新宿の過激派ムラ? 「柏木団」の系譜 | 御苑のベンゴシ 森川文人のブログ

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 現在、新宿村スタジオという施設も所在する北新宿、西新宿界隈。ここは、かつては、柏木という地名でした。成子坂下、十二社(じゅうにそう)、淀橋辺り、という地域です。

 今から100年前には、「柏木は社会主義者の巣窟の様相を呈し、警察には『柏木団』と呼ばれて危険視されていた」とのこと(『パンとペン 社会主義者・堺利彦と「売文社」の闘い』黒岩比佐子 著)。
 幸徳秋水、大杉栄、堺利彦、山川均、荒畑寒村、管野すがの皆さんが住んでいる時期があったようです。

 楽しそうだなあ。そういうコミュニティーっていいなあ。幸徳さんと堺さんは、仕事が終わった後も近所で、地面に何か書きながら話し込んでいたらしいし、大杉さんはオシャレな格好で近所をよく散歩していたそうです。
 幸徳秋水と堺利彦との『共産党宣言』の他に、堺利彦は、モーリス・ルブランの『アルセーヌ・ルパン』シリーズや映画『マイ・フェア・レディ』の原作であるバーナード・ショーの『ピグマリオン』という小説を翻訳、大杉栄も『ファーブル昆虫記』を翻訳、皆、語学に強く、興味も幅広い、最先端のインターナショナルな知が結集していたのだと思います。ウキウキしますね。

 そのような開かれた知だからこそ、社会主義、無産運動、無政府主義に向かったのでしょう。


 ちなみに、当時、社会主義のチームとしては革命派の「柏木団」の他に、議会主義の「本郷団」といわれる人たちもあったそう。さて、あなたならどっちに行きます?なんて。

 幸徳秋水や坂本清馬らは、いずれも土佐中村の出身で、東京に来てから、この柏木界隈に居たこともあったようですが、この「土佐中村→柏木ライン」というのは個人的にはちょっと引っかかります。

 というのは、私の実家は、現在も、旧柏木(現在、北新宿)に所在するからです。高知の中村(現 四万十市)よりさらに西の奥にある土佐清水から出てきた父母が、そこに住むようになったから・・・ということになります。父は、この「中村→柏木ライン」を知っていたのか否か・・・。中江兆民の本は本棚にあったけど・・・。なんとなく、感慨がありますねえ・・・。

 100年前、貪欲に世界の知識を吸収し、それを弾圧されながら(集まった人には全員、尾行が常時ついていたようですし、幸徳さん、大杉さん、杉野さんは国家権力により殺されてしまいます。)、世の中に出すことを考えていた人たちがいた・・・その事実に、100年後の私は励まされます。