【#51 MIYAGI’s counterattack – 3 / Oct.25.0087】

(見つけた、キョウ・ミヤギ!)
戦場にそぐわない、明るい調子の、女の声だった。
(あなたは……?)
(ジンは、まだあなたにこだわっている。)
ジン?ジン・サナダのことか?
(ジンはまだ、あなたのことを愛しているんだ!!)
(何……?)
ジン・サナダが、自分を、愛している——ミヤギにとって、そのフレーズはこの世で最も不快で嫌悪感のある響きを持っている。
(ジンはあなたを欲しがっているし、壊したがってる。)
(何を言っているんだ、お前は!?)
欲しがっている?壊したがっている?酷く身勝手な言葉と感情が、魂の奥底まで、不快に響く。
(……あなたを壊せば、わたしだけを愛してくれる——!)
強烈な殺意と無垢な感情とが、ないまぜになって押し寄せる。矛盾としか思えないような、感情の奔流に、ミヤギは飲み込まれ、窒息するような感覚を覚えた。
またか。
今度は、泥の中に引き摺り込まれて、息を止められるようなプレッシャーだ。
苦しい。
動けない。
またなのか。
さっきまでは、自在に宇宙を駆けて、敵を討つことができたが、また、お荷物に逆戻りか。
ヘントが傍にいる。
ヘントなら助けてくれる。
……だが——

「貴様らの、勝手な都合など……!」
ミヤギは、その、琥珀色の瞳を鋭く光らせた。
「愛、だと——貴様らは——……」
ジン・サナダが、わたしを欲しがっている?
ジン・サナダに愛されるために、わたしを壊すだと?
「違う……愛とは、そういうものじゃないっ!」
そうだ。
お前たちは、自分のためだけに欲している。
だが、違う。
彼は——
たとえば、命令に背いても、
たとえば、自分の決意に待ったをかけられても、
たとえば、傍にいられなくても、
自分の使命より、
自分の面子より、
自分の希望より、
その何よりも、わたしを、わたしのために、
今も待ち続けている彼の——
「自分よりも、相手を大切に思うことこそが——」
そうだ、それが、それこそが—
「それが、愛だろうが!!」

(黙れ!死ねっ!わたしとジンの愛のために、死ねっ!!)

「ジン・サナダになど、興味はないっ!」

もちろん、貴様にもだ。
そうだ。
わたしにとって重要なのは、彼との——ヘントとの未来だ。
そのためには、こんなところで止まっていられない。
お荷物には、戻れない。
こんな、身勝手な悪意に晒されて、怯え、足を止めている暇などないのだ。
彼への依存から脱し、自分の力で戦えるようになって、そうして初めて、彼から差し出された未来を受け取ることができる。未だ続くあのマジックアワーの中、決めた——与えられるだけでない、未来を、この手に——二人で——!
「遊ぶのなら、お前たちだけで勝手にやれ!!」

ミヤギは、止まった刻の中、絶叫する。
求め合えぬものを、愛などとは、認めない!
「どけ!わたしは……
——わたしたちは、前に進む——2人で!!」

凍った刻を叩き壊すように、ミヤギは、動き出した。
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【 To be continued... 】