かつて接見禁止(弁護人以外会えないという処分=罪証隠滅等を理由に付けられる)の状態で東京拘置所に勾留されていた被告人の弁護人だったときでした。恐喝罪の事件でした。
ある日、接見に赴くと、「被告人が自殺をはかり、先生宛に手紙がある」とのこと。ええ~っ、と呆然としつつ普段行かない拘置所の別棟に連れて行かれ、その手紙(遺書?)を見せられました。
そこには「森川先生、先週接見に来て下さると待っていたのですが・・・云々」
結局、一命を取り留め、面会することも出来たのですが、この話をする多くの弁護士は唖然とします、まあ、そりゃそうです。
もっとも、具体的には、私は、その前の週に接見に行かなかったのは、当該被告人の為の聞き取り調査をやっていたからでした。当該被告人が指定する人を街で探し聞き取るという調査で一筋縄にはいかず、苦労しました。そのような作業をしていたので、さほど「負い目」は感じませんでしたが、まあ、それでも、そんな手紙が書かれていることの重みは感じます。
囚われの状態で、外の人には弁護士以外会えないという状況下の被疑者や被告人。やはり、かなり責任が重いなあと思います。同じ被告人に一日に二回接見に行ったこともあります(川崎の方の警察署でしたが)。
ちなみに、当該被告人は、(看守の目を盗んで)首を吊ったので喉を怪我しており、その後、接見しても声がちゃんと出ませんでしたが、私に謝っていました、「先生、変な手紙書いちゃって」と。
一定の信頼関係が成立していたからだと思いますが、ともかく、「囚われの依頼者」との信頼関係の構築は細心の注意とガッツが必要です。
ナイーブな感覚とタフネス。両方ないとやってられません。
