弁護士なので、時に感覚的に「身体を張って」的な場面に出くわすことは必然的にあります。刑事弁護の側面に付随する場面が多いですが、刑事弁護こそ、あらゆる士業でも弁護士だけに与えられ、かつ、どの士業も欲しがらない弁護士の弁護士たる仕事だと思います。「弁護人」だから「弁護士」なんでしょうね。
1、 監視弁護
集会だとか、デモだとか、市民が行う場合、所轄の警察、公安警察、機動隊などが威圧、参加妨害、さらには転び公妨(何もしていないのに自分で転んで公務執行妨害を演出して逮捕すること)などが行われることよくあります。それに対し、弁護士として警察が違法行為を行わないように監視を行うことです。
様々な集会・デモで行っていますが、印象的なのは1997年1月の新宿地下道の東京都のホームレスの人たちのダンバールハウスの強制排除の夜です。夜中に現場の人から電話があり駆けつけました。そしてホームレスの人たちや支援者で作り上げたバリゲードの裏側に立ちました、「監視弁護」の腕章をつけて(後に、法廷に提出された検察側の証拠のビデオにもちゃんと写っていました。)。
冬の明け方、最終的にはバリケードは東京都の雇ったガードマンと警察に解体され、私も一緒に排除されました。多数その場に居たマスメディアの人たちがただただ「見ていただけ」というのが印象に残りました。「そういう仕事っていいわけだな」と思ったなあ。
2、 接見
2006年ごろ、代々木公園での労働者集会の後のデモで逮捕された参加者の接見のために、デモ直後、直ちに渋谷警察署に駆けつけました。渋谷の歩道橋を警察署に向かう段階で、数名の公安刑事がすごい勢いで私たちの進む歩行に走っていき、警察署の前に「壁」を作りました。人の壁。「森川、帰れよ!」とか言われて。その向こうから所轄の警官が「先生、後ほどきてくださ~い」とか叫ばれても・・・接見妨害だと思います。
3、 法廷闘争
東京地裁でも法政大学が、学生らに対し200m以内に近づくな、という仮処分の審尋の際、かなり粘って、粘って主張していたところ「弁護人も退廷!」という裁判官の声と共の数名の廷吏に囲まれちゃって・・・そういう担当の廷吏は、だいだい、顔見知りだからニヤニヤされて・・。
4、大学での講演
で、富山大学には、学生に新歓の講演によばれたのですが、大学はお呼びでないってことだったようで、警備員が多数用意された上、「学外者の森川文人は直ちに退去するよう勧告する! 富山大学」というプラカードを持った職員が20人くらいきて排除されました。
・ ・・ざっと、こんな感じですが、ちょっと前の弁護士は公務執行妨害で逮捕されたり、法廷で監置処分で拘置所に留め置かれたり、正しく、きっちり、闘っていたようです。
私の経験など大したことない、と思います。弁護士というのは、こういうもので、多くの真面目な弁護士はこういう感覚的に「身体を張った」場面に出くわすものだと思います。アウェー感というか、ギリギリのノブレス・オブリージュ感というか、それを発揮してこそ、弁護士でしょう。
いや、弁護士であろうとなかろうと自分のやるべきこととして「身体を張って」頑張ることは誰にでもあるでしょう。
そういう場面は、自分を鍛えてくれます、さらに、頑張れるように。次はもっと身体が張れるように。ここぞって場面はありますよね、誰にでも。がんばりましょう!