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<提供:ねとらぼ>
個人の力ではどうにもならない大きな物事を動かすための手段として、今やネット署名はすっかり浸透している。……
米国発「Change.org(チェンジ・ドット・オーグ)」の日本版がオープンしたのは2012年。個人的な思いから社会的問題まであらゆる気持ちを「キャンペーン」として立ち上げ、賛同を集めながら相手に訴えていくプラットフォームだ。……
――Change.orgで広報を務める武村若葉さんにインタビューを行った。
●ネット署名は児童扶養手当法も育児介護休業法も変えた
―― これまでのキャンペーンには、国の制度まで変えられた具体的な成功例はありますか。
武村:……最近の例だと昨年に「子どもを5000円で育てられますか?貧困で苦しむひとり親の低すぎる給付を増額してください!」というキャンペーンがありました。
日本のひとり親家庭に対する児童扶養手当は、1人目の子どもには最高月額4万2000円が支給されますが、2人目は所得がいくら少なかろうが月額5000円、さらに3人目以降は月額3000円しか出ないのが当時の仕組みでした。……
集まった4万人弱の署名をプリントアウトして菅官房長官に手渡しするなどした結果、去年の補正予算で改正案が通って、今年8月から児童扶養手当法では2人目が1万円に、3人目以降も6000円に増額しました。
―― 実際に法律での増額にまでこぎつけたのですね。
武村:あとは、「非正規でも産休育休がとれる社会になるよう、育児介護休業法に改正を!」というキャンペーンもありました。……
ちょうど育児介護休業法の改正が議論されているタイミングに合わせて1万2000人分の署名を審議委員会に持って行ったところ、来年1月から施工される改正案(今年3月成立)で、非正規雇用者の育休の取得要件が緩和されました。彼女たちの声が実際に法律に反映されたんです。
―― キャンペーンの成功率はこの4年間でどのように推移しましたか。
武村:正確な成功率を出すことはできないのですが、まだまだ成功している方が少数派です。……
熊本地震後に川内原発の停止を呼びかけたキャンペーンは約13万人と、数でいえば国内版で史上最高レベルの賛同者を集めたんです。原発に対する危機意識の可視化にもなったと思いますが、一方で原発は被災現場の電力供給に重要な役割を持っていますし、管理しているのは国です。ものすごくセンシティブで制度的に守られているターゲットなので、数が集まっても簡単に行かなかったケースです。
―― 訴える相手とのパワーバランスもあると。
武村:…… 先ほどの育児介護休業法の改正に取り組んだマタハラNet・小酒部さやかさんは、2年前からこの問題に取り組んできていた分、育児介護休業法が改正されるタイミングをちゃんと把握して、どういう落とし所なら法律に盛り込まれるか、目的自体を達成可能なギリギリのレベルで設定していました。
国や自治体へ働きかけるケースでうまくいったのは全部、Change.orgがあったからというよりは、立ち上げ人がちゃんと長期的に戦略を練っていた点にある気がします。
●直筆署名に比べ「変える力」は弱いのか 得意分野と苦手分野 ……
―― 「ネットの一筆は軽い」など、イメージから直筆しか認めない受け手もいる気がするのですが、そういうハードルを感じることはありますか。
武村:…… 特に年配の方がいるような相手だと難しい気もします。逆にネットだからこその影響力について理解している方もいるので、結局は一長一短なのではないでしょうか。
―― ネットだからこそ成功した署名活動の例もきっとあるでしょうね。
武村:直近だと「奄美大島のすばらしい自然を残すため、中国人客5,400人を乗せた22万トン級クルーズ船の寄港地建設計画をやめてもらいたい!」というキャンペーンが、ネットならではという意味で一番良い成功事例でした。……
―― 声を上げたところで、本来なら島の中でしか話題にならなさそうな問題です。
武村:ですがネットを介して、ダイバーさんといった日本全国にいる奄美大島の自然が好きな人から多くの署名が集まりました。逆に地元の人からも、紙で反対と書くと関係者の視線が気まずいけど、オンラインだと気軽にサインできたという報告もありました。ネットという手段が島の外にも中にもうまくかみ合ったらしく、約4万7000筆、紙と合わせて計5万1309筆を鹿児島県知事に提出した結果、計画は中止になったんです。
―― 4万7000筆という数字も自治体に十分圧力を与えたのでしょうか。
武村:厳密に言うと、数そのものにインパクトがあるわけではないと思うんです。ネットでは署名数=「問題を認知している人の数」ではなく、そこから賛同者がさらに問題を拡散してくれます。拡散するとさらにマスメディアが取り上げる可能性も出てくるわけで、その数に潜む「いろんな人がこの問題の動向を見守っているんだ」というプレッシャーが相手にかかっていきます。
―― 訴え先がネットの拡散力を知っているほど、直筆以上の効果を発揮する可能性も大きいと。
武村:署名という言葉を使うと、直接請求できるかどうかなど紙の署名と比べてしまいがちです。そもそも全く違うツールなんだということを理解した上で、紙もネットもうまく組み合わせて使ってもらえるといいなって思いますね。……
私がこの夏聞いた話も快挙ですよ。
アマゾンの森に建設予定だった巨大ダム。
アマゾンの森と川を守るため、世界中から120万人もの人々が署名に参加し、そのピープルパワーによって、ブラジル政府は、巨大ダムの建設を中止。
恐るべし、署名の力。
プレッシャーを与えることで、効力を発揮することができるのですね。
川内原発の例のように、署名数が集まっても、現実をすぐさま変えられるというわけではないけれど。
それでも、問題喚起という大事な役割を果たしていると思います。
ネット署名は世の中を変えることができるのか。
私は、YESと答えたい。
戦略が重要のようですけど。
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