ここのところHonda車に厳しい記事を書いているので(しかもいい車なのにあまりいい書き方をしていない)、その理由になった車を紹介しましょう。
このBlogの法則(現行車両しか掲載しない)をねじ曲げての古い車の登場です。
その車は、Honda CIVIC EK4
2000年まで製造されていた古い車です。
「今更なんで?今は、2011年だぞ。生産中止になって10年以上経過している。」
「自動車立国日本」のモータースポーツ界の現状を表している車です。
この10年前の車が、現在の「マイナーリーグ」での主力車種になんです。いまだに。
最大限譲歩して、この2000年までの車両が「速い」日本車でした。
21世紀に入って、どんどんどんどんお利口さんになっていかなきゃいけなくなって・・・
今や、3ドアハッチバック自体を生産している会社は・・・・どこかあったっけ?
今回掲載する車両は、「ナンバーが」ついていません。
それどころか、もはやノーマルのEK4とは似ても似つかない改造のされ方をしている車両。
いや、ちゃんとある「競技車両規則」に合致した範囲内で改造が施されている車両です。
既に2010年シーズンを特別なゼッケン(シードゼッケン)をつけて走行するほどの実力を見せつけた強力な車両を、私がドライブできるチャンスを手に入れたんです。
もっとも、パーマネントサーキット主体の私が、このチャンピオンシップ上位車両を本来の場所で走らせたところで・・・その実力の10分の1も発揮できない。(それどころか、まわりからドライブに来たの?その強烈な車両で。って笑われてしまうこと請け合いだ。)
今回の私の任務は、「積み替えたエンジンの慣らし走行を、条件が一定の状態を作り出せるパーマネントサーキットで確実に行う」こと。
ざっとどんな車両かということを紹介しておくと・・・
まず、この車両は「WRC出走用に補強が施されたラリー車」を現オーナーが手に入れて、「本来搭載されていたエンジン形式ではない」Honda-VTECエンジンに換装されています。
金がかかったショップ製作車?
とんでもない。すべて現オーナーの手作りの車両です。
それもエンジンは、「ただ違うエンジン形式に積み替えた」のではなく、複雑なVTECエンジンをオーナー自らチューニングした特殊なエンジン。
この車両に求められることは、「1日のうちに2分間×2本の競技」だけを走りきること。
車重をできる限り軽くするために冷却系すらギリギリの寸法に作り込まれている。
「水温に気をつけてくれ。水が沸騰する温度は知ってるな?それとオイルの油圧を必ず常にチェックしておいて欲しい。油圧0ではなく、ある数値以下になるようなことがあったら、ただちに車両を止めてくれ。ピットに戻ってこようなんて考えずに。」
「2分×2本」用の車両をサーキットで走らせようなんてね。ものすごく気を使うことになりそうだ。
なにもかもが取り払われて、「ダッシュボードの皮」がついているだけのシートに潜り込む。
「ステアリングを頻繁にフルターンさせる競技」であるがゆえにステアリング周りのスイッチすら全部取り払われている。
イグニッション。
周りのすべての車両を威圧する強烈なエンジン音が響き渡る。その車高も含めて、今、この場所にいるどの車両とも似ていない。まったく異質の競技車両。
水温・油温・油圧が一定になったことを確認してクラッチを接続。
まったく・・・実は、ごくごく最近まで、この車両の「バック」ができなかったのだ。
「クラッチ自体はノーマルだ。強化して駆動系に衝撃が伝わるのが気になる。」とは言っていたけど・・・
暖気用プラグを使わないと始動ができず、「下がスカスカ」のこの車両のクラッチを繋いだとたん、エンストしてしまって、後進させることができなかった。
今日は大丈夫。ちゃんと接続して前進し始めた。
メータ近くに移設されたウインカースイッチを操作してコースイン。
「3000rpm一定で30分間まずは様子を見て・・・」と思っていたけど・・・最初の1コーナーにアプローチしたとたんに、自分の過去の経験がなんにも役に立たない車両であることを思い知らされた。
このミッション、恐ろしくローギアード・・・なだけじゃなくて、各速が異常にクロスしてる。
強制的に4000rpm以上になってしまう。このサーキットでは、一番低速のコーナーでも3速までしかダウンシフトできない。
まったく・・・・メーター類とにらめっこしながら、スポーツ走行のみんなを邪魔しないように隅っこを走ることに専念しよう。
