日々の生活、というものは本質的に保守的なものだと思います。昨日と同じ今日、今日と同じ明日、が予測できなければ、子どもを育てることも、食事の準備をすることも日々「冒険」になってしまうでしょう・・・しかし、実際、その「日々の生活」自体が成り立たないほど、貧困であり、不安定であった場合は?私たちは何を選択するのでしょう。
そんな格差先進国であり、1%vs99%のオキュパイ・ウォールストリート運動発祥の地である新自由主義大国アメリカの大統領選挙の結果が出ました。ドナルド・トランプ氏が選ばれました。意外な結果なのか否か・・・。いわゆる従来路線の中に安定を見る保守的な立場からは意外、ということになるのでしょう。なにしろ排外主義の権化のような演説を繰り返していた超ナショナリスト、トランプ氏を選んだわけですから。
では、アメリカ人は、排外主義、そして差別とナショナリズムに傾いたのか?限界のある選挙システムの中で、アメリカ人が選択を迫られたのは、「強烈な装いのナショナリスト=トランプ」か、「従来路線のナショナリスト=ヒラリー」でした。
その中で、一時は民主的社会主義者であるバーニー・サンダースか、トランプかといわれるほどに、アメリカ大衆の貧困、格差が拡大していたことは明らかでした。マジョリティーとしてのアメリカ人の不満と憤激が向かう先として、少なくとも「現状」の路線であり、あからさまな1%側=エリート層の政策を取るヒラリーよりも、強烈な現状打破のイメージをまとったトランプに向かわざるを得なかった、ということだと思います。
もちろん、排外主義キャンペーン、つまり分断政策により、移民労働者に仕事が奪われているとか、犯罪が増えているとか、そう信じている人たちもいるでしょう。
しかし、一見、「ナショナルな」選択と思われるイギリスのEU離脱国民投票にしても、今回のアメリカ大統領選挙にしても、その底に渦巻く人々の真意、つまり現状に対する不満と怒りを汲み取ることは重要だと思います。
奨学金=借金漬けにならないとならないほど大学の学費が高騰し、サブプライムローン破綻で自宅が奪われ、格差が広がる一方のアメリカの人々の状況を「対岸」の状況と見るのか、それとも自分自身の今ないし近未来と感じるか、つまり、自分とアメリカの人々の状況を同じだ!と把握するか否かで、保守的に考えるか否か、異なるでしょう。
私は、トランプ氏なんて好きになれません。しかし、クリントン氏もまったく支持できません。自民党=安倍政権が支持できない、民進党がまったく信用できない、というのと同じです。現状の延長に展望を見ることはできない、ということです。
このような「選挙制」の限界的な選択肢に追い込まれた民衆の選択・・・やむを得ない不満のはけ口の選択、どこにも出られない民衆の叫びとしてアメリカの大統領選挙の結果を理解したいと思います。
すでに反トランプデモも始まっているとのことで、私はそれを全面的に支持します。
韓国の民衆はパククネ大統領を打倒する寸前です。私たちもまずは安倍政権を打倒し、「全く異なる」政権ないし政治形態を獲得するのが、アメリカの民衆の叫びに応える「仕事」だと思います。
グローバリズムという新自由主義、つまりは資本主義のもがきが世界的に限界にきています。日々の生活を保守することができない、それが99%の私たちの現実、そのことをアメリカの民衆は突きつけたのだと思います。エリート層の代表=ヒラリーは信用できない、その選択肢にトランプしかなかった、ということです。そのギリギリの選択に、それしか選べなかったアメリカ民衆の選択を理解し、応える必要が私たちにはあります。
ナショナリズムに陥ることなく、それぞれの国において自国の政府を打倒するという国際連帯、民衆レベルの国際連帯を築くチャンスが到来したものと捉えたいと思います。
パククネ政権打倒、トランプ政権打倒、そして安倍政権打倒!この世界のあり方自体に世界中の大衆がノーを突きつけています。本質的な変革の時代、つまり革命的変革の時代として捉えることは「保守」的にはキツイことだと思いますが、現状、もうやってられないぜ、という私たちにとっては「機会」として捉えられると思います。今こそ、国際連帯を!