マスコミの報道では「大災害時の国会議員の任期延長などを定める『緊急事態条項』の必要性については、各党の意見がおおむね一致した。」などとなっています(朝日5/10)。
これは、不勉強なのか、リークの垂れ流しなのか、はたまた、わざとなのか。それにしても「緊急事態条項」の本質を余りにハズシすぎです。2012年の自民党の憲法改正案では、はっきりと以下の通り、緊急事態条項が提案にされています。
「 98条 内閣総理大臣は、我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱、地震等による大規模な自然災害その他の法律で定める緊急事態において、特に必要があると認めるときは、法律の定めるところにより、閣議にかけて、緊急事態の宣言を発することができる。」
「99条 1項 緊急事態の宣言が発せられたときは、法律の定めるところにより、内閣は法律と同一の効力を有する政令を制定することができるほか、内閣総理大臣は財政上必要な支出その他の処分を行い、地方自治体の長に対して必要な指示をすることができる。」
つまり、まず、「我が国に対する外部からの武力攻撃、内乱等による社会秩序の混乱」が想定されている緊急事態であり、マスコミのいう「大災害」はその次です。
そして、重要なのは、総理大臣の判断により全ての権力が内閣に集中するということです。そして、以下の通り、私たちが指示に従わせられるのです。
「99条 3項 緊急事態の宣言が発せられた場合には、何人も、法律の定めるところにより、当該宣言に係る事態において国民の生命、身体及び財産を守るために行われる措置に関して発せられる国その他公の機関の指示に従わなければならない。
この場合においても、第十四条、第十八条、第十九条、第二十一条その他の基本的人権に関する規定は、最大限に尊重されなければならない。」
基本的人権の配慮なんて、ただの「お為ごかし」でしょう。ともかく、「緊急事態条項」とは、いざとなれば、それ一発で憲法を停止することが出来る政府の必殺の武器、ということです。いわゆる、戒厳令、ここに本質があると思います。
ナショナリスティックな地平での「押し付け憲法論」も憲法審査会で行われているようですが、「アメリカが日本に押し付けた」ことが、日本の政府にとっては不満でも、日本の民衆である私たちにとって獲得物であるなら何の問題もありません。
むしろ、今問題なのは、「政府・自民党」が、「私たち国民」に、「緊急事態条項」というキラーカードを押し付けようとしており、それをマスコミも危機感なく報道し、民主、維新、公明、次世代まで乗っかているという事態です。これこそ私たちにとっての「緊急事態」かもしれません。
政府が、盛んにやりたい憲法改正。私たちはやりたくない。この「押し付け」状況に危機感がない報道状況に「緊急事態」ムード醸成の危機を感じます。