「ものすごくゆっくり」走っているつもりだけど・・・「鼻先をコーナーに入れたがるFF車」っていうのは、気分が良いもんだ。
ADVANのダート用タイヤをそのまま装着しているんだけど・・・・ある舵角を超えるとまったく曲がらなくなる(応答しなくなる)のもよくわかる。
オーナーが全バラしていたLSDのセッティングがいいのか・・・それとも一緒になってショックアブソーバーの交換(メーカーそのものを変更)を行った足回りがいいのか・・・この車両そのものの「素性」がそうなのか・・本当に気分良く旋回できる車。
この車両の足回りは、それまで自分がバラバラにしてきたトヨタ車やスズキ車と違って・・・ものすごく複雑だった。
そう。この時代までのホンダFF車は、「FF車なのに4輪ダブルウイッシュボーン」を謳っていたんだった。
正直、ショックアブソーバー交換作業中は・・・「こんなに部品点数が多い車、儲からないぞ。」って本当に思わされた。(”たかがショックASSY交換”にものすごく手間がかかった。)
いつの間にかホンダは、このサスペンション形式をやめてしまった。
今では大型4ドアセダンが採用しているくらいだ。
あ、気がついちゃったよ。最近のHondaの車の作り方。
「コスト」もそうだったんだけど、「箱形」の車を上手に作ろうと思ったら、ダブルウイッシュボーン方式は、場所もとって邪魔なんだ。
そうか・・・「ミニバン」ありきの部品構造なんだ。あのCR-Zすら。どおりで・・・・
別にパワーなんていらないのにね。燃費最優先のエンジンで全然構わないんだ。
できるだけ軽く、低く、いい足回りを手に入れれば、毎日の通勤だって楽しくなるのに。
(軽く作る=部品を省く。コストダウンにもつながる話だ。)
だいぶ走らせるのに慣れてきた。
もう少し、ブレーキングを詰めてみようか。
2ヘアピン手前で、”いつもの感覚で”ブレーキング開始。
うわあ・・・盛大に白煙が上がる。しかも困ったことに「ホイールロックしている」ことをフィードバックしてくれない。ブレーキペダルからは。
「超スプリント用ブレーキパッド&ダートトライアル用タイヤ」でパーマネントサーキットを走るのは少々無理があるか。
今日、大事なことは、「オーバーホールエンジンの慣らし走行を無事完了させること」
30分×2本の走行を無事に終了。
メータ指示に全く問題は無く、使った回転域をオーナーに報告する。
「なんだ、それしか回さなかったのか。もっと上まで使って良かったのに。」
いや・・・・これ、なんか踏んだら10000rpmを超えそうだったから・・・
「ああ、大丈夫だよ。そこまで回る前にリミッターがかかるようにしてあるから。つけてないと競技中ぶん回しちゃうからね。」
いえいえ十分です。もうお腹いっぱい。プライベータの手作りエンジンと思えないパワーだったよ。
もう、こんなに「パワーがありながら曲がりたがる」FF車がHondaから現れることはないんだろう。
僕らが知っている「Powered by HONDA」は、第三次Honda F1活動で死んだ。
あのHONDA V6 TURBOの強烈なパワーに憧れて入社したみんなは・・・
歳をとって、いつのまにか「ネクタイを締めた普通のサラリーマン」の集団になった。
「オレには守らなきゃいけないモノができたんだ」
うそぶいて、毎日を暮らしてる。
「ものつくり国家 日本」とうそぶくこの国は、実は、「大量に作るモノほど、技術革新(自動機の導入)で、海外で作ることができる」状況から一生懸命目をそらそうとしてる。(円高が本当の問題ではない)
「量が出ないから作らない」
そう言って、「大人になることの憧れ」の対象から車を引きずり下ろして、夢を見ることができない若者を大量に生み出すことになった。
我々「大人」が。
実は、日本のものつくりで本当に大切なのは、「数が出ないモノ」を丁寧に作ることができる土壌だ。
あの掃除機の革命「Dyson」だって、この日本という国がなかったら日の目を見ることはなかった。
別に。
稼ぎは、「海外で大量に作ることができる品物を海外で大量に売りさばいて」儲ければいい。
その儲けたお金で、「数が出ないモノ」を国内で作り続けていればいいじゃないか。
みんな「数字」に追われて「作品」を生み出すことを忘れてしまった。
Hondaのみんなにもう一度聞きたい。
「今、自分が通勤で使っているその車、運転していて楽しい?」
追記
本車両は、2012年シーズンにおいて、ダートトライアル地方選手権チャンピオンを獲得しました。