弁護士なら、法廷で傍聴席が騒ぎ出す、という経験をしたことは誰もがあるのではないかと思います(ないかな?)。
あまりに下らない弁護士・検察官・証人、そして裁判官の発言を発端として。「裁判長、ふざけんな!」とか「真面目にやれ!」とか「嘘つきめ!」とか傍聴席の皆さんから声が上がりはじめます。
裁判長は「静かにしてください」から、「退廷!」と命令を下し、さらには「監置!」といって裁判所の地下に留め置かれる処分(さらには拘置所まで連れて行かれることもあり)まで行われます。法廷では、まるで裁判長は王様で、「家来」の廷吏が暴力的に傍聴席のみなさんを排除していきます。
私は、ほぼ体験しています。「静粛に。拍手しないように」なんて事態は全然マシで、退廷、監置、さらには被告人の退廷、そしてさらには弁護人である自分に対する退廷命令まで・・・。
やれやれ、真面目に弁護士をやる、ということはそういう事態に直面する機会があることだと思います。
先週も、突如の「退廷」「退廷」の嵐。東京地裁の大法廷で裁判所の強権が振るわれました。
この事態に至る前の段階で、裁判長が、弁護士に「傍聴席(ないしは被告人等)を静かにするように指導してください」的なことを言ってくることがあります。
実際、自分が尋問している時で、証人が答えている途中などで、騒ぎが起こると証人の声は聞こえず、速記官も記録ができない、ひいては証拠に残らない等の事態に陥ることはあるわけです。
裁判所としては、司法の一翼にある弁護士も法廷という場を一緒に作っているのだから、その辺はちゃんと協力して当たり前でしょ?、一緒に法廷の秩序を維持するのが法律家ではないですか、というところでしょう。
昔は、そうかもな、と思うこともありました。そうすることが真面目にやる、ということなのではないかな、弁護士として、と。
しかし、それは間違っていると今は確信しています。裁判所は国家機関であり、弁護士は司法の一翼を担うとしても民衆側に立つわけであって、基本的に国家機関とは対峙する立場にあるのです。
いたずらに、でたらめに騒ぐことがいい、ということではありません。しかし、理不尽に声があがることは仕方がないでしょう。秩序維持、それ自体は、支配側の目的であり、論理でしょう。
今年は3月には京都地裁の法廷に機動隊まで動員され傍聴人の排除が行われるという勾留理由開示公判も体験しました。「退廷!」を連発する裁判長、そして、それに従い力づくで傍聴人を排除しようとする廷吏と抵抗する人々・・・。
こんな場面で弁護士はどうするのか?先週の法廷では、私は「裁判長の声が聞こえないと手をあげて発言する傍聴人まで問答無用で退廷命令を下す裁判調の訴訟指揮はあまりに感情的に過ぎ異議」を出しました。もし、秩序というものが私たちにとってもあるのなら、権力者(裁判所)のでたらめな強権発動を許さないことでしょう。