兄に言ったセリフを繰り返す。
私の寒がり発言を聞くたびにいっちゃんの噴出したような笑い声が聞こえてきて、何度もいっちゃんを睨んだ。
竜蔵「もうすぐ、二人三脚だろ?がんばれよ」
リュウ兄はニカッと白い歯を見せると私の肩をポンと叩き、手を振る。
あと3種目でハル君との二人三脚がやってくる。
いっちゃんは見たくないと、さっき教室に戻って行ってしまった。
絶対にジャージを脱ぐなと言い残して。
脱ぎたくても脱げないのに。
春樹「あーいた。@@。そろそろ集合だって」
人ごみの向こうでハル君が手を振る。
集合場所には二人三脚の出場者が集まっていて、練習を始めてる。
「私たちも練習する?」
春樹「・・・朝、一護に怒られたでしょ?」
ハル君が申し訳なさそうに眉をハの字にする。
「・・・だ・大丈夫だよ。怒るっていうかただのヤキモチ・・・・あっ」
ブンブンと手を振り回しあわてて訂正すると言わなくてもいいことまで口が勝手について出てしまう。
春樹「一護、ヤキモチ焼きだからね」
ははっと苦笑いをする。
「・・・うれしいけどね」
春樹「・・・ごちそう様」
手をあわせて頭を下げる。
なんだか恥ずかしくて、顔が熱くなる。
パタパタと掌を団扇かわりに仰ぐと、無意識のうちにジャージのファスナーを喉下くらいまで少し下げた。
「それより、練習しよっ。いっちゃんなら大丈夫だから」
ハル君の隣に立つと、しゃがみ込んでハチマキで足を縛る。
こんなキスマーク付けたのに、もうヤキモチなんて焼かせないから!
春樹「@@、ちょっときつく縛りすぎじゃない?」
ついついいっちゃんへの怒りが込み上げてハチマキを縛る手に力がこもる。
「・・あっ。ごめんね」
下からハル君を見上げると、痛そうに顔をゆがめてる。
私はあわててハチマキを緩めた。
春樹「・・・あっ」
見下ろすハル君が私を見て、急に赤くなる。
「どうしたの?」
春樹「・・なんでも・・・ない」
消えそうな声でハル君がつぶやくと、競技の集合の合図がかかる。
「呼ばれたね。行こうか」
春樹「そうだね」
視線を合わせようとしないハル君を不思議に思いながら、スタートラインに向かう。