ソウルで起きていること・・・ロシア2月革命100周年を目前にして | 御苑のベンゴシ 森川文人のブログ

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 韓国の朴槿恵大統領の崔順実(チェ・スンシル)被告の国政介入事件で、国会は9日、野党が提出した朴氏に対する弾劾訴追案を可決した、とのこと(12/9)

 

 11月26日には全国でソウルで150万人、釜山、光州等各地で40万人の街頭行動で民主的に勝ち取られようとしている革命的事態でしょう。

 

 このゼネスト情勢は、今のメディアで「切り縮めて」取り上げられているようにチェスンシル・ゲート「のみ」を問題として行われたものではありません。このスキャンダルが一つの「きっかけ」として爆発的に怒りが拡大したとはいえますが、これは韓国の民主労総など労働組合が中心となって、しぶとく一年以上前から繰り返してきた必死のゼネストの継続がもたらしたものです。

 昨年4月24日に27万人、7月も5万人・・・全然、報道されていなかったけど、そういう闘いが執拗に繰り返されてきたのです。

 

 民主労総はゼネストの目標として、「さらにやさしい解雇、さらに低い賃金、さらに多くの非正規職」を狙う朴槿恵の労働者殺し政策粉砕(労働市場構造改悪廃棄)、公務員年金の改悪、最低賃金などすべて労働法制の改悪に反対することを掲げていました。

 

 このような闘いの一つの結実としてパク政権打倒がある(まだ、終わっていませんが)のであって、この闘いを「切り縮める」あらゆる日和見的な見方には異議を唱えたいと思います。

 

 「民主主義国家としてはまだ発展途上」(池上彰氏)、「実はデモに参加する側も民主主義をいまだに理解していない。」(元朝日記者)、「今回の事態を『民主化』という物差しだけでは測れない。『保守の分裂』の結果という側面も見なければならない。問題の根治のためには、経済民主化やマスコミの改革までが必要」(ホン・ソンス淑明女子大教授)などなど・・・。

 

 私たちは、今、韓国で起こっていることを歴史的に・かつ・主体的に捉えるべきだと思います。単なる「政権交代」で終わらせたり、「次の選挙」に繋げたり、するのではなく、今、韓国の民衆が望んでいるもの、怒っていることの本質を掴みましょう、ということです。

 

 トロツキーの99年前の指摘は、この局面でとても参考になります(いずれも『ロシア革命史(一)』)。

 

「決起という考えは労働者の間ではもうとうに熟していた、ただその時点では、それがどういうことになるのかだれも予想していなかった。」P202

 

 ・・・今回の韓国の人々の決起も明確に行方が定まっているわけではない、可能性と、そして目を潰される危険性が現時点ではあります。

 

「革命によって何かを失う者は、革命にその本来の名称をめったに認めたがらない。なぜなら、その名称は、怨みをいだく反動派のあらゆる努力にもかかわらず、人類の歴史の記憶の中で、古い枷と偏見からの解放という光背につつまれるからである。あらゆる時代の特権者は、その下僕と同じように、自分たちを打倒した革命を、つねに、過去の革命とはちがう、下層民の反乱とか騒動とか暴動とかとして宣伝しようとしてきた。」P256

 

 ・・・「民主主義としては発展途上」などの見解は、ここでいう「何かを失う者」側の見方ではないでしょうか。

 

「自由主義の新聞は二月革命を無血革命と称した。・・・蜂起の勝利さえ含めてあらゆる勝利したものの味方であるアルベール・トーマ(注 フランスの政治家、社会改良主義者、排外主義者、とのこと)は当時、「もっとも快晴で、もっとも祭日的で、もっとも無血なロシア革命」について記した。たしかに、かれはその革命がフランスの証券取引所の支配下にとどまることを期待していた。・・・2月の日々はそうではなかった。しかし、権力がひとりでに手に入ったかのうように事態を描こうとする自由主義ブルジョアの要求にこたえて、無血革命という作り話が執拗にひろめられた。」P264

 

 ・・・単なる「騒動」として無視・軽視するのも、安全な「無血革命」と整理するのも違うでしょう。そもそも、朴槿恵大統領個人への攻撃ではなく、朴政権に代表される「現体制の労働者に対する扱いに対する怒り」に端を発した闘いなのです。軽視も整理もせずに、この事態を「自分たちだったらどうするか」「自分たちだったら世界をどう回すか」という主体の問題として投影することが必要でしょう。

 そうでなければ、トロツキーの以下の警句が、この韓国の人々の闘い自体を切り縮めてしまう危険性もあるのです。

 

「過去のあらゆる革命でバリケードで闘ったのは労働者、職人、部分的には学生で、兵士がその味方をしたが、あとで権力をかすめとるのは、用心深く窓からバリケードを見守っていた有力なブルジョアジーであった。」P295

 

 ・・・韓国だけでなく、フランスでも労働法制改悪の闘いが始まりました。1%の99%の民衆に対する抑圧に対する怒りの決起です。視野を広く−歴史的に・空間的に−持って、しかし、眺めるのではなく、主体として現代史に参加しましょう! 国際連帯!