当時の産小屋

 

庶民の大半の分娩は、村の片隅に建てられた産小屋を共同で使って行われていましたが、ミトの家は裕福であったため産小屋を使わず、自宅にある二階の産部屋を使って過去に1回の分娩を行っていました。

 

ミトは一人の子供をすでに持つ、いわゆる経産婦です。内診をするとミトの子宮口は柔らかく、内診の手を入れると子宮口は指で容易に広がりました。ですが、そこにはいつもは触れるはずの胎児の硬い頭部はなく、少し硬めの皮膚があるだけでした。トヨは、「赤ちゃんはまだ上にいる、陣痛もそれほど強くない、今日はまだ産まれそうにもない、もう少し頭が下がってくるのを待ってみよう」と夫の常七に言った後、いったん自宅に戻りました。

 

 

夕方に再度行った内診でも胎児の下降所見に大きな変化はありませんでした。ミトは子宮収縮時には軽い苦悶の形相をしていたものの、その合間には会話もでき、「今回のお産はいつもと違う」とトヨに比較的元気に語り、水や少量の食事も摂取していました。

 

「それほどの疲れはなさそうだ」と判断したトヨは「今日は様子を見よう」と結論し、帰宅しました。

 

翌朝(4月24日)8時、トヨは3回目の内診をしました。しかし、やはりいつものお産とは明らかに異なる内診結果でした。トヨが経験したいつものお産と違い胎児の頭は一向に降りてくる気配がありません。何度試してみても結果は同じで、トヨの手に触れるのは胎児の頭ではなく、肩と上腕だけでした。

 

「こんなお産は初めてだ」と独り言を言いながら、今まで経験したことのない子宮内の胎児の形と内診所見を頭の中で繰り返し考えていました。ミトのお腹側に回って胎児を回転させたりお腹を押したりしてみても子宮内の胎児はピクリともせず、トヨはミトの背後に回り、後ろから腹部を擦りながら途方に暮れていました。


 

 

ミオ・ファティリティ・クリニック WEBサイト

http://www.mfc.or.jp

ミオ・ファティリティ・クリニックフェイスブックページ

https://www.facebook.com/miofertilityclinic/?fref=ts