勾留理由開示 裁判所にあなたが国家に暴力振るわれる訳を説明させよう! | 御苑のベンゴシ 森川文人のブログ

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 弁護士なら刑事事件の弁護人になることもあるだろうし、否認事件、つまり無罪を争う事件を担当することもあるだろうし、だったら勾留理由開示を請求することもあるだろう・・・と思いきや、2013年における全ての裁判所の勾留状発付件数の合計11万6181件のうち、勾留理由開示請求の件数の合計はわずか695件=0.6%とのこと。

 憲法34条に「何人も、正当な理由がなければ、拘禁されず、要求があれば、その理由は、直ちに本人及びその弁護人の出席する公開の法廷で示されなければならない。」と規定されており、それに基づく手続きなのですが、この憲法上の権利を行使したことが一回もない弁護士もたくさんいるようです。

 憲法の建前としては、国家が暴力、つまり逮捕・監禁する場合には、その理由を説明しろよ、と規定しているわけです。戦前、治安維持法などでさんざっぱら「国都合」の暴力が横行していたことに基づく規定だと思います。

 もっとも、実際、一般事件であれ、いわゆる公安事件であれ、勾留理由開示公判を経験した弁護人は、その裁判所のあまりに抽象的で紋切り型の「勾留理由」の説明に辟易したものだと思います。実際、裁判所は検察のほぼいいなりで、97%は勾留をそのまま認めます。チェックなんてしていません。

 だから、勾留理由開示公判でも、適当にお茶を濁すような「勾留理由」しか説明しない裁判官も多いのです。私の経験した勾留理由開示でも、警察が捏造した証拠も見抜けない裁判官や、起訴もできないのに勾留が認められている事案も多数あります。

 逆にいえば、現在の法システムでは、警察・検察が逮捕してしまえ!と欲すれば、裁判で有罪にすることはできないけれども、とりあえず裁判所のお墨付きの下、逮捕・監禁(勾留)は、23日間もできてしまう、ということだと思います。

 じゃあ、勾留理由開示なんて「絵に描いた餅」だし、やっても無駄なんじゃない?って?

 勾留理由開示の実質的な目的は何通りもあります。一つは、検察官に本件は起訴したら徹底的争うぞ、という姿勢を示して、起訴することを慎重にさせる、つまりプレッシャーをかける、ということです。有罪にすることができる証拠がある場合のみ起訴するようにさせる、ということです。
 もう一つは、黙秘を続ける被疑者に一息つかせ、傍聴席の人々と対面させ、また、取り調べ時間を奪うことにより、黙秘権の行使を励ますという側面もあります。むしろ、このことの方が大きいかもしれません。

 いわゆる、国家暴力と反戦・反原発などの民衆の運動が激突する公安事件の勾留理由開示公判では、憲法が要求する「公開の法廷」ということの意味が裁判官に突きつけられます。つまり、傍聴者が納得できないようなことしか言わない裁判官にはヤジがガンガン飛びます。まあ、国会議員ほどはないにせよ。

 当たり前ですよね。裁判官は恥をかきたくなければ、きちんと勾留する理由を説明しなければなりません。我々弁護人はしつこく法廷でも問い質します。中には逆ギレして、弁護人である私に「あと一言で退廷命令出しますよ」なんて言ってくる人もいます。

 国家の思うがままに20日間も監禁されるなんてたまったもんじゃありません。弁護士は、もっともっと勾留理由開示を請求すべきです。とりわけ、憲法を大事に考えている弁護士はね。諦めずに、裁判官や検察官にプレッシャーをかけ続けることが大事だと思います。きちんとした仕事をさせるために。